第162話 相性
ネフィラ魔法学校の連邦軍人たちの魔法実技。
ミーコたちやリロメラも一緒で、アールももちろん見ている。
軍人の一人が、「ファイアーボール!」と叫んで繰り出すが、かわいい人魂みたいな火が出るだけであった。
別の一人が「アクアボール!」で両の掌を撃ちだすが、コップの水をかけた方がよさそうな程度である。
オレたちから最も離れている女性軍人が、「ライトニングボール!」で放った力は、ミーコの出すような風を纏いながら電撃を撃ち出した。
それは、まるで横殴りに射出した雷そのままである。
「あの人…… 風魔法と雷を一緒に放ってた。
あたしもやってみる!」
ミーコは自分が使う魔法と同時に放たれた雷に、ショックを受けたようだ
走り出したミーコは、教室のメンツに影響の出ない場所までいくと、風を起こして雷を放った。
光魔法を放つミーコが雷魔法をやらなかった理由、雷より光を集約して射出する方が攻撃力が高いからだ。
雷か。
ミーコも使えるのなら、少し別のやり方も考えてみよう。
彼女の放つ雷の威力を呆然と見つめる連邦の軍人たち。
彼らは集まり始めて、ネフィラに陳情しているようだ。
ネフィラが歩いてきた。
「アンナちゃん、レイラちゃん……
連邦のみんなが、あなたたちの魔法を是非見てみたいっていってるの。
私、レベルが違いすぎるから逆効果になるんじゃないかと思って、もっと仕上がってからにしようと思ったんだけど、ミーコちゃんが雷に目覚めてしまったみたいね」
ネフィラは雷射出、この場合雷撃と呼んでいいのだろうか、風雷撃魔法を放ち続けるミーコを、少し心配そうに見ていた。
雷魔法……
昔のアニメにあったな、彼氏の浮気性に激怒した鬼っ子が、電撃で懲らしめるやつ。
オレはまさかと思ったが、今のミーコを見て少し怯えてしまった。
「みなさん、ここにいる4人は私が教えた一期生の人たちです。
それぞれ属性が違うけど、攻撃力のある魔法のデモンストレーションをやってもらいます。
ラウンドバトラーに乗って放つ魔法としては、すべて有効な攻撃性を持っているわ」
そう言ってまずオレが、的である岩の前に立たされた。
にっこり笑いながら、小さく頷くネフィラ。
オレは諦めたように、岩に向かって狙いを定める。
深呼吸……
いつもの鏃ではない、ゆっくりと魔素をため込み、闇の波動を自分の身体の中で編みこんでゆく。
「黒色破光!」
オレのクロスした腕が、巨大な漆黒の“X”を形成し、黒い暴威が放たれる。
それは一瞬の出来事。
岩は消滅、爆散するのではなく、完全に消し消えてしまった。
自分でやって、これほどのものかと驚いてしまう。
気づかないうちに魔法力も爆上げしていたようだ。
ネフィラは満面の笑みになり拍手を始めた。
唖然としていた軍人とエイミー、一斉に拍手喝采である。
「すごいよおにいちゃん! どうしちゃったのいつの間に!」
ミーコのはしゃぎぶりは尋常ではない。
恐らくだが、ラウンドバトラー効果だろう。
あの量子リアクターからのマナジェネレーターによる魔素を受けるとこうなる。
それ以外考えられなかった。
「じゃ次、アンナちゃんお願いね」
「はい!」
そう言ってアンナは、岩に向かって狙いを定める。
オレの手を握りながら見ているミーコの手に力が入った。
アンナ、いつもと違うな。
オレは今の彼女の真剣な眼差しから、これから撃ちだすものは今まで見たことのないものだろう、そう感じた。
「ブレードクラッシュ!」
そうアンナは叫んだ。
放たれたそれは眩いばかりに輝くビームで、岩は消えた。
オレの時と同じ、一瞬にして完全消失。
見ていたオレも唖然、軍人たちはいっせいに拍手喝采を始める。
ミーコとレイラがアンナの周りではしゃぎまくっている。
オレは自然に口元が緩んでしまった。
みんな成長するんだな。
満面の笑みをたたえたネフィラは、レイラを見て言った。
「じゃ、レイラちゃんお願いね」
「……は、はい」
ひと際白い肌を輝かせるレイラは、緊張しているのだろうか、汗ばんでいるようにも見える。
これは彼女にとって、ストレスだろう。
こんなノリで負担をかけさせてしまったことに、申し訳なくなってしまった。
だが彼女はやってくれるみたいだ。
「サンドニードル!」
レイラはそう叫んだ。
それまでの彼女の控えめな声からは想像できない、張りのある一声。
突き出された腕から纏う様に放たれた黒い嵐は、やはり一瞬にして岩を消し去った。
彼女もまた成長してくれている。
拍手喝采、もうお約束だ。
「じゃ、最後はミーコちゃんお願いね」
「はい! 先生、あたし雷やってみるよ、いいでしょ?」
ネフィラは一瞬心配そうな顔をしたが、すぐ微笑みに変わった。
「ミーコ、気ぃつけろよ」
「大丈夫だよ!」
めずらしくリロメラが心配している。
オレは気になったが、その答えはすぐ知ることになる。
ミーコはいつもと違うポーズで、魔素を溜めている。
大きく手を広げ、円を描くようにポーズすると叫んだ。
「シャイニングサンダー!」
その瞬間ミーコの身体が“バンッ!”と雷光に包まれ、彼女はまるでスローモーションのように倒れてしまった。
「ミーコっ!!」
オレは飛び出してしまう。
「言わんこっちゃねぇ、光と雷は相性が悪りぃんだ」
リロメラは空中に飛び上がると、ミーコに駆け寄っているオレに言った。
「一洸、少し長めに下がってくれ……
ミーコに光を充てる場合、ちょっと強くしなきゃ効かねぇんだ」
オレはすぐさまミーコから離れて、その様子を見守った。
みんな黙って、リロメラの神力を見ている。
リロメラが放つ光はしばらくミーコを包み、全身を輝かせ続ける。
オレは、ただそれを見つめながら深呼吸するしかなかった。
【 恐れ入ります、下記お願いいたします 】
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