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どうしてこうなった♪どうしてこうなった♪

乙女ゲームあるあるの両親が居ないとか片親しかいないとか継母とかはない。

ウチの両親はいたって健康である。

そしてとんでもなく仲が良い。

おっとり天然を装った父を尻に敷き、怒ると怖い策略家な母とヘタレで心配性で泣き虫、娘にはゲロ甘いほんの少しダメな家長である父の釣り合いが取れたいいコンビなのだ。


「ああ、ロゼリおかえり。」


リビングのソファーにはいつも眉をハの字に笑っている父ではなく心配そうな顔をした父隣にはいつも通りほんわり笑っている母。

その向かいには場違いにもノアが座っていた。


「ただいま。どうしてノアが?」

そんな言葉など聞こえなかったように無視をし、深刻そうに口を開く父。


「ロゼリ、どうか落ち着いて聞いて欲しい。」


「え、うん。」


「実はね…お家が、取りつぶしになったんだ。」


「…へ?」


待ってくれ、状況が呑み込めない。

父は依然困った顔でこちらを見ている。本当なのだろうか。3人で私を嵌めようとしているのではないだろうか?嘘なら嘘で少しだけ焦らせたことを怒るが許す。だが、もし本当だとしたらWHAT?理不尽過ぎね?学校も楽しくなってきてはてさて好きな人でも作るかなと思ってた矢先のこれ?

真っ先に没落END?ここはヒロインにとことん厳しい世界だな、オイ。

本当に“スイスク”の中なのか?こんなゲームだった覚えはないぞ??ん?


「あー、えっと…嘘じゃなくてホントに?」


とりあえず聞いてみる。どうか嘘であって欲しい。如何せん急展開過ぎる。

それこそ下手な漫画やゲームよりも急展開だ。もしこの運命シナリオを描いた神が本当にいるのだとしたら何をもってこうしたのだと胸倉を掴んで問いただしている。


「本気なんだ。とりあえず家も含め家具とかも全部差し押さえられるしもう既にこの屋敷の買い手が決まっているらしいから家族全員で数日後この家を出る。」


「数日後!?急な話だね!!」


普通はひと月くらい猶予があるものではないのか?もしかするといいづらくてずっと隠していたとか…だとしてもなんでノアがここに居るんだ?

本当の事だと知りオロオロする私を他所にノアは平然としていた。


「急なんだが飲み込んでくれ…それで、今後なんだけどな…その…な、ママ。」

父は言い淀むといつも母に頼む。おまけに父は母の事をいつでもどこでも「ママ」呼びなのだ。せめて本日は同級生が来ているのだから「母さん」とか本名で読んで欲しい所だった。私が恥ずかしい。


「パパね、このノアさんの紹介で少し遠くのジュエル国へ出稼ぎに行くのよ。」

あ、母も「パパ」呼びでした。「お父さん」とか「この人」呼びが良かった。

本当にこの両親恥ずかしい。なんてことを考えて現実から少し目を背ける。


「…でもその国へ行ったとしてお父さん自身にはなんのツテもコネもないんだし…仕事以外のことは?」


「衣食住に関しては全く問題ないの。服は差し押さえられないから持っていけるし、ノアさんってとってもいい人でね?その国で私たちが暮らす為の家に自分の別荘を貸してくださるらしいの。だから住居の心配はしないでいいって。おまけに食料の心配もないのよ、給料の前倒しとして3か月分のお金は渡してくれたわ。至れり尽くせりよね。」


なんというかそれは、普通なら神待遇とか思うんだろうけどこちらに甘すぎやしないだろうかと言うくらいの待遇だ。ノアに何のメリットがあるというのか、どうも胡散臭くて裏を勘ぐってしまうが…。というか、ジュエル国に別荘持ってるあたりやっぱりコイツ平民出身の特待生じゃないじゃないか。リリアンもああいってたしやっぱり王子なのだろう。


「生活の心配は要らないってことね?」


「ええ、お母さんも持ち前の家事の腕で働きに出るし何にも心配いらないわ。」


ウチの家では貴族にあるまじきと言われるがみんな家事をする。屋敷が大きいため掃除は分担制で母は低血圧、私は寝坊助の為朝食はメイドたちがやってくれていたが洗濯や洗い物はメイドたちと和気藹々とやっていたのでできる。


因みにウチの家のメイドたちは全員パート制のアルバイターたちだったので突然解雇と言われても途方に暮れるやつはいないだろう。それどころかひと月前から言われているならもう既に勤め先を探しているかもしれない。ああ、勿論パート制だなんだっていう雇用制度は数年前に私が提案した。


よくよく考えてみるとこんなに急と言うのが逆にリアルかもしれないと思い始めた。両親は娘を不安がらせてはいけないと没落が分かっていながらも中々言い出せず、新居や新しい仕事を探すのだって全て娘には悟られないように水面下で動いていたと思うと目頭が熱くなる。


「…総じて凄く良い話だね。今の学園に通えなくなるのは残念だけど家族3人新天地で頑張ろうね。」

珍しく真面目に言ったのに何故か父は目を泳がせ、母は困った笑顔を浮かべていた。解せぬ。


「…いや、あの、ロゼリ?お母さんもお父さんもその国へ行くのだけど貴方にはほら、今通ってる学校があるでしょ?」

そりゃ有るが、没落してしまったなら関係のない話ではないだろうかと眉を顰める。


「学費は入学時に全部払っちゃってるのよ。だから貴方は卒業までこっちへは来れないの。」


「えっ!?」


今日一番の衝撃だ。では、どうしたらいいのだろう。

一番は泊まるところだ。私は家が無くなり、友達の家を転々とする不良美少女のようになってしまうのだろうか。

エマーズ家の方針で何時没落して召使が出来るように家事は一通りできるように教育されているが経歴がなく若輩者の私を住み込みで雇ってくれるところなんてなさそうである。あとは身体を売るという恐怖の選択肢しか残されていないが…。

カタカタと小さく震えていると今までだんまりを決め込んでいたノアが口を開いた。


「ロゼリさん安心してください。貴方を路頭に迷わせないために貴方は私の家に置くことになっていますから。」

今気づいたがノアが伊達眼鏡をかけている。つまりは猫被りモードだ。

爽やかな笑顔でそう言いはなったこの外道ノアの心の声が知りたい。


「そう、そうなんだよ!いやあ、ノアさんはお優しい方だよロゼリ!!僕に仕事を紹介してくれるしお屋敷まで貸してくれる。普段なら年頃な男女の同棲なんて認めないけどこんなに良い方なんだから大丈夫だろうってママと話してたんだ!ね、ママ!!」


「ええ、ホントに。ノアさんなら安心して娘を預けられるわ。」


両親に言いたい。一番信用してはならない奴を信用したのではないかと。

あとなんとなくだが、母の言い方には含みがあった気がする。何故だ。

その後のことは矢継ぎ早でポンポンと事が進み、あまり覚えていないが「学園側は卒業までロゼリが没落したこと隠してくれるらしいから。」とか「もう、引っ越しの準備は済んでるから早く慣れる為に今日にでもノアさん家へ行きなさい。」とか言われて



あっと言う間に何故か大荷物を持たされたわたしは馬車に乗せられた。

★急展開すぎる★

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