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フラグ4 レイネBADEND【BREAK!】

 俺は今、最高の目覚めを感じていた。

 素晴らしく楽しい予知夢──異能:未来死の魔眼(バッドエンドアイ)をのぞき込めたからだ。

 あんな格別な少女を失っては勿体ない。


 アイマスク代わりに乗せていた頭の雑誌を取り去り、ベッドのように使っていたソファから立ち上がった。

 探偵事務所内のブラインドから漏れる夕日からして、タイムリミットはまだ大丈夫そうだ。


「御主人様。あの客の少女、たぶん死にそうですよ」


 丁度、メイドのエレクトラが階段を登ってきて、こちらに視線を向けてきていた。

 それはまるで、夕方過ぎまで寝ているニートを見るようないつもの目付きだった。


「知ってるさ、一時間後に死んでいた」


 今の時間は、エレクトラが一階喫茶店であの少女と出会った直後だな。


 俺は、エレクトラがいつも首からかけている、開きっぱなしの懐中時計で詳細な時間を確認したのだ。

 これは未来を覗いたとき、時刻がわかるようにつけてもらっている。

 それを照らし合わせての一時間後。


「いや、正確には死んではいないな。死への直行コース入り口が一時間後だ」


 寝起きで喉が渇いていたので、テーブルに置いてあったぬるい缶コーヒーを開けて飲む。

 やはり朝……いや、夕方はコーヒーに限る。

 本当はゆっくりと下の喫茶店で飲みたいのだが、時計の針は止まってくれない。


「それで、助けるんですか?」


「ああ、ブレイクタイムの始まりだ」


 かけてあった高級ブランドスーツの上着と、探偵らしい中折れ帽をだらしなく着こなしながら、一丁の魔銃が入ったホルスターを装着した。


「最低最悪の趣味をもつ御主人様に目をつけられるとは、あの少女も、今から皆殺しにされる方々にも同情いたします」


 そう言うと球体関節のメイドは冷たく微笑みながら、研ぎ澄まされたナイフをスカートの中に収納し始めた。




* * * * * * * *




 俺達は、これから事件が起きる廃ビル付近の──工事現場に到着した。


 夜に作業はしていないのか、はたまた放置された現場なのか。人影は少ない。

 重機らしき巨大なものにシートがかけられているのが、少し気になる程度だ。

 主犯の奴の仲間がたむろしているので……先に始末しておこう。


「我が愛しき最低最悪の御主人様、殺人の許可を」


「──人類史上初の魔術師が、我が愛しき所有物に殺人を許可をする」


「オーダー、承りました」


 エレクトラは人体ではありえない関節の曲げ方をした。

 地にへばりつく蜘蛛のようなポーズを取って、瞬時に地面から空中へ躍り出る。

 そろそろ時間も遅くなってきたため、光帯びてきた月を背に殺人人形(キリングドール)が良く映える。


 工事現場で無警戒に棒立ちしていた、ガラの悪そうなチーマーらしき少年。その背後に音も無く着地して、礼儀正しく優雅に立ち直した。

 エレクトラはスカート裾をそっと摘まみながらアーミーナイフを取り出し、少年の気管と頸動脈を一気に切断した。


「……ヒュッ!?」


 声にならない声と、首から噴き出す大量の血液。


「おぉい? 何かビチャビチャと水音が聞こえるぞ? ションベンしすぎだろう」


 今度は影のように移動し、言葉のんきにタバコを咥えながら近付いてきた少年の背後へ。さっきとは違う種類の刃物、ギリシャ式短剣ハルパーを取り出して再びの殺人。エレクトラは様々なナイフの切り心地を試しているのだろう。


 ……俺の趣味が悪いとか言いながら、自分の趣味も最悪だと思うのだが。


 呆れながらも、ここは任せても平気だと判断した。

 一般的な人間は不確定領域(ラヴィリンソス)の一層目バケモノよりもずっと弱い。

 それに落ちてくる予定のアレ(・・)のタイミングも伝えてあるし、こちらは1人で現場に向かうことにしよう。




 ──廃ビルの五階。

 未来死の魔眼(バッドエンドアイ)で見た通り、他に人はいないようだ。

 直前まで周辺環境の介入を抑えたためだろう。


 未来への影響というのは、蝶が一匹羽ばたくだけで、後々に台風となって街を襲うという例えがされるくらいに難しい。

 いわゆるバタフライエフェクトというやつだ。


 そのため、俺も未来を視た後は極力、直前まで介入をしないようにしている。

 なので──。


「逃げてください! はやく!」


 部屋の外で、汚い落書きがされた壁に寄りかかる俺。

 室内からは、少女の必死な叫び声が聞こえてくる。

 俺はそれをBGM代わりにしながら、スマホをいじってゲーム中だ。


「ど、どうしてあたし達のことを……」


「目の前の命を助けるのは当たり前のことです! さぁ、はやく!」


 いや~、くさいセリフだなぁと感心する。──そう普通だったら綺麗事で反吐が出てしまうのだが、この少女は死の直前まで意思を貫いた。偽りなき、スチールより強固な言葉だったのだ。


 死の直前は本心が出る。

 そのため俺は、どんな人間でもゴミみたいな中身だと何度も視てきているのだ。

 それが悪いことだとは言わない。

 それが……普通だ。


 だからこそ、この少女は格別なバッドエンドの美味だったのだ。

 久しぶりに良い死を見せてくれた少女に、好意を抱いていると言っても過言ではない。


「っこのアマ!!」


 そう──だからこそ、その非業の死(バッドエンド)破壊(ブレイク)してやることにしたのだ。


 ──おっと、物思いに夢中になってしまっていた。

 この男のセリフが聞こえてきたということは、そろそろ俺の出番か。


 たしか中では、少女──レイネがトカレフのグリップで殴られているところだったな。

 チンピラらしい銃の使い方だ。


 本来ならその後に、男の仲間達がきて、猫が窓から投げ捨てられる。


 だが既に男の仲間達は、容赦なく殺されているだろう。

 あんな殺人に眼を爛々(らんらん)と光らせた球体関節人形(オートマタ)を相手にするなんて、本当に同情してしまう。


 さてと、そろそろ部屋の中に入るか。


「ちーっす、きちゃった」


 俺はスマホゲーをしつつ、なるべく軽い口調で挨拶をした。

 丁度、逃げようとしていた、いじめっ子三人組を塞ぐような形で狭い室内に入っていく。


「おー、きたか。……ん? 少なくねーか? それにお前誰だっけ?」


 さすがに禿げたゴリラのような男でも、仲間の顔を認識する知能は残っていたらしい。

 俺は想定していたので、淡々と返事をする。


「おこぼれに預からせてくれるってんで、急いでかけつけたんですよ。

 んで、向こうの工事現場の方が休憩室にベッドがあって、ヤルのに丁度いいからブレイカーさんを呼んできて欲しいって!」


「おぉ、そうか。手間ぁかけさせちまったな。ライン見る暇もなかったからよ。……それじゃあ、もうこの邪魔な猫はいらねーな」


「や、やめ……」


 男は無情にも、廃ビル五階の窓から子猫を投げ捨てた。

 昏くなってきた外の世界に吸い込まれていく子猫。俺はそれに興味津々をよそおって、窓から身を乗り出して子猫の行く末を確認した。


「確か猫って高いところから落ちても平気なんだっけぇ?

 でも、運が良ければ走ってくる車辺りが──」


 何かのドンッという衝突音と、ブレーキ音が聞こえてきた。


「ビンゴ! ラッキーだな! うはは!」


 よく目をこらすと、子猫を抱きながら転がっているエレクトラの姿が見えた。

 ──子猫が落下するタイミングを伝えておいたので、下で無事に受け止めたのだ。

 だが、車が来るのは伝えていなかったので、エレクトラが子猫をかばいながら面白可笑しくはねられた。


 静かな怒りのジト目をこちらに向けられているが、エレクトラに詳細を話していたら、わずらわしいとか言って車を運転手ごと破壊してしまう可能性が高かったからだ。それにぶつかった音が聞こえないと、男に怪しまれて下を覗かれてしまう。


 決して、普段はクールで無敵なエレクトラが転がってるシーンが楽しそうだったから、という理由ではない。決して。


 愛すべきボロボロのメイドをよく見ると、中指を立てたり、親指で首をカッ切るジェスチャーの後、地獄へ行けと下に向けたりしているらしいが、それを放置して室内に戻った。割といつものことだ。


「いや~、メイド(かわいいの)が車にはねられてましたよ? やることがエグい! さすがブレイカーさんですよ!」


「ぐはは、褒めるな褒めるな。

 ……ん? そのスマホゲームのプレイヤー名……。

 お前も“ブレイカー”って付けてるのか」


 プレイしていたゲーム画面を見られてしまったらしい。


「ええ、そうです。ブレイカーさんに憧れて、せめて名前だけでも同じにしようと……」


「そうかそうか! おめぇもきっと立派な魔術師になれたらいいな!

 この俺、都市伝説ブレイカー様のように!」


「ははは、ソウデスネー」


 俺は若干、棒読みになりながらも、自称ブレイカー様を工事現場という地獄へ案内した。




 工事現場へ辿り着くと、人影は無く、まき散らされた血の跡も綺麗になくなっていた。エレクトラが後処理をしたのだろう。

 よし、あとは二人で戦えば楽勝だ。

 そのためにここまで降りてきたのだから。


「お、おかしいぞ……。ダチ達が誰もいねぇじゃねーか……」


 自称ブレイカー様はスキンヘッドに汗を光らせながら、普通ではないと感じ始めたらしい。

 俺はそれに内心ほくそ笑みながら、エレクトラを……エレクトラを探した。

 あれ? どこだ? 見回しても周囲にいないのですが。


『御主人様、服が汚れたので戦闘不能です』


 ……一方的に通信が送られてくる。あの冷血メイドからだ。


『せっかく血の一滴すら付けず、それはもう喫茶店のナポリタンに気を付ける淑女の如く、万全の注意を払いながら子細無く殺人を完了したというのに……』


 ようするに、服が汚れて機嫌が悪くなったから遠くで傍観している……と言っているのだ。ありえないだろう、ありえないだろう。


『というわけで、先ほどの御主人様を見習って、下品な笑みを存分に浮かべながら見学させて頂きます。死ね』


 何故かわからないが凄まじく嫌われているらしい。たかが服の一着程度で。


 ……まぁ、別に構わないだろう。

 相手はたった1人。俺にはこの魔銃がある。

 弾も六発きちんと装填済みで──。


「お、ブレイカーさんいたいた。可愛い子と楽しいことができるって聞いて、俺達も急いでかけつけましたよー!」


「ちゃーっす! さっすがブレイカーさん!」


「ひゃっはー! 女女ァー!」


 ……両手の指と同じ数のチーマー増援、つまり10名様ご案内。

 俺が持っている銃の弾の数は6発。ええと、予備の弾は……。


『御主人様に追伸。

 予備弾薬(スピードローダー)は、こちらに強制転送して抜き取っておきました。

 謝罪して、新しい服を一緒に買いに行ってくれるのなら──』


 ジーザス!! 算数の問題だ! 残弾数6発で10人……いや、11人をぶっ殺すにはどうすればいいか!? あの冷血メイドはそんなこともわからないのか!?


 というか、延々と服のことを通信で垂れ流し続けている。

 服の値段でも気にしてるなら、金でも渡しておけばいいというのか!?

 チクショウ、理解不能だ! そもそも俺が買ってやった服(・・・・・・・・・)だというのに!


「おい、最初のお前……さっきから何かおかしいぞ。本当に誰かの知り合いか? お前ら、知ってるか?」


「いえ、知りません。こんなスーツを着て、探偵みたいな帽子をかぶった奴なんて……。それ以前におっさんじゃないですか、こいつ」


 ひどいことを言われている。


「俺はまだ二十代だ! お兄さんと呼べ!」


 懐から使い慣れたリボルバー式の魔銃を取り出し、チーマー達をぶち抜いていく。


「な、なんだこいつ!? 銃を持っていやがる!?」


 一発、二発、三発──。

 1人は逃げたらしいので、残りは7人だ。


「ひぃ!? 容赦なく撃ってきやがった!

 ぶ、ブレイカーさん! 伝説の魔銃『九星砕く魔銃(ブレイクショット)』でやっちゃってくださいよ!」


「お、おう!」


 自称ブレイカーはへっぴり腰で銃を構え、何度も雑にトリガーを引いて乱射した。

 その一発が、俺の心臓の位置に命中する。


「へ、へへ……このブレイカー様に逆らったのが悪いんだぜ……。

 お前も魔銃を持っているから、魔術師らしいと思ったが……。

 魔力を発生させるときにグリップ部分がナノマシンの銀色に光ってねぇ!

 とんだニセモノ(・・・・)の魔術師! お前は魔力を使えない普通の人間だ!」


 そう、ナノマシンの魔力精製によって魔銃を撃つ場合、その接触部が集まってきたナノマシンの銀色に光るのだ。

 それが一般的な魔術師の常識。

 だが──。


「ったく、魔力を使って銀色に光るのは、俺が開発したナノマシンに頼るニセモノ(・・・・)の魔術師だっての」


 俺はスーツの下に着込んでいた、軍用魔動式電磁ボディアーマー──簡単に言うと防弾チョッキから、トカレフの7.62mm魔弾を払いのけた。


「お、俺様の『九星砕く魔銃(ブレイクショット)』が通じない!?」


「ばーか、『九星砕く魔銃(ブレイクショット)』はお前みたいな自動式拳銃(トカレフ)じゃない。回転式拳銃(マテバ・リボルバー)モデルだ」


 俺は、そのリボルバー(・・・・・・・)で自称ブレイカーに狙いを付ける。


「それにお前の銃はペンで星マークが9個書いてあるが、本物はこれだ。

 ──九芒星(ノナグラム)。完全なる終わりを表す血の魔術記号」


 魔女の血判である赤で描かれた、銃身上のマーク。


「ま、まさか……お前が、いや、あなたが本物のブレイカー!? ナノマシンの光がなかったのも、自力で魔力を精製できるという世界初天然の魔術師──」


 この俺──本物の魔術師“ブレイカー”が不確定領域(ラヴィリンソス)の深層から持ち帰った遺物の一つ。

 その人類最強の魔銃の名は──。


九星砕く魔銃(ブレイクショット)だ」


「ひぃぃぃぃ!?」


 自称ブレイカーだったスキンヘッドの男に放たれる銃弾。

 だが、それは足元に外れた。男は大慌てで遅れて右に避ける。


「えっ? な、なぁんだ、都市伝説もアテになら──」


「ビンゴ、良い位置だ」


 俺は未来死の魔眼(バッドエンドアイ)で知っていた。

 この男が脚の古傷で右に避ける癖を。

 うまく足元を撃って、位置を微調整したのだ。

 残り弾薬は2。残り人数は7。


「本当なら名前通り……9人一発(ブレイクショット)で貫きたかったんだがな」


 グリップ部分に搭載されている魔動装置に魔力を送り込みながら、狙いを定めて、トリガーをゆっくりと引き絞る。

 回転式弾倉(シリンダー)が連動して、撃鉄(ハンマー)が後ろまでカチリと引かれ、勢いを付けて弾丸の尻、雷管を叩く。

 火薬が音と炎に変換されて、銃口から一瞬だけチラつき──発射された。


 カーブしながら飛んでいく魔弾。


 次々と上がる悲鳴と血しぶき。


 位置調整のかいもあり、残り7人を全て撃ち抜いた。一発で──だ。


「グハッ!? う、うそだろ……人間ワザじゃねぇ……」


「そりゃあ、魔術師なんだから銃弾曲げたりも、なんでもありだ」


 やれやれ、手間の掛かる掃除になってしまった。

 エレクトラが意味のわからないへその曲げ方をしなければ、もっと楽に終わっていただろうに。

 ああ、でもこれで帰ってぐ~たら出来る。ゲームのスタミナも消費できる。


「お、おじさん! 危ない!」


「だからおじさんっていうな! まだお兄さんだ!」


 それまで静かにしていた少女達が慌てている。

 なんだと思って視線の先を見てみると、いつの間にか工事現場の巨大な“なにか”のブルーシートが剥ぎ取られ、鋼鉄のボディをあらわにしていた。

 途中で逃げた1人がコックピットに乗り込んだらしい。


「おいおい、作業用二足歩行機(ロボット)かよ」


 カラーリングは工事ヘルメットのような黄色と黒。

 巨人のような太い手足に、ずんぐりむっくりとした横長体型。

 胴体にカメラが設置されており、頭部は作業用なので省略されている。


 驚くことに、この世界にもあるのだ。

 全高6メートルほどのロボットが。

 いや、正確にはまともに動くロボットがここ数年普及しはじめたと言ってもいいだろう。


 俺が不確定領域(ラヴィリンソス)から持ち帰った鋼鉄機械(ZYX)というゴーレム的な遺物を元に研究して、ひな形を作ったのだ。

 すごいだろう?

 ……すごい……俺はすごい自業自得感で泣きたいぞ!


「に、逃げましょう本物のブレイカーさん! そんな小さい銃なんかじゃ、あんな巨大なものは──」


 レイネがこちらに駆け寄ってくる。

 それを手で遮って制止させた。


『御主人様、こちらも機体を転送しますか?』


 俺を気遣ってか、エレクトラからの通信。

 俺は首を横に振った。

 いくら様々な法律や権利が免除されているからといって、限度というものがある。

 それにまだ銃弾は一発残っている。これの方がはやい。


「今日は夜空に、地べたからの流星をプレゼントだ」


 起動して迫ってくる巨大機械。


 俺はやや上方に狙いを定め──トリガーを軽く引いた。多めの魔力を込めて。


「え……」


 銃口を中心に、夜に昼間のような光。


 増幅された強大な魔力が、空気中の物質と反応するキィィンという甲高い音。

 それが拡がった後に、指向性を持って、巨大二足歩行機に光柱のような形状で突き刺さる。

 何かが焼けるケミカルな臭い。


 ──数秒後、スクラップの姿があった。

 光と共に上半身が溶解しながら消し飛んだのだ。


 俺は、銃口から燻る紫煙と火薬の臭いに向かって息をフッと吹きかけた。


「す、すげぇ……やっぱすげぇよバッドエンドブレイカーは……。俺様はそれに憧れて名前を借りて、その本人の魔銃に殺される……最高じゃねぇか……」


 まだ生きていたのか、スキンヘッドの偽物は。


「お前にそんな素晴らしいバッドエンドは勿体ない、子悪党(チャイルド・ヴィラン)


 ぐらりと倒れる下半身だけの巨大二足歩行機。

 その落下先は、もちろん──。


「そ、そんな……ぎゃあああああああ!!」


 こういう輩には整えられた墓標(終わり)すら不必要だ。

 これで十分だろう。





「あ、あの、ありがとうございます! 本物のブレイカーさん!」


 全てを終えて、レイネが安堵の表情で礼を言ってきている。

 素直な良い子だ。


「た、探偵さんなので、助けてくれたのもお仕事なんですよね? アルバイト代が入ったら、依頼料を──」


「いや、好きでやったことに金なんていらないさ。それに金色なら、その髪の方が綺麗だしな」


「え、えぇ……あの……初めてそんなこと言われました。

 髪のことを褒められて嬉しいです……。で、でも、本当に何かお礼を……」


 俺は極めて紳士だ。

 金のような下劣なもので、少女を困らせたりはしない。

 だから──。


「お前、俺のモノになれ」


「……はい?」

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