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《村人Bは昇格して勇者になった》

「うぉぁだぁ!」


―ポカン―


というへなちょこな音とともに立ち上がるけむり。

さっきまでいたモンスターは、全部撃退したようだ。


「ひぃ、ひぃ、ふぅ…」

先程までの戦いで体力はかなり消費したようだった。

実際今もまるで妊婦のように悲鳴をあげている(妊婦になったことないけど…)



「水…水がほすぃ…」

カラカラに乾いた喉は既に限界だった。


さよなら俺…さよなら母さん、そして父さん…。

こうなったのは全部あいつ、気まぐれ君主のせいなんだ。


あぁ、さよなら…俺の人生。






話さねばならない。俺が今、なぜこんな惨めなことになっているのかを…


と、いうわけで時間を少し巻き戻そう。




俺の村は最寄り駅から徒歩五分の西の都。

君主一人にその他、村民多数。


この村の人達の大きな買い物と言ったら、荷馬車ぐらい。 たまに勇者たちが休む憩いの場としても有名だ。

俺はその村では、勇者でもなく『村人B』というポジションなのだ。


村人Bっていったらあれだ。初めて来た勇者とかに、可もなく不可もなくといったところの村の名物を語る役だ。


このように、この村では君主により『絶対ポジション性』という、謎の掟があるのだ。


君主により決められた、役割に沿ってこの村に来た人達を案内する。そういう掟だ。


さて、今日も俺は2人ほど、この村に来た勇者に


「この村は、平和で勇者さんたちにはいい憩いの場となるに違いねぇ!ゆっくり休んでいくといいさ!!」


と、シナリオ通りのセリフを笑顔で吐いていた。


日も沈み、きっとこれが最後の仕事だろう。


「村人Bさんですか?」

そいつは突然やってきた。


「はいはい、この村は―」

「そのセリフは結構です。私は城の者。」

遮ったのは、ガタイのいいグラサン。村では有名な役人だった。

「城の者?…なんでそんなのがこんな…」

「…君主、ケイトがお呼びです。」




「やぁやぁ、よく来たね!村人Bクン」

「は、はぁ…」

城に連れられると出迎えたのは、背も小さく王冠ブカブカの幼じょ…我らが君主、ケイト・クラウン。


こんな小さなワガママ反抗期真っ只中の幼女がこの村を仕切っているのだ。


「まぁ、硬くならずにそこに座りたまえ!」

「はい…」

あぁ、なんで俺はこんな小さな幼女に命令されて、従わなければならないんだ…畜生!屈辱だ。


「で、いきなりどうしたんです?俺、掟破りなことはしていなかった筈ですが…」


しかし、幼女と言っても君主。タメ口なんてうち首の対象だ。こんな幼女、怒らせたら何をいうかわからない。

実際城の役人が何人か逆鱗に触れて、打ち首になったらしい…。


「いやぁ、それがね…」

今回はなんだろう…俺の顔が気に入らないからうち首とか? 存在がうざいとかか?





「今日から君は、勇者だよ!」


耳を疑った。この幼女はいきなり何を言い出すか。


「な、一体何を言っておられるのです?」

俺の耳がきちんとした言葉を聞いていたのなら、いいが…


「だから!今日から君は勇者になるんだよ!!」

「チョットナニイッテルカワカラナイ。」


「つまりですね…」

そんな俺を見かねてか、役人が会話に割って入ってきた。

「今日から貴方は村人Bから昇格。 勇者となったのです。」


随分とわかりづらい説明だ。村人Bから昇格ってなんだ。


「最近ねぇ、勇者が少なくなっているのはわかる?」


「あ、それは…まぁ」


確かに最近俺の仕事が少なくなってきたのは、自分でもわかっていた。つい最近までは1日に20人は優に超えるぐらいの勇者にヘラヘラとした口調で

「この村は―」という、いつものセリフを吐き捨てていたが、最近はというと…


「確かに最近、勇者と喋る機会がなくなっているような気もします。」


「そうなのぉ、わかるでしょ~」


これまた今時のJKさながらの同意が君主さんから得られる。


「ゴホン。今各村では、勇者不足により…魔王が活性化。平和が脅かされています。」


君主のこの様子を見かね、役人Aが代弁する。


「そこで、各村ごとに勇者を選出し、旅に出させるという案が提出されました。」


なるほど、ここまで言われれば俺をここへ呼んだ意味がわかる。


「…つ、つまりそれが俺だと…?」


「そう!しょうゆこと!!」


君主の年齢不詳の発言はともかく。


「でも、俺以外にもいたでしょ? 俺、勇者なんて大役無理ですよ…」


無理無理。マジ無理。

そんなめんどくさいこと無理。


「今んとこ、村人Bクンしかいないんだよねぇ、とりあえずやってみよー!!」


「え、で、ですが!!」


「はいはいつべこべ言わずにねぇ~ほら!役人A!つれてって!!」


「御意」


「御意じゃねーよ!!ちょ、マジで!?マジで言ってる?無理だって!!」


「じゃ、バイニー♪」


「ちょ!せめて武器とか!鎧とか!!勇者らしいもの!身の安全大事だから!」


「レベルあげてから、そんなことしなさーい。君は今からレベル1の勇者だよー!」




「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


《村人Bは昇格して勇者になった》

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