氷の光
読み終わった時、読んでよかったと思っていただけたら本望です。
華鬼は受験勉強です。。数学が苦手なのでがんばります。
※必須項目としてボーイズラブにチェックを入れておりますがボーイズラブがメインのお話ではありません。ご注意ください
中学卒業後の何者でもない間の春休み。卒業間近の休日にじいちゃんに推されて受けた何かの試験の結果と共に黒服を四人従えた美人が家に来た。
星苑学園という所の偉い人らしいその人は、わたしが転入試験に合格したことを告げるとともに両親に入学手続きやらの説明を始めた。
当然何の事だかさっぱりな両親は追い返そうとしていたがそこにじいちゃんが帰ってきたことで話の全貌が見えてきた。
じいちゃんは昔から掴みどころがなく、仙人なのではないかと疑われている次第だ。そんな彼はやはり突拍子もないことをしていた。
この星苑学園という所の理事長こそがじいちゃんだと言うのだ。ばあちゃん以外は誰も知らなかったために混乱を招くのも当然で、それから5日間にも及ぶ氷川家家族会議が執り行われた。
我が家で絶対的信頼を誇る兄の氷川清蘭を議長に慎重に詮議された結果、わたしは幼稚園から高校までエスカレーター式だった地元の学校から離れ、星苑学園に高等部から転入することになった。
(あの兄がわたしを離してくれるなんて思わなかったけれど。…出発間際、母様にもシスコンのあんたがよく離したわね、なんて言われてたっけ)
そんなことを考えながら彼此三十分ほどバスに揺られている。
咲き始めの桃色の並木道を、大きなエンジン音を立てながら、バスはぐんぐん上ってゆく。
小高い丘の上にそびえ立つ白亜と煉瓦の立派な建物がどうやら目的の場所らしい。
「おっきいなあ…」
思わず漏れた声は、あの大きなエンジン音によって掻き消された。
万里の長城のような長く高い塀の合間から現れた大きな門前にて停車した。
「忘れものないようにね、いってらっしゃい」
と言うと、返す間もなくバスはまたあの大きな音をたてて走り去っていった。
しばしバスの消えた方を見ていると、何かが肩に乗った。
「ひゃっ!?」
あまりに驚き、変な声を上げながら振り返ってみると、そこには制服を纏った男子学生が行き場を無くした片手を挙げて立っていた。少し見上げなければならないほど、随分と身長が高いようだった。
「驚かせてごめん、僕は鳥羽永久。理事長から、今日君が来るって聞いたから案内しようかと思って─。あ、2年で生徒会副会長やってます。」
そう言うと、丁寧な仕草でブレザーの懐から生徒手帳を持ち出し見せてくれた。
「いきなり知らない男に案内するって言われても不安だよね、怪しくないから安心して」
少しも警戒などしていなかったが、彼の様子にとても安心したのは確かだった。ふわりと優しく微笑む姿は聖母のようだ。大きな身長に対し、高めの鼻梁を備えた端麗な顔立ちはモデルを思わせた。
「耀ちゃん?」
「はい」
「荷物もあるし暗くならないうちに先に耀ちゃんが暮らす寮に連れていくけど、うちの寮はほかと違って男子も女子も同じ建物なんだ。びっくりさせないように先に伝えておくよ。」
男の子と同じ建物。兄なら心配しそうなものだが特別気には留めない。
「同じ建物といっても、扉は頑丈にできてるしオートロックで廊下には監視カメラがついてるから怖がることはないよ。ランチルームは同じだけど問題を起こせば即退学っていうルールもある。星苑学生限定のマンションだとでも思ってもらえればいいかな」
「へえ。ご飯みんなで一緒に食べられるだなんて、楽しそうでいいですね」
大勢で食べる食事などいつぶりだろうか。想像しただけで楽しみだ。
笑って話しかけると、鳥羽先輩は止まってしまった。
「鳥羽先輩?どうかなさいましたか」
すぐににこやかに笑って見せた彼の頬は少し赤い気がした。
「なんでもないよ。あ、そうだ。僕の部屋は3階だから、何かあればいつでも頼ってね」
「ありがたいです、鳥羽先輩しか知らないからすごく頼りにしてます」
鳥羽先輩は力強く頷いてくれた。それがなんだか嬉しくて、照れくさくて、ここからはじまる新しい日々がどうしようもなく待ち遠しかった。
話の最初すぎて何が何だかって感じですが、これからもゆっくりと進めていきます。読んでいただけたら幸いです。
華鬼は数学が得意な方をとても尊敬しています。
それではまたあとで。