第八話 ドS魔法使いと変態王
【登場人物紹介】
主人公・綾瀬雷人:トイレから転生した薬剤師
女勇者・キャロル・R・バーミリオン:巨乳
女魔法使い・ユーリン・ドーランド:ドS
女戦士・レイラ・ライトニング:まとも
女僧侶・セシル・フリード:天然
竜王:転生完了という迷惑な言葉を残し死亡したラスボス
勇者が巨乳という発見以上の情報は得られず、拘束されたまま馬車に揺られること数時間。
やっと遠くに城らしきものが見えてきた。
あの城こそ彼女たちの本拠地であり、僕の命運を握っている彼女たちの上司、王様のいる場所だ。
ラオセルにある城だからラオセル城かと思いきや、ラオセルというのはこの世界の名称であり(いわゆる"地球"と同じような意味らしい)、ここはラウールという国名のようだ。
つまりあの城はラウール城である。
一国だけかと思われていたこの世界は、実際は多数の国家に分かれていて、それぞれが独自に暮らしている。
もちろん同盟などにより貿易などの結びつきは(全てではないが)あるらしいが過去には戦争も行われていた事もあるとのこと。
今回、竜王という世界規模の脅威が発生したため、例の冒険者協会とその本部があるラウール国が主体となり世界中から選りすぐりの冒険者が集められた。
その中で数ある冒険者の頂点に位置したのが彼女たち4人らしい。
実は彼女たちって凄い人なんじゃ…。
それにしても馬車というものに人生で初めて乗ったけど、ここまでの道中は最悪だった。
魔法の縄で拘束されているうえにガタガタ揺れるので、そこらじゅうにブツかりまくり体中にアザが出来てしまった。
縄が食い込んで手足も痺れてきたので、魔法の縄を造り出した魔法使いさんに「緩めて」って言っても
「却下」
と冷たくあしらわれてしまった。
生まれて初めて殺意というものが沸きそうになったが、まあラスボスの転生先とか言われるとそう易々と信じてもらえないのだろう。もし自分なら絶対に信用しない。
道中には魔物にも幾度か襲われた。
選りすぐりの女冒険者さん達が排除してくれたが、竜王を倒してもまだまだ世の中は平和でないらしい。
今から思うとこの時点で疑問を抱くべきだったが、それに気付くのはまた後の話…。
そうこうしているうちに大きな城壁が見えてきた。
たぶん城下町全体を囲っているのだろう。左右にずーっと続いていて、かなり大きな町である事が伺える。
城壁にくっ付くように二つの塔がたっており、その間に門のようなものが見える。
この馬車はどうやらそこへ向かっているようだ。
見ると道もだいぶ舗装されていて、そういえばガタガタもかなり軽減されている。
小さな川と橋もあり、ここら一帯はかなり安全なのだろう、釣りをしている親子もいた。
その親子は我々(厳密に言うと僕以外の女冒険者4人)を見つけて何事か叫んだと思いきや、何故か一直線に城壁の門まで走って行った。
釣り道具をそのままにしてまで走り去った訳は、城下町への門をくぐった時に分かった。
門をくぐると、そこには人が溢れていた。
馬車が通れるか通れないかのところまで人々が詰めかけていて、屋根の上に上っている人もいる。
みな一様に笑顔で、こちらを祝福している。
花びらを窓から散らしている人もいる。
さながら優勝パレードのようだ。
先程の親子が、勇者が竜王を倒して戻ってきたぞー!とでも触れ回ったのだろう。
すでに国中へ知れ渡っているようだ。
しばらく人々をかき分けて進んでいくと、馬に乗り銀色の鎧に身を包んだ戦士数名がこちらへ近付いてくるのが見えた。
明らかに民衆とは違うその雰囲気は、王国兵士か傭兵そのものであった。
人々がその姿を見て自ら道を譲っていたで、前者であろう事は予想がつくが。
その先頭にたっている、見るからに厳しい顔をしている初老の男性が、目の前で馬を降りこちらを睨みつけてきた。
女パーティの中に拘束された男が1名。
これはヤバイ。
女性達に縛られていたからって訳じゃないけど、完全に油断していた。
何とかなる、って。
誤解は解けて、すぐ自由になるって。
だがこうして目の前でフラグがビンビン立っていると、自分の考えが甘かったと思い知らされる。
良くて一生、牢屋生活だろう。
何十年か後に皇太子が生まれたとかの恩赦で出してもらい、「まぶし」とかシブい顔でキメてるに違いない。
そんなの嫌だ。
これはもう何とか王様に言い訳しまくって、軟禁程度にしてもらわないと。
「ヘンタイ王がお待ちです」
そう。そのヘンタイ王へ言い訳…。
へ、変態王!?