小話詰め
基本的にバカ話。
それぞれの思惑(セッカが王都から帰ったあと)
「ベルフ領に行くか」
「久しぶりですしいいのでは」
「……気に入らん手紙がきてな」
「父上?」
「あの爺、セッカちゃんにおじいちゃんと呼ばれているらしい」
「ジジイ……ああ、副領主ですか。弟のこともかわいがっていましたし」
「それはわかっているがな。しかもセッカちゃんが、父方母方、両方の祖父ができたみたいで嬉しいですと書いてきたから文句も言えん」
「ああ、どちらも早くに亡くしたわけですか」
「最近セッカも少し目立ってきたしな。今のうちに打てる手を考えておかんと。結婚もせっつくついでにな」
「ああ、それは是非。式は私が全力で準備しますから。まだまだ青二才の国王なんぞにぶんどられてはたまりません」
「……お祖父様からの手紙、なにか大変だったんですか? 渋い顔してますけど」
「いえ……いえ大変にはなりそうですがそれはまだ先です」
「はぁ……」
「……血はつながっていないのに、心の狭さがそっくりだなと……(小声)」
「うん……?」
「なんでもありませんよ」
「ヘタレ……」
「ですねー」
「そういうところは似ねーんだなぁ」
護衛男子の会話と
「お疲れー」
「おう、お疲れ。……あ、そっか、今日ウェンデル休みか」
「そうそう、朝早くから私服で出てったぜ」
「そっか」
「うん」
「……ウェンデルってさ」
「ん?」
「めっちゃスタイルいいよな」
「それな」
「言動がアレだから見逃しがちだけど……特に胸」
「でかいよな」
「だよな!?」
「まあ本人邪魔だっつってたけど。そういうの俺に言うあたりもアレだよな」
「まあウェンデルらしいけど……」
「俺らからすると胸がでかいのっていいけどなー」
「なー」
「ルト様、やっぱり男のひとは胸が大きいほうがいいんですか?」
「は?」
「そんな話を小耳に挟みまして」
「誰ですかあなたにそんな下世話な話をしたのはさあ教えてください今すぐに」
「ノンブレスで言わないでください、ちょっとこわいです。まあ誰かなんてどうでもいいじゃないですか」
「よくはないですよ……ですが、私は特に気にしたことがないですね」
「そりゃまあ……そういう感じは受けたことないですけど……」
「そもそも、祖父から話を聞いてからは、女性に対してどうこう、と思わなくなったので……」
「あー……」
「ですから、客観的に魅力的なのだろう、とは理解できますが、それだけですね」
「わたしってこっちのひとに比べると、ちょっと細いから、少しだけ気になって」
「たしかにそうですが、あなたならどんな姿でも愛らしいので、気にしなくていいですよ」
「……でも頑張りますよ、なけなしのオトメゴコロで」
セッカ、なれそめを聞く-ウェンデルとライマー編-
「ライマーさん、ウェンデルさんとのなれそめ聞いてもいいですか?」
「勿論ですよ、なれそめと言わずいくらでもお話しします」
「とりあえず最初からお願いします」
「ぼくとウェンデルはおなじ隊に所属していました。とある作戦のとき、愛用の鞭で敵を倒し、踏みつぶした彼女がとてもきれいだったんですよね」
「……へぇ」
「そのときは短髪だったんですけど……とにかくその姿に惚れこんで、何度も告白して受けてもらって」
「すっごく好きなんですね」
「ええ、それはもう。彼女になら殴られてもうれしいですし、正直彼女以外にはもう反「それ以上言わせない」」
「あ、ウェンデルさん」
「セッカ様に下世話な話を聞かせるんじゃないこのド変態」
「わたしなら大丈夫ですよ? 職場のおねえさんたちはもっと凄いこと言ってましたし」
「それでもです」
「なんかみんな過保護すぎないかなぁ……」
セッカ、なれそめを聞く-フリーデとジャン編-
「フリーデさん、ジャンさんとのなれそめって、聞いてもいいですか?」
「あ、私も聞きたいです、先輩」
「いいですけど……本人には絶対聞かれたくないので」
「らじゃーです、気配はきっちり探知しておきます!」
「……あなたまたセッカ様から変な言葉を教わったわね……?」
「す、すみません、つい話しやすくて」
「セッカ様はいいんです。職務中にあまり軽い言葉遣いはしないように」
「今はジョシカイだからノーカンにしてくださいよ~」
「……(なにを言ってるのかよくわからない)ええと……なれそめですが、街の養成所を卒業して、たまたまこちらに就職が決まったんです」
「たまたまって……優秀だったってことじゃ?」
「でしょうね~なにせ領主ですから」
「本当にたまたまですよ。それで、年も近いので旦那様と関わることが多くて。数年後もどってきたジャンに、いなかった間の様子を聞かれたのがはじまりです」
「ああ、なるほど、ジャンさんと入れ違いくらいで入ったわけですか」
「ええ、そのうちに旦那様の話抜きでも喋るようになったり出かけたりしたんですが……いわゆる恋人同士だと断言できるようなことはなにもなくて」
「それって告白とかってことですか、先輩?」
「そういうものは一切なかったですね」
「えぇ……」
「まあ、理由はわかっていましたから。……人を殺めたことがあるから、なんでしょうね」
「あー、気持ちはわかりますー」
「そのへんは難しい問題ですね……」
「でも、それなら最初から気を持たせなければいいんです。そうした時点で腹を括るべきで」
「フリーデさん、なにげに強いですよね」
「とはいえジャンに言っても強情ですから、まず外堀から埋めることにしました」
「外堀?」
「お義母さん……アディさんに相談して、快く許可をもらって、他の兄弟にも話して、執事頭にも了承をとりつけて、それから勿論、旦那様にも」
「わー、隙のない埋めっぷりですね先輩」
「それでも逃げようとしたので、最後は少々よろしくない手を使いましたが……」
「……お酒か夜這いかどっちかって認識でいいんでしょうか、フリーデさん」
「そこは黙秘します」
「イイ笑顔ですね先輩!」
「ですので、本来あのひとは、旦那様をどうこう言えたものではなかったんですけれど……」
「ま、まあ、結果よければですよ」
「そう仰っていただけるなら……あと、この話は内密にお願いします」
ディディスVSライマー
「ウェンデルちゃん、君の恋人が射殺しそうな目で睨んでくるんだけど」
「あー……しょーがないんじゃないですかー」
「男から見られても嬉しくないんだよ!」
「ぼくがいない間、彼女と一番親しくしていた男に、いい感情が抱けるわけないですよね?」
「気持ちはわからなくもないけど、手は出してないんだからさ」
「出していたらこれくらいじゃすみませんね」
「うわめんどくさい……」
「だいじょーぶですよ、ライマーは私より弱いから」
「そういう問題じゃないってわかってるよねウェンデルちゃん」
「とりあえずそのなれなれしい呼びかた、やめてくださいね?」
「目が恐い! あと武器さりげに飛ばしてこないで!」




