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東京ダンジョンを最速攻略した引退魔術師は、未来視で少女たちを助けるのが趣味なようです  作者: タック
都市伝説探偵編

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3/16

フラグ3 レイネBADEND

※三人称視点

 この東京には魔術師モドキもいるし、本物の魔術師もいる。


 そう、少女は聞いていた。


 研究所の事故で亡くなった姉の面影を探しに、田舎から出てきたばかりの少女。

 多少、顔立ちは整っているが、どこにでもいるような普通の少女だった。

 女子高生の制服であるブレザー、長い髪、中くらいの背丈。どれもごく普通。


 ──ただ一つ、髪の毛が金色なのを除いては。


「おらっ! その金髪目立つんだよ! さっさと黒く染めてきやがれ!」


「や、やめてください。これは地毛で──」


「ああ、玲依音(れいね)ちゃん様はぁ、半分ガイジンだったっけなぁ?

 名前もレイネって、それっぽいよねぇ。きゃはは、マジウケル! 目立ちすぎてやべーってぇ!」


 金髪の少女──レイネは下校途中に、3人組の女子高生に囲まれていた。

 同じ制服……つまりクラスメイトである。


「ほんっと、目立つんだよねぇ? 男に色目も使ってるしさぁ? さぞかし気分いいだろうねぇ?」


「わ、私は何も……」


「ほら、あたしの友達のこの子もさぁ、男を転校してきたばかりのアンタに盗まれちゃってさぁ、可哀想だと思わない?

 ……ウザいから、髪の毛を染めて謝罪してよ。土下座とかさぁ?」


 リーダー格の少女が、左右にはべらせている手下の少女の片方を指差しながら言った。

 手下の少女は泣きそうになりながら、顔を真っ赤にして怒っている。


「わ、わたしのゆう君が、レイネの奴ばかり見て……レイネ、レイネって……」


 誰がどう見ても、ひどい言いがかりである。

 だが、1人対3人。戦力的にどうしようもない。

 それに、レイネの後ろには守るべき弱き存在があった。


「だいたい、その後ろにいる捨て猫に餌をやってるのも良い子ちゃんアピールなんでしょ?」


「こ、これは違います……。里親を探している最中で──」


「あぁん!? 口答えすると猫ごとぶっ飛ばすぞ!!」


「……ッ!! 私を殴ってもいいですが、この子猫は関係ありません!」


 弱気だったレイネは一転、子猫の事になると急に強気になって、3人組の前にグイッと近付いて顔面を睨み付けた。

 3人組は反撃されると思ってビクッとした後、数の有利もあり冷静になって威勢を戻した。


「な、なんだよ! やるってのか! あぁ?!」


「私だけではなく、子猫を巻き込むというのなら全力で抵抗します!

 指の骨の一本や、眼球の一個程度は覚悟してください!」


「……ちっ、シラケちまった。大体、あたしが猫なんぞに暴力を振るうはずねーだろ」


 途中から黙って見ていたリーダー格の少女はそう告げると、立ち去っていった。


「お、覚えてろよレイネ! 姐さんが本気だしたらお前なんて速攻で地獄行きだ!

 都市伝説の“バッドエンドブレイカー”でも助けられない勢いの超特急でな!」


 乱暴な言葉を放つ手下。

 金魚の糞のように、姐さんと呼ばれた少女を追いかけてどこかへ消えてしまった。


「……バッドエンドブレイカー?」


 レイネは少しだけ気になって、その言葉をスマートフォンで調べて見た。

 ここ数年で発生したと言われる東京の都市伝説。

 女子高生達の間で噂になっている救世主。

 女の子のピンチに現れて、いかなる状況でも救ってくれるという。


「う、胡散臭い……」


 とレイネは思ったのだが、自らが陥っている窮地に助け船かも知れないという結論に辿り着いた。


「……うん、そうだ! 猫ちゃんの里親捜し! 性別はメスだし、助けてくれるかもしれない!」


 飛躍しすぎの理論だが、なるべく多くの手段で里親を探してあげたいレイネにとっては、ありがたい情報だったのだ。

 あとは、どうすれば会えるかだが──。


「あれ? 近くの喫茶店の二階? そこにある探偵事務所に都市伝説さんがいるの……?

 まぁいっか! 待っててね、猫ちゃん!」


 一気に都市伝説感が薄れたのであった。

 レイナはそれでも、善は急げと元気に走り出した。


 一方その頃、3人組は──。


「もう、こうなったら“先輩”に頼むしかないっすよ! 姉さん!」


「先輩?」


「すげぇアブねぇ男の先輩で、警察に掴まった事もあるって話っすよ! 生意気なレイネをシメてもらいましょうよ!」


「へへ……そうだな。それくらい怖そうな相手なら、いくらあのレイネでもビビって漏らして土下座するだろう。

 それを寛大に許してやって上下関係(マウンティング)が完了だ」


「それじゃあ早速、事情をメールして……。はや! もう返信がきた!」


「なんだって?」


「こ、子猫を餌に、レイネを呼び出せって……」




* * * * * * * *




「ここ……だよね?」


 レイネは、スマホの地図を頼りに喫茶店までやってきた。

 狭い通りに面したレトロでオシャレなたたずまい。

 古いドラマに出てくるようなお店だ。


 一見さんより、常連さんに好まれそうな雰囲気に見える。

 問題はその二階である。


「うわ、本当に書いてある」


 小汚い看板に『バッドエンド・ブレイカー探偵事務所』とデカデカ文字が貼り付けられていた。


 正直、こんな名前の探偵事務所にまともな人間が依頼をするとは思えない。

 オマケに電話番号すら表記されていないし、窓はブラインドが下ろされていた。

 胡散臭さが、これでもかと噴き出している。


「うーん……でも、猫ちゃんの里親捜しを手伝ってくれるかもしれないしね……」


 レイネは苦笑しながらも、喫茶店に入っていった。

 どこか懐かしい、カランコロンというドアベルが入店を知らせる。

 ガラス戸一枚を隔てただけの場所とは思えない芳醇なコーヒーの香り。


「いらっしゃいませ」


 そう優しい声で迎えてくれる、カウンター向こうのマスターらしき落ち着いた老紳士。


「どぞー。あ、学生さんだからタバコは吸わないよね? こっちの席へ~」


 続いてピョコッと現れた明るい声の若い女性。猫耳のような物を付けたウェイトレス姿が可愛い。

 レイネはそんな印象を持ちつつ、お辞儀をしてから席へ案内された。

 すぐに飲み干せるようにアイスコーヒーを頼んだあと、ウェイトレスに聞いてみた。


「あの、ここの二階に探偵事務所があるって見てきたのですが……」


「あ~、あのクソ野郎……もとい、ブレイカーの事ね。

 もうすぐ相方のエレクトラちゃんが降りてくるから、そっちに聞いた方がいいかもね」


 ウェイトレスに指差された方を見ると、二階への階段があった。

 喫茶店とは違い、薄汚れていて、トイレのような雰囲気を醸し出している。


「ど、どうも。ありがとうございます」


「いいって、いいって。

 エレクトラちゃんは、ちょっと変わった身体の子だけど、とても良い子だから」


「ちょっと変わった身体の子……?」


 すぐわかると思う、と微笑むウェイトレス。


「でも、ブレイカーには気を付けなよ。できれば会わないで済ませるのが一番だ」


 ウェイトレスは真剣な表情でアドバイスをして業務に戻っていった。

 レイネはそれに気圧されながらも、ブレイカーと呼ばれる都市伝説はよっぽど酷い人物なのだろうと確信した。


「あ、コーヒーおいし……」


 この場所に来て良かったと思いつつ、コーヒーをすすりながら階段の方を見ていた。

 しばらくすると、蓋なし懐中時計をネックレスのように下げている、1人の少女が降りてきた。

 ウェイトレスの格好とはまた違う、非日常──メイド服である。

 ふわふわの白いフリルと、黒い布地とのコントラスト。

 折れそうなくらい華奢で低い背丈に、厚めのストッキングと幾重にも布地を重ねたスカート。


 サイドポニーも金髪で、まるでフランス人形のようである──いや、違う。


「もしかして魔動人形(オートマタ)……?」


 人形のような、ではなく、人形そのものだ。

 その証拠に、よく見るとストッキングの下に、人間ではありえない球体関節が薄く透過されていた。


 魔動人形(オートマタ)とは、ここ数年で普及したという一般家庭用のロボットである。

 正確にはあまりに高額なため、一般家庭より商売用に普及したが。


 だがレイネとしては、もう一つ気になる点があった。


 それは数年前に研究所の事故──大穴の発生に巻き込まれた姉エレナに顔が似ていたのである。


「あ、あの! エレクトラさんですよね?」


 妙な親近感もあり、レイネはすぐに近付いて話しかけていた。


「はい、わたくしの個体名称はエレクトラですが?」


 そのメイド──エレクトラは、人形という割には流暢に、普通の人間と変わらない会話を返していた。


「数年前に起きた大穴の事故! そのことについて何か知りませんか!?」


 少女は当初の目的も忘れて、何かに突き動かされるように聞いてしまっていた。

 自分で唐突と分かっていても、止められない何か。

 勘というやつだろう。


「いいえ、事故直後のことはわかりません。ですが、わたくしは不確定領域(ラヴィリンソス)の出身ですので、他の事なら何かお話できるかもしれません」


 大穴の正式名称──不確定領域(ラヴィリンソス)の出身ということは、エレクトラが市販品ではないということだ。

 その柔らかそうで儚げな少女独特の身体は、確かに量産品とは思えない一点物の芸術品だ。


「そ、そうですか……わかりませんか……」


 少しだけ残念そうな表情のレイネだったが、東京に出てきた目的である姉の事を探るという点においては、多少なりとも行動する事ができた。


 ちなみに不確定領域(ラヴィリンソス)からは、様々なモノが出土している


 例としては、人類最強の携帯火器『九星砕く魔銃(ブレイクショット)』。

 禁忌薬剤『人を魔に侵す巨人の血(ギガスブラド)』。

 次元跳躍『32次元ポケットの転移装置(タルタロスゲート)』。

 圧壊雷機『戦局を逆転させる鋼鉄巨人(ZYX)』などがある。


 それらはたった一人の男によって最深部から持ち帰られた。


 エレクトラもその類なら、天文学的な価値だろう。


「あ、ついでなのですが、ブレイカーさんに依頼を頼めないでしょうか?」


「……あの穀潰しで最低最悪の性癖持ちの御主人様は、もう夕方になりそうなこの時間でも御就寝しやがってます」


「あはは……ウェイトレスさんも言ってましたが、なんかすごい人なんですね……」


「控えめに言って、法律に反しない範囲なら、人類の下から数えた方が早いレベルの人物でございます」


 ものすっごい女性に嫌われるような人間なのだろう、とレイネは思った。

 会う会わないの選択肢。

 彼女はここで──会わない事を選択した。


 死のピースがカチリとハマった。

 逃れられない運命。

 秒針の如く迫ってくる死神の鎌。


 喫茶店から出たレイネに届いたメール。

 添付画像には首根っこを乱暴に掴まれた子猫。

 メッセージは、廃ビルで待っているというものだった。




* * * * * * * *




 かつては栄華を誇っていた東京副都心。


 不確定領域(ラヴィリンソス)が現れてからは、その周辺は廃ビルがいくつもできていた。

 地盤沈下の危惧やら、大穴から何か得体の知れないバケモノでも出てこないかということから、近辺の土地価格は下落した。


 不確定領域(ラヴィリンソス)の関係者が買い取り、新たな施設を作ったり、そのまま計画が頓挫して廃ビルが誕生したりという状況なのだ。


 ……その廃ビル五階の一室、レイネは立っていた。

 一緒にいるのは、彼女を取り囲むようにいる例の三人組と、大柄で肩に入れ墨をしたタンクトップの強面男。


「くくく……レイネ。よくあたし達から逃げ出さずに来たね。ほめてあげるよ」


 勝ち誇った三人組の声。それに対してレイネは、キッと睨み付け返した。


「子猫はどこですか?」


「ここだ、ここ。俺様が預かっているぜ? それにしても上玉だなぁ、この女は」


 タンクトップの男は、スキンヘッドを自慢げにキュッキュと撫でながら、もう片方の手で乱暴に掴んでいる子猫を持ち上げた。


「は、離してあげてください! 卑劣です! 約束通り、この場所に来たのですから!」


「おおっとぉ、この生ける都市伝説ブレイカー様に……そんな態度を取っていいのかぁ?」


「ぶ、ブレイカー……あなたが、バッドエンドブレイカーだというのですか?」


「ああ、そうだ。東京のサイキョー魔術師だァ」


「エレクトラさんは寝ていると言っていたけど……」


「エレクトラ? なんだそりゃ?」


 レイネはおかしいと思った。

 この目の前の男はエレクトラを知らないのだ。


 それにブレイカーが寝ていたという探偵事務所から呼び出されて、ここまで一直線に向かってきたはず。

 なぜ、こちらより早く移動できたのか?


 つまりただのニセモノではないかと判断した。

 だが、それを態度や言葉に出せば、状況が悪くなると思って触れないでおいた。


「まぁいい。ちょーっと俺様のいうことを聞いてくれれば、子猫を離してやるさ。

 だけど、逃げようなんて思うなよ?

 俺様の魔銃──“ブレイクショット”が火を噴くぜぇ?」


 そういうとブレイカーと名乗る男は、一丁の拳銃を取り出した。

 見た目は中国産のコピー“自動式拳銃(トカレフ)”……。

 粗悪品がスマホゲームの十連ガチャより安い値段で出回っている。


 その表面には油性ペンで星マークが九個書いてあった。

 手書きなので線が歪んでいる。


「魔銃っていうのは、ゴム弾みたいな特殊軟質弾頭──通称“魔弾”に、俺みたいな超一級の魔術師が魔力を込めて撃ち出すための道具だ」


 ニヤリと笑い、注射器を取り出した。


「知ってるか? 魔術師っていうのは、このクスリに含まれているナノマシンで魔力を精製するんだ。うっ……ふぅぅ~う……」


 注射を打ってご満悦の、ブレイカーを名乗る男。


 三人組はその光景を見て青ざめていた。

 予想よりもずっとやばそうな先輩だったためだ。


「あ、あの先輩……何もそこまでしなくても……じゅ、銃とかヤクとかシャレにならないですよ……」


「あぁん?」


 言葉を発した三人組ではなく、レイネの方に向けられる銃口。

 そして──いともたやすく引かれるトリガー。

 クスリをキメていた精神では、羽根よりも軽い倫理観になっていた。


 何かが破裂するような発射音と、ほぼ同時の着弾音。

 レイネは間一髪、数センチ横にズレていた弾痕を目で追っていた。

 魔力強化によって、軟質弾頭でも普通の銃弾以上の威力がでていた。


「おめぇ達が、生意気な女をシメてくれって、俺様に頼んだんじゃねーかぁ?」


「だ、だから、シメるって言うのは、謝らせるくらいで……」


「ショーネンホーってのがあるのにもったいねぇ。その程度で済ませるかよ?

 まぁ、いいわ。お前達三人も、人数合わせとして付き合ってもらうか。

 近くの工事現場にチームのダチ達が待機してるんだわ。俺様達を満足させろよ?」


「そ、そんな……」


 とんでもない事になってしまった……と、三人組は気が付いた。

 脚がガクガクと震え、実際に漏らしてしまう程に恐怖していた。


 一方、レイネは──機をうかがっていた。

 自分に向かって発砲された時も物怖じせず、相手がクスリをキメていた時も平常心を保っていた。

 女子高生とは思えない常在戦場の精神。


 今──! とタイミングを見計らっての一撃。


「くらえッ!」


 男の視線が三人組に向いた瞬間、学校指定の鞄を思いっきり男の顔面に投げつけた。

 自分たちの身体が目的なら、下手に発砲して殺したりはしないと判断したためだ。


「わブッ!?」


 二発目とばかりに、スマホを男の顔面に投げつける。

 男は体勢をぐらりと大きく崩しながらも、右側に避けた。


「チッ! 脚の古傷のせいで上手く避けられねぇ!」


 よろめく男は、そんな事を憎々しげに口走っていた。

 男の古傷は以前、少女を暴行するという事件を起こしたとき反撃されて刺されたものだった。

 今でもとっさの回避に、片足をかばいながらのよろめく癖が出てしまうのだ。


 その隙にレイネは、敵対していたはずの三人組に向かって叫ぶ。


「逃げてください! はやく!」


「ど、どうしてあたし達のことを……」


「目の前の命を助けるのは当たり前のことです! さぁ、はやく!」


 レイネは三人組を背後の扉へ誘導しつつ、自分はブレイカーと名乗る男に向かって銃を奪いに行った。

 ここで逃げる事は容易いかもしれないが、子猫を掴まれたままなのだ。


「っこのアマ!!」


 男は喧嘩慣れしていたのか、すぐさま反撃した。

 トカレフのグリップの底をハンマーのように使い、レイネの頭部を思いっきり殴りつける。


 レイネは気絶しそうな痛みと視界の揺れ、落ちているのか上がっているのか分からないフワッとした感覚を数瞬感じた後、地面に叩き付けられた。


 せめて、子猫と三人組が逃げてくれれば……そう思ったのだが。


「ちーっす、きちゃった」


 入り口から、ガラの悪い男達がぞろぞろと現れて、三人組を塞いでいた。


「おー、きたか。それじゃあ、もうこの邪魔な猫はいらねーな」


「や、やめ……」


 男は無情にも、最初から決めていたらしく、廃ビル五階の窓から子猫を投げ捨てた。

 見えなくなる子猫。


「確か猫って高いところから落ちても平気なんだっけぇ? でも、運が良ければ走ってくる車辺りが──」


 何かのドンッという衝突音と、ブレーキ音が聞こえてきた。


「ビンゴ! ラッキーだな! うはは!」


 もうここに希望は何一つ無かった。




 これから起こる事は少女達への蹂躙と、飽きるまで続く地獄の監禁。 

 魔薬(クスリ)の過剰投与によって、ついでに捕らえられていた三人組は、魔力中毒によって精神に負荷がかかりすぎて人格崩壊していた。


 だが、レイネだけは絶望の中、最後まで抗い続けた。


「ごめんね子猫ちゃん……助けら……れなくて──……」


 彼女はそれから数週間、信じられないことに同環境で正気を保ち続けていたが、身体への負荷で死亡した。

 享年16歳。


 犯人グループは未成年だったため、名前は公表されずに、また人知れず犯罪を犯し続けた。


 ──この一連の流れを、時間を超えて覗いている存在がいた。

 悪魔のような笑みで満足して、興奮して、この未来を撃ち砕くことを決めていた。

 理由は、彼女が最後まで折れなかったこと。


 最高濃度の魔薬を打ち込まれたのに、無残な死の瞬間まで、美しい魂を保っていたこと。常人では成し得ない精神力。聖人すらも超越したであろう狂気を裏返した狂気。救済するに値する存在。


『因果の逆転──皆殺しの時間(ブレイクタイム)の始まりだ』


 世界で最初に誕生した本物の魔術師(・・・・・・)は、時間を巻き戻した。

本日は一区切り付く4話まで投稿予定です。

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