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いろんな生き物がいるなぁ

 オオサンショウウオの薄暗い場所を抜けると、明るいエリアに出た。さすがに人が多い。と言っても10人くらいだ。屋外のような感じで、大きな水槽があり、オットセイがいた。水槽の一部がくぼんでいて、中に入れば左右上が水槽になっている。

 中に入っている人が出るのを少しだけ待ってから入る。こっちに向かって泳いでくる姿とか、お腹とか横からでは見えにくい姿もよく見える。


「オットセイか。可愛いねー」

「めちゃくちゃ回ってて可愛い」


 すぐ右手側のくぼみで、オットセイが何故かぐるぐる回るように泳いでいた。水槽ぎりぎりで泳ぐおかげで、尻尾?の先までよく見える。尻尾は二股に分かれていて、尻尾と言うか足先みたいだった。


「この尻尾って、エビフライに似てるよね」

「何で揚げる必要があるのかはともかく、そう言えなくもないわね」


 いちいち新ちゃんはツッコむなぁ。おもわず言葉選びを間違えちゃっただけで、エビってことが伝われば十分なのに。そういうとこうざいよね。


 オットセイを通り過ぎると、ごま塩柄のアザラシだ。同じような種類に見えるけど、白いほうがちょっと可愛く見える。アザラシも尻尾は二つに分かれている。

 隣に丸い筒形の水槽があったのでのぞいてみたけど、何もいない。なんだろう?


「新ちゃん、これなんだろう。準備中かな?」

「ん? ああ、あれじゃない? アザラシの通路」


 あ、なんかそれ聞いたことあるかも。ふーん。確かに、下が繋がっているっぽいね。


「……来ないね」

「そうね。もう次行きましょうか」


 しばらく待ってみたけど、アザラシは通路を通らないので、次へ行くことにする。

 この先にはペンギンがいる。楽しみにしながら進むと、床に模様が見えた。これは、足跡!


「見て見て新ちゃん! ペンギンの足跡が書いてあるよ。可愛いー」

「へぇ」

「感動ひくーい」

「本物を見るっているのに、印刷で喜んでどうすんのよ」

「印刷って言わないで」


 足跡は壁に書かれているペンギンに続いていて可愛かったけど、新ちゃんは興味なさそうに水槽に顔をよせた。負けじと私も隣に並ぶ。


「可愛いねー」

「あんたそれしか言ってなくない?」

「いいじゃん。可愛いんだから。それとも可愛くないの?」

「いや……可愛いけども。でもよく見ると、くちばしって思ったより、何というか、武骨な感じね」


 言われてペンギンの細部まで目を光らせてみる。

 ペンギンはお腹が白くて、白目があまり見えないつぶらな瞳で、パッと見て可愛い! と言う印象を受ける。でも確かに、言われてみると、よく見るとくちばしはなんだろう。

 人間で言うと爪? 堅そうな何かで構成されていそうだけど、つるつると言うより若干の毛羽立ち、というかささくれのような部分もある。


 先端は上側のくちばしが下の先端を隠しているけど、覆っていると言うより、下のくちばしの四角い部分にはまっているように見える。上のくちばしの先端はそれこそ爪みたいにきゅっと曲がっていて、これで指でも挟まれたらかなり痛そうだ。

 足元に目をやると、これもまた、結構するどい。鶏の足みたいにうろこっぽいごつごつした感じの肌に三本の指があって、黒地にところどころピンクっぽい肌色は、何とも言えず生々しさを感じる。ペンギンと言う脳内ではほわほわした柔らかなイメージなのに、荒々しさを感じる。


 やっぱり、可愛いと言っても動物として生まれて何年も半野外の水辺で生活していれば、こんな風になるのか。ご家庭の愛玩動物みたいに、エステを受けるわけでもないしね。


「うわ、ちょ、ガンちゃんガンちゃん、早く来て」


 呼ばれて顔を向けると、新ちゃんは私より少し進んだところで同じくようにペンギンを見ているけど、何か面白いものがあるのか。

 早足で隣へ行くと、ガンちゃんが珍しく慌てたようにガラス面をつつくようにペンギンを指さす。


「見て、この目つきの悪さ」

「うわぁ、めっちゃ充血してますやん」


 さっきのと違って目元の毛が白いペンギンは、目の周りが少しアトピーみたいに赤くなっている。そしてさっきのより白目が見えていて、白目部分が赤くなっていた。

 な、何て、可愛くないんだろう。目って大事だなぁ。


 と思っていると、隣で同じタイプのペンギンがいて、同じように目元は赤いけど、頭を下げて毛づくろいしていて、白目はよく見えない。うん、可愛い。目って大事だなぁ。


「この毛づくろいは可愛いわよね」

「お腹のとこ、こう、ふさふさって感じでいいよね。かわいー」


 同じのばかり見ても仕方ないので、歩きながらペンギンを見ていく。


「って、このペンギン凄いよ」

「わー……」


 同じように毛づくろいしているペンギンがいたのだけど、近づくと凄いことに気づく。毛が抜けている。

毟った毛が床に落ちていて、頭も背中もまだら禿みたいになっている。


「換毛期って、やつなのかしら」

「うわぁ……なんか痛そう」

「まぁ自分で剥いてるんだから、痛くはないでしょ。でも何というか、よく見ると地肌って、タオル地みたいね」

「た、タオルって……ちょっとわかる」


 なんて表現するんだろう。これ。太くてふわふわの毛が生える為か、根本の毛穴が大きいのか、網目みたいな地肌だ。どうなってるの? 本当の地肌の上に一枚あるのかな。


 もはやペンギンを可愛いだけの生き物とは見えなくなってきた。ペンギンも生きてるんだなぁと、今更当たり前すぎる感想を持ちながら、次へ進むことにする。

 進むとまた薄暗いエリアになった。円形の大きな水槽が見えた。どうやら、大きい水槽を中心に通路が続いているらしい。向こう側に人がいるのが見えた。


 水槽の中には大きなエイ? がいた。つるっとしていて触り心地がよさそうだ。

 と、思っていると何やら小魚の群れが見えた。凄い数だ。あれは何かな、と思うと説明文を探すより先に隣にいた新ちゃんが教えてくれた。


「イワシだって」

「へー。食べたくなるね」

「おいデブ」

「誤解だって。別に魚が泳いでいるのを見て思ったんじゃなくて、イワシって名前を聞いて思っただけだって」

「何が誤解なのかわからないんだけど。とりあえず水族館で魚に関する食欲ワード口にするのやめてくれる?」

「ごめんって」


 怒られた。黙っておこう。

 その先には小さな水槽に個別にいろんな種類の生き物がいた。タツノオトシゴみたいだけど、名前が違うちっさいのがいた。頭と背中あたりに、半透明のひれみたいなのがあって、それをぴろぴろとせわしなく動かしている。足先をくるっと丸くしてるのも可愛い。

 ほかにもちっさいサメとか、鱧もいた。鱧って改めて見ると、怖い顔してるなーと思って見つめていると、新ちゃんから胡乱げな目を向けられた。


 はっ! 疑われている!? 誤解だよ! 私、鱧そんな好きじゃないし! 特に湯引きを酢味噌につけるのが、あんまり好きじゃない。酢味噌自体があんまり。梅肉ならいいけど。って、こんなこと考えてたらまたおかしな因縁をつけられてしまう!


 そそくさと次へ向かう。サンゴとか、熱帯魚のコーナーも一通りみて、次に到着したのはクラゲだ。入った瞬間が暗すぎて、一瞬他のお客さんとの距離感を見失いそうになる。思わず新ちゃんの腕を掴むと、つかんだ左手が私の腰に添えられた。

 そのまま目の前の青い光を放つ水槽にゆっくり近づく。水槽には長ーい足のクラゲが数匹いた。その長い職種が揺らめている姿は幻想的で、ほう、と感嘆の息が思わずもれてしまう。


 傘の部分は黒い線みたいな模様がついていて、細い足を揺らしているの。その足にも種類があるようで、ぴらぴらしたフリルみたいなおおきいものが数本ある。その大きいのには芯みたいなのがあって、それにまとわりつくように揺れている。さらにそれの周りに細ーい細かい足がたくさんある。

 その細い足をよくよく見ると、ごく細い足の先端は少しだけ太くなっている。ぷっくりしていて、糸ではなくてちゃんと生き物の足なんだなとわかる。


 ふわふわと不規則に漂うようで、それでももちろん本体について動いているわけで、ゆっくりと動いていく。

 これって一つ一つに神経が通ってるわけではなさそうだけど、でも動かせないと、移動難しいし、やっぱり通ってるのかな。


「ねぇ、ガンちゃん、知ってた?」

「なに?」

「ベニクラゲって不老不死なんだって」

「えっ、これが!?」

「これはアカクラゲ」

「……なんで今言ったの?」

「言いたくなったから」


 自由か。いや確かに知らなかったけど、思い出したから豆知識どやぁってしたかったんだろうけど。


 じっと見ていられるし、いつまでも見ていたくなるけど、横に来た人がカメラを構えだしたから、遠慮して他のを見る。


 ミズクラゲとか、オワンクラゲとか、小さな水槽にも色々なものがいた。

 全体が透明に見えるけど、よーく見たら体のまん中あたりに、赤い粒みたいなのを持ってるのがいる。これは内臓? それか食べたものとかかな?

 細かーい毛みたいなのが傘から出てるのは、それが足なんだろうけど、あまりにも細かいから、泳いでいるのを見てると、動きで水の濁りが移動したのかなと最初思ったくらい、足が細くて驚く。


「うわ、これめっちゃ綺麗じゃない?」

「え? わー、ほんとだ。足が他のと全然違うね」

「ブルージェリーフィッシュ、だって。足が糸みたいなのじゃなくて、なんだか、氷みたいね」

「氷?」


 どの水槽もブルーライトで照らされてるけど、ブルーって名前だけあってこれは元々青いんだろう。

 きゅっと丸い傘から、なんだろう。ブロッコリーの緑の部分みたいな感じでもりもり生えてるのが足だろう。よーく形を見てみると、氷の結晶の形に見えなくもない。


「氷ねぇ。私はブロッコリーに見えたよ」

「ねぇ、まじで意地汚すぎない?」

「そう言うんじゃなくて、シルエットの感想なんだししょうがないじゃん」

「そうかもだけど、徹底しすぎてキャラ作りしてるのかと思うわ」

「そんなわけなくない?」


 一通りのんびりとクラゲを堪能してから、次へ行こうか、と言うところでスタッフが歩きながら、イルカショーの時間が迫っていることを宣伝していった。本日最後らしい。これは行かないわけがない。


 他のお客も一斉に歩き出すのにあわせて、私たちも歩いていく。案内されるまま行くと、広いイルカショーの観覧席に出た。

 途中で笛だと渡されたストローをもてあそびながら、どの席につこっか? と話していると、大きな声で前四席まで濡れると言う案内の声が聞こえた。


 手前の入り口すぐで、五段目が空いてたから滑り込むように座る。どこにこんなにお客がいたのか、端の見にくそうなところはおいて、それ以外は上段も下段もそこそこ埋まっていた。

 親子連れが多いけど、カップルもいるようだ。リア充爆発しろ。


「この笛ってどう吹くのかしら? 音出る?」


 新ちゃんがストローを口にくわえて首をかしげている。こっちに向かって、二股に切られた先端を向けてるけど、それ逆じゃない?

 私も受け取っていたストローの、V字に切り取られた方を口にくわえて息をふく。


 すー、と空気だけ流れてならない。軽く噛んで、ストローが震えることを意識して何度か息を送ると、ぷっと軽くなった。


「あ、なった」


 新ちゃんが声をあげるのを無視して、今の感覚を忘れないよう練習すると、すぐに普通にならせるようになった。


「こんなもんかな」

「む、むずくない?」


 私が最初に音を出してから、新ちゃんも同じようにくわえ直して練習しだしたけど、全く音がなっていない。相変わらず、どんくさいなぁ。


「ちょっとコツつかんだら簡単だよ。頑張って。ストローを震わせるんだ」

「! ! !」


 駄目そうだ、と思っていると、マイクを通して始まるよと案内が始まった。




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