第135話 人間と何ら変わらない
そのアイスピックのようなネクロノイドの尖塔は、バラムの胸にマトモに突き刺さっていた。
オレは瞬間的にシールドを解除、暗闇から伸びる尖塔の元にあるネクロノイドのサイズがわからなかったが、ありったけの魔力を使って闇魔法の鏃を放つ。
オレの魔素需要を満たすため、マナジェネレーターが静かに振動を始める。
膨大な魔素供給を受け、オレはふたたび無駄に元気になってしまった。
バラムを貫いたネクロノイドはオレの鏃で爆散したのだろう、完全に動きが消え、他のものが現れることもなかった。
次元窓から飛び出るミーコやリロメラたちの機体。
オレの機体を囲むように、ミーコたちの機体が防御している。
オレはまず、この壁面に魂意鋲を打った。
その後一時撤収すべく、みんなの機体を保管域へ戻す。
機体のハッチを開けると、ネフィラが空中浮遊するようにバラムを抱えたオレを保管域の大地に降ろしてくれた。
「このままここに寝かせましょう」
横たわる死亡状態のバラムは大量の出血をしていて、もちろん意識はない。
「おにいちゃん!」
ミーコがやってきて、バラムに手を充て始める。
何も言わずに必死になって光魔法を使うミーコ。
後からやってきたリロメラが、それを見て言った。
「なぁ、多分俺の出す奴の方がすぐ効くと思うぞ」
今さらのように気づいたオレだったが、何故気が付かなかったのだろう、天使なわけだし。
「ミーコ、危ねぇからちょっと開けてくれや」
ミーコはリロメラに譲るように場所をあけた。
リロメラは翼を盛大に広げてふわりと浮き上がると、空中で両手を広げて、バラムに盛大に光を浴びせ始めた。
光に包まれると言うより、光そのものになりそうな勢いのバラムの身体。
リロメラの光力は、容赦なく浴びせられ続ける。
突然、バラムが血を吐いた。
食道に詰まった血が出てきたのだろう。
成功したのだろうか、まだわからない。
彼女は咳き込むように身体をくねらせたが、涙を流しながら目を開けた。
カミオの時ほどゆっくりではなかったのは、リロメラの力の強烈さゆえだろう。
「……一洸様、ここは?」
「オレの保管域の中です、あなたは一回死んだんですよ。
でも見事生き返りました、よかった」
バラムは泣きながら姿勢を正して跪いた。
「この大恩、一命を捧げます魔元帥閣下」
「いや、せっかく助かったんですからよかったんですって……
それに、光をあてたリロメラやミーコのお陰です」
オレはバラムを横にすべく、肩に手をかけた。
「天使殿…… ミーコ殿、ありがとうございました」
「あたしは少しだけだよ!」
降りてきたリロメラは少し照れたような表情を見せたが、すぐに元に戻ってしまった。
「おぅ、軽いもんよ」
ミーコがオレに小さく呟いた。
「リロメラの光、ヤヴァイよね…… あたし自分が使えるからわかるけど、あの光は直接触れると危ないよ、気をつけてね」
ミーコがオレにそう言った。
彼女がオレにそう言うなら、きっとそうなのだろう。
「……あなたは、あなたはネフィラ様」
「お久しぶりねバラムさん、何百年ぶりかしら」
ネフィラとバラムは、数百年ぶりの再会だったようだ。
ちょっとついていけないな。
ネフィラとバラム、昔話に花が咲くのかと思ったが、なかなか話がすすまないようだ。
二人きりにしてしまうのも余計気まずいのではないかと思い、オレは今後の対策を振ってみた。
解呪の法を実行中のバラムが襲撃された。
この事実だけでも、今後の方向性の重要なキーとなる。
「相当都合が悪いようね…… 大魔王バルバルスの状態を元に戻されることが」
「ネクロノイド側も気づいていると…… 意識のある本体が指示していると?」
「それはわからないわ……
こうなる前から、この場所が監視されていたのかもしれないし」
「ネフィラ様……
エルフ同士が伝え合うあの方法で、バルバルス様の様子をうかがうことは出来ませんか?」
バラムがそれを言った後、ネフィラは沈黙してしまった。
「解呪の法で全ての扉が開かなかったとしても、隙間から意思を伝えあうことはできるかもしれません」
「……そうね、でもそれを実行するにはこの保管域から出なければならないのよ」
「?」
バラムはネフィラが死者の魂である事実を知らない。
オレが困った顔をしていると、ネフィラが話し始めた。
「バラムさん…… 私、生きているわけじゃないの。
ここにこうしていられるのは、この一洸さんの権能の力あってのことなのよ」
「ネフィラ様……
それではあの話はやはり」
バラムは顔を両手で押さえて、何も話せなくなってしまった。
不謹慎だがこの人、やはりかわいいと思ってしまう。
こうして見ている限り、彼女たちのメンタルは人間と何ら変わらない。
魔族、亜人、人間の違いなど、外形的なものでしかないと改めて思い知らされた。
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