第153話 多様性が繋ぐ橋
「一洸、あとでミーティングルームにきてくれ。
うちの技術とネクスターナル、きみに聞きたいことがあるんだ、お願いできるか?」
遂に来たか。
この場合、ネクスターナルも同時に聞いてい来るとなると、マナジェネレーターの内容をどこまで話せるかによる。
エイミーからホワイト大佐に、鹵獲戦艦アールの対ネクスターナルへの身元秘匿依頼は伝わっている。
それを踏まえて、マナジェネレーターの情報公開となると……
「わかりました…… その前にちょっといいでしょうか」
ホワイト大佐は小さく頷くと、オレを司令室の奥にあるスペースに連れて行った。
「ここなら大丈夫だ」
オレはかねてから伝えてあった、アールの身上を再度確認した。
ネクスターナル製ラウンドバトラーは、保管域内にいる魔導士扱いの“魔換炉”を、連邦の技術と合わせて“マナジェネレーター”とし、現時点に至っている。
「実はその件なんだが…… 彼らは気づいているよ。
そのことも踏まえて、ネクスターナルと話をしてほしい。
ネクスターナルはきみの話を聞いて、方針を変えたみたいなんだ。
つまり、敢えて追及はしないと」
そうなのか。
知らないところで話が進んでいたのは、喜ぶべきか、訝しむべきか……
アールにとっての最大の懸念が消えるわけだが、両手離しで喜ぶ前にまず話をしてみる必要があるな。
オレは旗艦のミーティングルームに招かれた。
ホワイト大佐以下、エイミーやメインスタッフと技術が数名、それにオレ。
4Dスクリーンには、SOUND ONLYの文字が浮かんでいる。
「では始める。
高位知性種の機械惑星より採取したエネルギー変換装置を分析したところ、高効率の精神感応変換機であることが判明した。
同時にネクスターナルもこの機器の特性を同様に掴んでおり、高位知性種が精神統合体であるネクスターナルを融合する目的も見えてきた」
そういうことだろうな。
おれが機械惑星の中で叫んだ内容に、高位知性種が反応したのも図星をつかれたからだろう。
焦っているように思える。
強力な精神エネルギーから産出されるエネルギーが、今の彼らにとっては必要なものだということか。
“オールドシーズ一洸…… きみの保有する空間装機、あの機体の動力は量子ドライブだが、兵装に用いられているのは、我々が高位知性種から収集したエネルギー変換装置と同様のもの…… ではないかな?”
「ええ、その通りだと思います。
技術的なことはわかりませんが…… オレが地上にて謁見した大魔王バルバルスの話によると、これは“魔換炉”と呼ばれるオーバーテクノロジーで、別のエネルギー源から魔素を生成する装置、つまり魔法力となるものに変換するものだと聞いています。
本来の使用法としては、精神の深い層…… 阿頼耶識からエネルギーを取り出して使うものだとも」
そのままを伝えることにした。
この段階での小細工は彼らに対して全く意味を成さないだろう。
“そうか、きみのいる地上世界の重鎮もそこまで……
つまりデバイス上の問題はクリアしている、既に完全動作させているという理解でいいのか?”
「ええ…… 一つの目的のみですが、使っていたようです」
オレはこの星の管理者、“古のもの”の存在も、彼らネクスターナルと共有すべきだと思ったので話すことにした。
彼らには申し訳ないが、一緒に背負ってもらおう。
“一つの目的、とは?”
オレは大魔王バルバルスの存在と、そこで活動を制御されていた“古のもの”の本体、その目的を連邦とネクスターナルに説明した。
誰も、何も発言しなかった。
無理もないだろう、何を言えると言うのだろうか。
「オレは…… 戦わなければなりません。
連邦やネクスターナルのみなさんがネクロニウムを必要としているように……
今いる地上の世界、そこにいる仲間たちのために」
“きみのところにいるのだろう、1029T2R……
我々ネクスターナルは復帰を強制も強要もしない、これは決定事項だ。
多様性という、精神統合体にとっても重要なファクターを、我々は再度思い起させられた。
きみのおかげだよ、オールドシーズ一洸”
「……では、アールは」
“アールか、彼はすでにきみの仲間なわけだな。
改めて申し出たい、一洸、きみに協力させてほしい。
きみの仲間と、仲間のいる世界を守るために”
オレは柄にもなく熱いものが込み上げてきて、思わず言葉が詰まってしまった。
よかったなアール……
ここにいないのが残念だが、多分この内容は聞いているだろう。
「ありがとうございます…… “彼”も喜びます」
オレは何もない空間であったが、SOUND ONLYの文字に向かって頭を下げた。
“どうか、よろしくお願いします”
ホワイト大佐が立ち上がった。
同時に、全ての尉官、技術スタッフも起立した。
「一洸杉本…… 我々連邦も、同じく協力させてほしい。
今まで以上に、“仲間”としてね」
声は出さなかった。
だが、涙はでてしまった。
目から涙がでたのはいつだったろう……
オレは思い出すことが出来なかった。
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