フラグ1 汝、死を忘れることなかれ
俺は土の地面に倒れていた。
わき腹の傷口が熱を持ち、流れ出ていく血液。
「こりゃ……やべぇな……」
ショック死ではなかったのが不思議なくらいだ。今の状況は瀕死といえる。
突然の爆発に巻き込まれて、吹き飛ばされて、壁に激突したのだ。
その時の衝撃で骨が折れて突き刺さったのか。それとも硬い破片が肉を切り裂いたのだろう。
とにかく出血が酷い。
動けもしない。
傷が熱いくせに寒気がしてきた。
こういうとき、普通は泣きたくなるのだろう。
叫びたくなるのだろう。
呪いたくなるのだろう。
だが、俺の感情は違った。
死へ突き進むというのはこういうことか、と。
酷く冷静だった。
もちろん自殺願望ではない。
痛みは苦痛であるし避けたい。
それでも観察してしまう。
俺は人間の最期が好きだからだ。
特に非業の死──バッドエンドというのは最高だ。
常識的に考えておかしいのはわかっている。
──だが、命の輝きとは光消える瞬間が、すべてを表現してくれるのではないか?
「……自分が死ぬ瞬間まで、何を考えているんだろうな」
俺は、アイツら──輝かしい幼なじみ2人とは違う。
俺は、アイツらとは違って落ちこぼれだ。
俺は、俺は、俺は……ッ。グッドエンドは似合わない。
やっぱり【バッドエンド】が、お似合いだ。
「エレナ、ごめんな」
俺を好いてくれた、幼なじみの少女の名前をポツリと呟く。
そして死を迎え入れた。
俺を見ている誰かがいたような気がするのだが、きっと気のせいだろう。
本日は一区切り付く4話まで投稿予定です。