第150話 選択肢
オレは旗艦に転移し、司令室に向かった。
“みんな、引き続きすぐ出られるように準備を頼む”
“““了解!”””
“おぅ…… 一洸、無理すんなよ”
リロメラの心配が現実にならないことを祈るしかない。
司令室に入ると、エイミーはまるでオレが生きているのを確認するかのように顔を近づけてくる。
「一洸……よね。
仲間の人は残念だったわ……」
オレはそれに応えるように数秒の間、黙とうした。
彼女もオレに合わせて、俯いたまま黙っている。
エイミーはオレの視線を促すように、メインスクリーンに顔を向けた。
「新しいデバイスが出現したの」
広角の映像、その隣に極大にクローズアップした機械惑星、周囲を逆三角形の陣形をとって誘導するように浮遊している新デバイス。
機械惑星よりサイズは小さいようだが、まるでイガグリのようなとげとげしい見た目だ。
「この状況を見て、あなたがいつもやるように破壊できると思う?」
「……正直わかりません、でもやってみますよ」
オレはスクリーンを見つめながら、小声でアールに繋いだ。
“アール、見えていると思うが…… あの状態をどう思う?”
“映像としては捉えているが、直接スキャンした情報がないとなんとも言えない。現地のネクスターナルとアクセスして、何か掴んでいないか聞いてみてくれ”
「エイミーさん、ネクスターナルからのスキャン情報、伝わってきませんでしたか?」
「そう言えば、まだ聞いてなかったわ。
あの機械惑星が動き出してから、皆一斉に避難したのよ、幸い被害はなかったけど」
中にいた人間やドローンに被害がないということは……
動かしているだけで、完全に制御を復活させたわけではないのか。
見た目以上にボロボロなのかもしれない。
エイミーはオペレーター経由で、ネクスターナルに繋いでくれた。
“オールドシーズ一洸、よくきてくれた”
“いえ、まぁこれが今の仕事ですんで。
それで今の状況ですが、あの機械惑星、オレと仲間がいつものように攻撃して上手くいきそうですかね?”
“あのデバイスの中に我々が残したドローンがいるが、通信が全く不能なのだ。
恐らく未知の強力なシールドを張っていると思われる。
あの新手の3機は、そのシールド展開のためのものだろう”
オレは一瞬間をおいて、ネクスターナルに返した。
“実験してみませんか?
失敗しても損失はありません、ちょっと時間が進んでしまうくらいです”
その時間こそが最も重要な要素だとわかっていたが、敢えて自爆してみた。
コミュニケーターの先で、身体を持たないネクスターナルが不敵に笑ったような気がした。
エイミーが少し悪い顔をして、舌なめずりしている。
ネフィラのそれとは違っていたので、少し安心した。
“プランを説明します”
オレは指令室からエイミー、ホワイト大佐、尉官たち、そしてネクスターナルに聞こえるように言った。
◇ ◇ ◇
近々、もしかしたら私はここを、この一洸の特異空間“保管域”を出ることになるかもしれない。
ネクスターナルへの並列リンク復活をしないで外界にて存在する方法……
私のこの身体、戦闘デバイスとしての存立を棄ててしまえば、あるいは可能か。
随分長い事、この精神を存続させてきた。
これからのことはわからないが、あの選択の時に、数百年前のあの瞬間に、もし戻ることが出来るなら、私は全ての条件を受け入れるだろう。
今ある選択を間違ったと思った事はないが…… もしも、もう一つの選択肢を選んだ自分がいたとしたら、その彼を罵ることはないだろう。
もし、あの時の選択肢を今与えられたとしたら……
私はどうするだろう。
私は……
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