秘密を聞いてしまった。
一日も経ってないのに200PV行きました(多いのか少ないのか不明)でも嬉しかったので
更新しますね~。
入学式の日は車ではなく一人徒歩で学園を目指した。
(勿論見えないところにボディーガードは居るので厳密にいうと一人ではないのだが)
元々アキとしての私は歩くのは苦ではなかったし何より大した通学でもないのにお車で送り迎えというお金持ちの生活は前世の記憶もあってかむず痒くてまだ慣れなかった。
屋敷から学校まで結構かかったが学校から人々の声はしない。
それもそのはず今日だけは校門をどの生徒よりも早く超えたいという一心で来た。
上級生は休みなうえ入学式まで軽く一時間以上ある。
校門の前で「せぇーの…」と小声でつぶやき、ピョンと校門と学校外のラインを飛び越えると、達成感で胸がいっぱいになった。
清々しい気持ちで入学式をやる式場方面へ歩いていると誰かが近くで話している声が聞こえた。
一番では無かったショックとこの朝の早い時間に生徒がいるという不自然さにコソ泥のように抜き足差し足忍び足で声のする木陰にある倉庫裏の方へ近寄る。
物陰からチラと見ると白馬の王子ジョシュア王子と宰領の出来息子キール・ラッカーが見たことのない細身で長身な男と話していた。
宰領の息子と王子、高貴な二人が早朝に目立たない場所で話し合いということはきっと秘密ごとだろうと思ったが、入学式に一番乗りで入れなかったことへの逆恨みでロゼリは聞き耳を立てる。
決して興味などではない。決して。
「…今日がその入学式だがまだ引き返せないわけではない。」
何のことかさっぱり意味が分からないロゼリは静かに聞く。
「ええ、大丈夫ですよ。むしろ私や王子であるジョシュアが居るのですから警備面では絶対安全ですよ。」
キールは柔らかい笑顔を見せながら言う。
「警備面では全く心配していない。そういうことじゃないんだ。私が心配しているのはこの国へお忍びで留学をしに来ているという秘密が漏れないかということだ。」
突然ビックリする話を出されてついつい身じろいでしまう。少し足元で音が鳴ったが三人には聞こえていなかったようだ。
それもそのはず、集中して聞かなければ三人の声など聞こえないほどの距離から私だって聞いているのだから。
_逆にここで「誰だ!?」とか漫画みたいになったら聴覚が鋭すぎてドン引きしてたわ…。
「大丈夫だよ、ノア。僕とキール、そして君が一斉に入学した入学直後から王子である僕と仲良しなら素性を探られるだろうが、僕とキールは中等部のころからこの学園にいるし、高等部の入学生には僕たちですら知らない沢山の貴族のせがれや貴族ではないけれど特待生枠として秀才な人々が何人もはいってくる。それに、祖国では影武者を立てているんだろ?誰も気づきはしないよ。」
「名前もありふれているしね。」と王子はニッコリと微笑む。
「…そうか?確かにお前らは友人で信頼のおけるやつらだからな…だが、くれぐれも他のやつらには私が他国の王子だということは悟られないようにしてくれ。」
「悟るも何も私とジョシュア、それに私の父と王様以外貴方を見たことがないでしょう。この学園に貴方の国からの留学生や出身者は居ませんしね。」
「まあ、確かに…だからこそ…」
急に鳥が一斉に鳴き、後の言葉が聞き取れなかった。
おのれ鳥たち…おはよう。いい朝だね。
「ノア、学園を楽しみながらだからね?僕、応援してるね。」
「お前に言われると嫌味に聞こえるんだが?」
三人が笑いあっているのを確認し、私はゆっくりゆっくりとその場を離れた。
入学式の時間が徐々に近づいているという理由とこれ以上居てはバレるかもしれないと思ったのだ。
決して飽きたり、足腰が痛かったり首が疲れたなどという理由ではない。
それにしても入学式が始まっていないというのに学校生活に大きな影響を与えるような重大な人の秘密に直面してしまった。
私は~ただ~腹いせに聞いてやろうと思ってただけなのに~
秘密を聞こうと思って聞いたわけではないのに~
やだ~どーしよー。
ともかく私に野心があればこの秘密をネタに王子や宰領の息子、他国の王子(?)をゆするのだろうが私にはそんなことをする理由も人にバラして噂にする趣味もない。
私はただただ、この胸に大きな秘密を仕舞いながらその場を立ち去ろうとする。
朝日を受けた木々が足元にある何かに反射して私の目を刺す。
見ると足元には銀色のロケットペンダントが落ちていた。
どう考えても三人のうち誰かの落とし物だろうと思ったのでソッと足元に戻そうとしたとき、笑い声が徐々に近づいてくる。音を出せばきっとバレてしまう。
私はポケットにペンダントをしまってそろりそろりと立ち去り、素知らぬ顔で入学式を迎えた。