猫かぶり
とある高校の屋上の給水塔の上。
一人の少年が黄昏れていた。
少年の考えていることは、クラス一の美人である学級委員長『天満星見』のこと。
だが、少年が彼女のことを考えているのは、ただただ純粋な恋心。
朝一番に来て、教室の掃除をしてクラスの皆が気持ちよく授業にのぞめるようにしてくれている。
困った人達に手を差し伸べる。
誰にでも笑顔で接している。
本を読むと感情移入しすぎて号泣する。
考えても考えてもとめどなく溢れてくる天満星見。
少年は天満星見に好かれようと、必死に頑張った。
朝二番に来て、教室の掃除を手伝った。
困った人達に手を差し伸べているところに偶然通りかかって一緒に手を差し伸べた。
誰にでも、特に天満星見には笑顔で接した。
本を読んで感情移入して号泣した。
そして明日の朝、少年は告白することにした。
明日だけは朝一番に来て、教室の掃除を先に済ませておき、心置きなく告白することにした。
そのようなことを考えながら、屋上の給水塔の上で黄昏れていると、不意に屋上のドアが開く音がした。
とっさに少年は身を隠す。
すると屋上に天満星見が入ってきたのだ。
(まさか、僕がここにいることを知って会いに?)
そう思って、身を乗り出そうとして慌てて引っ込む。
なんと、もう一人屋上に入ってきたのだ。
その人物は、クラス一のモテ男神崎優馬。
だが、そいつの裏の顔は最低最悪のヤり捨て男。
外面と家柄を利用して数々の女子を毒牙にかけていったことを、少年は知っている。
ああ…まさか……そんな馬鹿な……。
そして、神崎は天満に告げる。
好きだと告げる。
少年より先に告げる。
天満は……頷く。
神崎の言葉を受け入れる。
少年は……。
「猫村くんおはよう!今日どうしたの?朝来なかったからどうしたのかって心配しちゃったよ」
「なんでもないですよ、天満さん」
「あれ?」
「どうかしましたか?」
「なんか……怒ってる?私のこと、いつもは名前で呼んでくれるのに」
「怒ってないですよ。それじゃ」
「あ……」
少年は天満へのみの猫かぶりをやめた。
周りからは『猫村の奴、天満さんへの態度が周りへの態度と同じになったな』くらいにしか思われておらず、特になにか摩擦があったわけではない。
三人称で書くの難しい……