WHYYYYYYYYYYYY
お茶会から二週間がたった。比較的穏やかな日々が続いている。
リリアンとはあれ以来会えていないがじっくり話をしたいものだ。
ノアはいつも通り私をからかって遊んでくる。小憎らしい。
ふと窓の外を見ると桜が舞っていた。
何故桜が舞っているかというと、この世界は世界観がめちゃくちゃなのである。
一つずつ説明していくと長いので省略するがまず、貴族。学園系乙女ゲームに有りがちだからわかる。TVやPC、スマホ、レンジ、洗濯機などの電化製品がない。わかる。四季がある。これはわからないでもない。桜がある。どっかの国からか持ってきたのだろうギリギリわかる。
車、水道、郵便制度などがある。…さすがにわからない。
シャーペンやノート、消しゴムなども前世と変わらないクオリティの物が置いてあるし服装も可愛いセーラー服なのに普段着はワンピースやドレス。少し紹介しただけでもわかるがご都合主義で出来上がっているこの世界。過ごしやすいしとてもありがたい話だと再び神様ありがとうと言いたい気分になる。
…とでも思ったか愚か者め!!私がなぜこんな目に合わなければならないんだ!!なぜこんなにも憤慨しているかというと変な噂がお茶会の後から流れているのだ。その変な噂とは私が『リリアン・グランジェという名の令嬢を虐め、その上リリアン嬢の婚約者である王子を狙っている』というものだった。
WHYYYYYYYYYY!!!
ば、バカな…ヒロインであるこのロゼリがッ!!ロゼリ様がッ!そんな噂を!
…もう…本当になんでよ…王子なんてリリアン嬢がいい子な時点で狙う前に諦めたし虐めなんてしたこともないのに…。根も葉もない噂だというのに講義の際、席の周りには人っ子一人居らず、みんな小声で「下品な子」「イヤらしい子」と言って私を蔑んでいる。今日も今日とてしょんぼりと項垂れながら歩いていると人にぶつかる。
「ああ、すみません…。」
顔も上げずに謝っていると頭上から聞いたことのある声が聞こえる。
顔を上げるとやはりノアだった。
「随分と凹んでるなロゼリ。どうかしたのか?」
怪訝そうな表情といつもに比べて優し気な口調に冤罪で侮蔑され、はち切れそうなくらい悲しみでいっぱいになっていた心が崩れ、思わず涙が零れる。
「え!?は!?なッ!?どうした!?」公衆の面前でボロボロと泣き始めるロゼリに焦ったノアはロゼリを引きずりながら近くのカフェへと入った。
「ごめんノア…。」泣き止みはしたが目が赤く腫れている。
「で、いったい何があったんだ?ケーキ食うか?」
「食う。ベイクドチーズケーキと紅茶…。」
「そこは泣いてる女なら普通、食欲無いとか言うんじゃないのか?」とノアが元気づけようとしてくれているのだろうとワザと言っているというのは分かったが心が崩れてしまっているHP0のロゼリには刺激が強すぎたためにまた泣き始めた。
「いいもん…じゃあ食べないもん…。」
そう言ってそのまま拗ねて顔を机に向けて俯いてしまう。
「すまん。からかった。でも、ロゼリが泣く程落ち込むなんて何があったんだ?今日だけ特別に、話なら聞いてやるよ。」
ロゼリは顔を上げ、ノアの顔を見ながら泣いている。
「きゅ、急に、優しくしないでぇ~涙が出てくる…。」
「あーあー…」とノアは制服の袖でロゼリの涙を拭く。
「何があったかは知らないけどもう泣くな。な?不細工な顔が更に不細工になるぞ?」
「私は美少女だ!!」涙声で即答するのでノアは「はいはい。」と苦笑いをする。
「それで、何があったんだ。」ロゼリはしゃくりあげながらここ二週間程前から噂になっていることについて話す。
「…わたし…前…から、いじ、められたことっなかったし、いじめもしたことないし、リリアンは、お友達だしわけわかんなくて…誰が、最初に、こんなうわさ…私、なにも。」ロゼリはまた声を上げて泣き始めた。ノアが小さく「やっぱりそれか。」とつぶやいたような気がしたのはきっと気のせいだろう。
「よし、じゃあその噂を流した犯人を捜そう。」
「でもでも、この学年男女合わせて二百人は居るよ?」
ノアはいつの間にか私の隣に座り、頭をポンポンと撫でてくれる。
「大丈夫だロゼリ。俺だけじゃなくて情報通のジョシュア…王子とかキール、あと知り合いなら本人であるリリアン嬢にも頼んで一緒に探してもらおう。な?」
私も含めた5人、その内情報力がチート級であろう王子もいる中で犯人を捜すとなると急に実感がわき、涙は引き霞がかっていた視界がクリアになる。
私は飛び切りの笑顔を作り「ありがとう。」とノアに伝える。
「…あー、前言撤回。不細工じゃないわ…お前…どっちかというと可愛い…かもな?」
「でしょ?」メンタルが完全に戻り、どや顔でそういうと「調子に乗るな。」と軽くチョップされた。
さあて、楽しい楽しい犯人捜しの時間だ。
わーいハチャメチャご都合主義設定たのしー