第五話 変な予言が登場しちゃうんじゃなぁ~い?
なんとかこのヤバイ状況を脱しなくては。
奇跡的に先程の炎で死ななかったとは言え、このままでは殺されてしまう。
さすがに4人に切りつけられ炎で焼かれたらひとたまりも無い…と思う。
(さっきの事もあるのであんまり自信ないけど)
情報を整理しよう。
トイレにいたら何故かか便器に吸い込まれ、気付いたらRPGのラストバトル中みたいな場所にいた。
最初ここは夢の中と思っていたが、あのクソ魔法使いに焼かれそうになり、これは現実だと悟る。
ラストバトルではボスっぽい竜王が突然こちらを見て「お前が転生先(生まれ変わり)」と迷惑なご指名をいただく。その後、竜王先生死亡。
おかげで勇者一派に「敵じゃないのか」と烙印を押されそうな状況。
敵であると決め付けかねているのは、ヒト型の魔物が今まで存在しなかったので倒すべきか決めかねているようだ。
僕自身、竜王のように肌が鱗状になっているわけでもなく口から火を吐けるような感覚もなく、こっちに来る前から何一つ変わった感じがしない。
どうせなら超強い状態にしてから指名して欲しかったものだけど。
「あの炎を喰らって生きているなんて・・・」
恐怖から復活したのか、いやそれでもまだ顔を少し引きつらせながら、女魔法使いユーリンが首を振る。
そう、あの炎。
あの熱さ。
とても夢とは思えず、これが現実だと感じさせるのに十分だった。
生まれて初めて「死」を覚悟した。
なのに今、それを喰らって生きている。
それどころか傷一つなく痛みも感じない。
もしこれが漫画なら、僕の頭には「?」マークが無数に咲いているはずだ。
生まれ変わりって事で、何か特別なパワーが存在するのか・・・?
とは言え、あの竜を倒した豪腕の4人に殺気染みたまま囲まれていたのでは、とても生きた心地がしない。
この誤解?を解くしか抜け出す方法はないようだ。
「ちょ、ちょっと待って!」
他に良い言い訳が見つかるはずもなく、思ったことをそのまま口にする。
「だいたい君たちは何?ここで何してるの?ってかここはどこ!?」
「頭でも打ったか・・・?ここはラオセルに決まっておろう!」
だからそのラオセルってのが分からないんだって。
そう突っ込もうとした時
突然、今まで黙っていた僧侶の恰好をした女性が間に入ってくる。
「そういえば、ちょっと思い出したんだけどぉ!」
唐突に入ってきたので、みんなビックリして彼女の方を見る。
驚いている皆に構わずノンビリ続けようとしている彼女は、天然少女に違いない。
「古代の予言にこんな一説があったの。『竜の王が滅する時、異世界より絶望と希望が混ざって召喚されるんじゃなぁ~い?』って」
ドテッ
なんだその超テキトーな文章は。
思わず新喜劇みたいに転げ落ちそうになったじゃないか。
最後のほうは絶対あの女僧侶が付け足したに違いない。
「絶望と希望…つまりコイツが当てはまるというわけか」
持つ手を一切緩めず女戦士がつぶやく。
しかしまんま漫画や小説のような世界設定だな。
誰かが書いた本に間違って放り込まれたかのようだ。
未だに夢である可能性は捨てきれない。
さっき死を意識したけど、死んだのなら目覚めているはずだ。
死んでない=つまりまだ夢の中。という可能性もある。
だからと言って試しに死んでみる勇気はない。
逆にさっきのアレで死ぬ事に超ビビってしまっている。
「ひとまず、縄で縛り、王の采配を受ける事にしよう」
リーダーらしく女勇者が皆に指示する。
「すまんが、我々としてはお前が敵である可能性がある限り、自由にすることは出来んのだ」
片方の手の平を縦にして女勇者が謝ってくれた。
この世界でもゴメンする時はそんな仕草らしい。
「私は謝らんけどな」
フン!という態度を取りながら魔法の縄で縛ってくるのは女魔法使いだ。
コイツ…!
しかし今回は縛るだけで猿ぐつわまではめようとしなかった。
女勇者の指示に背いたからなのか、反省したという意味なのか分からなかったが、まあ良い方に取ることにした。