『元』勇者の異世界ツアーガイド
ちょっと浮かんだので書いてみました。
「いらっしゃいませ、異世界ツアーへようこそ」
笑顔で来店してきた客に対応する。
異世界ツアーとは言葉の通りに『異世界でツアー』という事なのだが・・・。
何故そんな事をしているのかというと、色々な事情がある。
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異世界に召喚され、向こうの世界を救った。
簡単に説明すれば、そういう事だ。
いわゆる『異世界テンプレ』とでも言うべきか。
そこまでは聞いたことがある話だとは思うのだが・・・。
元の日本に戻って半年程経ってから、何故か首相官邸に呼ばれた。
行った先には何故か知らないが、向こうの姫が一緒にいた。
何でも『双方向での移動が可能になった』とかで。
何故に半年経ってからなのか聞いてみたら『そこそこ早めの時期に来てはいたが、俺の名前と顔、年齢しか判らなかったので同姓同名の顔写真をひたすらチェックしていた』との事で。
・・・・・・・・そいつはご苦労な事で。
で、文化交流も含めた事もやりたいのでまずは政府から発表し、少しずつ浸透させていくという方向に決まったようで。
そこで日本側で異世界を知っている俺に白羽の矢が立ったワケだ。
俺なら勇者をやっていたので何かあっても対応出来ると。
様々な場所に行っているので水先案内人の様な事が出来るという事だ。
えーと、つまりアレか?
俺に『異世界ツアーのガイド』をやれという解釈でOK?
なるほどなるほど。
あれ?ツアコンの資格って18歳以上じゃなかったっけ?
え?研修は受ける必要がある?世界が違うと関係ないんじゃないの?
18歳になったら特例で交付する?まぁ、細かい事を気にしたらキリがないしな。
俺しかツアコンできないの?そんなんじゃ俺が過労死しちゃうよ?
え?異世界側のスタッフも用意してくれるの?え~とね、各種族いないと対応出来ないよ?
エルフとかドワーフとか獣人とか最低10人ずつは必要だよね、ローテーション的には。
場所ってどうするのさ?あんまり都会は好きじゃないんだけど。
転移は魔法陣だからそんなに広さは関係ない?
でもあれだよね、空港みたいに出発用と到着用に分けた方が効率良くない?
どこかにさ、小さめのショッピングモールとかない?それくらいの規模になりそう。
警察署も近くにあると良いよね、治安的に。
欲を言えば自衛隊にも居て欲しいんだよねぇ。何かあっても困るし。
設備は事務所とロビーとカウンターと出発用・到着用の設置場所。念のため税関あった方が良さそうだな。イメージは空港で。ヘリポートは可。
俺も含めたスタッフの住居。どうせ常駐しないとダメなんでしょ?
じゃあそんな感じでお願いしますよ。
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半年間、ツアコンの勉強を『強制的に』受講させられた。それこそ学校の授業のように。
模試でかなりの成績を修めるようになり、日本側での実地研修。
ツアコン会社で新規にツアーを行う前のスタッフだけの下見というか研修というか、そんな事に一緒に着いていく。
ある程度数をこなして慣れたら、今度は異世界側での観光に使えそうな場所を模索していく。
王城はどこまで入っていいのか?
宿の手配は?
市場では軽食に使えそうなモノはあるのか?
風光明媚な場所はあるのか?
移動手段は?
安全対策は?
現地でのガイドは?
意思疎通は?
王城は入り口まで。
宿は問題ない。
市場はギルドに頼んで協力をお願いした。
風光明媚な場所は、あまり遠くならない場所に良さそうなのが幾つか発見できた。
安全対策は王様がお触れを出した。『異世界から来た者に危害を加えたら死刑』
ガイドは目下育成中。各種族で出来るようにする予定。
意思疎通は魔力を込めた水晶をペンダントにして滞在中は身に着けて貰う。
日本に帰国後は魔力が抜けてただのペンダントになる。
これは異世界に行った証拠にもなる。(地球側に無い素材な為)
とりあえず、たたき台として3泊4日程度のスケジュールを出してみた。
プランニングしながら、現地の交通手段を用いてそれ通りに行くかやってみた。
まぁ、無理がない程度に抑えてあるので多少時間がズレる程度で済んだ。
問題なのは一度に大量に行ってしまうとフォローしきれないので、暫くは『一回につき〇組まで』といった形にする予定。
これは宿や現地ガイドの数が増えるまでは据え置きになりそうだ。
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半年間の勉強している間に施設は姿を変えていた。
元々あった潰れていたショッピングモールを取り壊し、大きな三階建てに。
判りやすい表現としては羽田空港の国内線ターミナルといったところか。
一階は出入り口。
二階は到着側。
三階が出発側。
詰所には警察と自衛隊がそれぞれのフロアにある。
空港と違う点は土産物屋がない事だろうか。
エスカレーターが複数あり、一階から三階までぶち抜きの、一階~二階を繋ぐ、二階~三階を繋ぐ、といったほぼ羽田空港と同じ様なスタイルにしてもらった。
あまり時間が無かったので今回だけ特例で、という事らしい。(デザインだとか)
建物の隣には超巨大立体駐車場があり、屋上にはヘリポートが設置されている。
また、建物正面にはバスロータリーがありいずれは路線バスも通る計画のようだ。
近所を見渡せば、大小さまざまなホテルが建築中でこの一画だけまるで再開発中のエリアのように思える。
スタッフの教育も済み異世界側の受け入れ態勢も整ったので、ようやく業務開始となる。
国としての事業な為、オープンイベントには物凄い豪華な顔ぶれが集まった。
総理をはじめとする関係性のある大臣。
この施設を作った会社の社長。
姫さんももちろん参加している。
この時点でようやくマスコミに情報解禁したので、噂では知っていたのだろうが物凄い報道陣の数。
国内だけではなく海外からもやって来ている。
今は総理が設立意義の話をしている。
長い話も終わり、公募で当選した運のいい異世界旅行者が目の前にいる。
表情は期待と不安が半々というところだろうか。
「大丈夫ですよ。言葉はちゃんと通じますから」
そう言うと少し安堵した顔になった。
『それではオープンです』
というアナウンスが聞こえたので、周りにいるスタッフにアイコンタクトをする。
うん、大丈夫そうだな。
「異世界ツアーへようこそ!」
こうして、俺の異世界ツアコンが始まった。
設定等はグダグダだと思います。
良いにしろ悪いにしろ感想を頂けると有難いです。
施設の部分を変更してあります。