1-8
間が自分でも思わぬほど空いてしまいました。本当に申し訳ありません。とりあえず、更新です。
「ぎゃあッ!?」
「相手は一人だ……グァ!?」
「裏切り者がァァァァッ!!」
まさしく阿鼻叫喚。誰も彼もが怨嗟の声を上げながら死んでいく。その地獄の中心に居るのはルッガ。彼は体中に血を浴びながら闘い続ける。
黴臭かった教会の地下は、既に血と臓物と汚物の臭いに満ちていた。そして、その臭いは未来永劫拭う事は出来ないだろう。
「おやおや、賾虚の幹部ともあろうお方がそんなに慌てふためくとは。どうやらこの教団も長くはないようですなぁ」
悠々と嘲り笑うルッガだが、彼の体にはシロとの闘いのモノとは異なる新たな傷が増えていた。それもそのはず、ルッガがいくら強くても、”黒拳獣”と恐れられていても、相手は殺人を生業にする者ばかり。どう闘っても反撃は食らう。それでも彼は、己の負傷など全く気にも留めない。
それはナイフの一撫で、それは背後からの拳打、それは身を焼く業火。どれも普段の彼なら難なく躱す事が出来る攻撃だ。だが少しずつ、傷は重ねられ、ルッガの動きは徐々に鋭さを失っていく。
「隙ありィ!!」
リザードマンの口から伸びた舌がルッガの首を締め付ける。だが、彼はすぐさま爪で断ち、リザードマンの舌を掴んで男の身体ごと振り回した。周囲の者に鱗まみれの身体を叩きつけ、一瞬だがルッガを中心に円状の空間が出来る。
「ぐげぇ……?」
舌が遠心力で根元から千切れ、リザードマンの男は壁に鈍い音を立ててぶつかり、落ちる。周囲に控えていた者たちが飛び掛ってくるより迅く、ルッガは一番人が密集している場所を見極めて突進した。
「――破狼衝ァ!!」
屈強な男を数人ごと己が背で弾き飛ばす。犠牲者は他の者たちへぶち当たり、さらなる被害者を生んだ。
「調子に乗るなーッ!」
オークの男が体当たりをかまそうと突っ込んでくる。オークの体は強靭な筋肉と頑強な皮膚で出来ており、その体当たりは薄い石壁すら破壊する威力があるが――
「疾ッ!」
ルッガが軽く右脚を振るうだけで喉元から血を噴き出してその場に倒れてしまった。
「退け、クソどもォ!!」
人竜族の男が叫びと共に口から炎を吐き出す。石畳を舐め、苔を焼き尽くし、炎はルッガに迫るが彼は淡々と近くにいた人魚の首を掴んで自らの盾にした。
「ぎゃあああああああッ! やめてエェェェェェェ!!」
人魚は身を焦がす業火に叫び声を上げる。地下室に広がる彼女の叫び声と肉が燃える臭い。その臭いはどこか、磯の臭いがした。
グゥグゥと満足そうに喉を鳴らすルッガを、信奉者たちは恐怖を以って見る。彼らの目には、人を焼いて嬉しそうに嗤う彼が黒い悪魔にしか見えなかった。
火が弱まってくるのを見計らい、ルッガは盾を前に突き出したまま走り出す。そしてそのまま、人竜族の口によく焼けた”何か”を押し込んだ。
「グッ、ガァ……!?」
口を封じられて、炎を吹けなくなった人竜族。彼が己の口に突っ込まれたモノを取り出そうとした時には――銀閃双閃、その首が宙に舞っていた。
「化け物……!」
誰かがそう呟いた。心の底から湧き出る恐怖を体現したその囁きは、他の者にも伝播していき……。
「化け物」「化け物……!」「化け物だ」「化け物っ」「化け物!」「化け物め!」「バケモノ」「バケモノ」「バケモノ「バケモ「ノバケ「モノバケモノバケモノバケモノバケモノ!!」
合唱となった。最初、五十人はいたはずの人数も、今や半分以下。それも殆どが無残な死に方をしている。いや、死とはそもそも無残なものではあるが。
ルッガは囀る者たちを無視し、その向こうの、未だに椅子へ腰掛けている男をトロンとした目で眺める。その者は顔を隠すようにフードを被っており、頬杖を付いたままでいる。
(アタマを狙うか……)
やけに乾いた思考。ルッガはすぐさま標的を周囲の雑魚から賾虚の教祖へ変える。その考えが伝わったのか、男は口元を歪ませて微笑んだ。
「”強者を求め、仇なす”、か。この教義に最後まで忠実であろうとするのはルッガ、やはり汝だけだったようだな。汝の弟、あの者もその素質を持っていたが……」
うんざりしたように溜息を吐き、ルッガは苦笑を浮かべる
「時とは残酷なものですなぁ、”あの”教祖様もどうやらボケてしまっているようで。私の名前はルッガではなく、”黒拳獣”。……だが、まぁ良い。まぁ貴様もいま死ぬ。すぐに死ぬ」
走り出したルッガ、そこへ立ち塞がるように襲い掛かってくるのは雪鬼族の女と巨鬼族の男。女が撃ち出してきた氷柱を捌き、弾くと間髪入れずに逆袈裟に胸を切り裂いた。きらきらと舞う雪の花びら、跳躍し、仰け反り倒れる雪鬼族の死体の顔を踏み砕いて地と水平に跳ぶ。目を剝く巨鬼族の男は碌な反応は出来ずに、
「じゃあな」
宙で回転して突き出された両足が、両の首筋を穿ち、抉った。
その大きすぎる頭を支えるには、抉られた首はあまりにも細い。そこへルッガが肩へ着地した衝撃。ポキリと首が折れて地面へ落ちていく。
肩から高く跳び上がったルッガは生き残った者たちを飛び越えて、この地下室の要である石柱まで跳んだ。蝋燭の灯が届かない高さ、その闇の中でルッガは柱を蹴りつけて、未だに椅子に凭れ掛かっている男へと文字通り”墜落”してきた。
脚力と重力と自重、その三つの力によって生まれた速度は、彼の全力疾走より速い。蝋燭のゆらめきがルッガに移ったように、その姿は不確かになり、
「ガアァァァアァアアアアァァァアァッ!!」
魂を凍えさせるほどの絶叫、そして繰り出された技は――
「――狂鴉針ッ!」
右脚は空を裂き、鏑矢に似た音を立てる。全身のバネを駆使したその蹴撃は、彼をさらに加速させた。
フードの上からこめかみを狙って放たれた狂鴉針。だがその一撃は、ローブの中から突如生え出た異形の右腕に防がれた。
ルッガのふくらはぎを掴むその腕は、赤銅色の巨大な腕だった。巨鬼族のそれより大きく、石妖のそれよりも節くれだっている。爪の一つ一つも、ルッガの顔よりも大きい。椅子に座っている男の身体には余りにも不釣合いな腕が、黒い人狼を宙で掴み、ゆらゆらと弄んでいた。
「チィッ!」
捕らえられたルッガは苛立たった声を上げながら両手の爪を突き立てる。しかし、数多の肉を裂いてきたその爪も、先端がわずかにめり込む程度で、その巨大な腕に傷をつけることが出来なかった。
「痛痒も感じぬな。羽虫のように、いま一度飛んで見せよ」
ルッガの爪よりも堅い筋肉で覆われた腕は、攻撃を意にも介さず無造作にルッガを石畳に叩きつけた。
「グッ……!」
何度も床に叩きつけられるルッガは、くぐもった声を洩らしながらも両腕で身を守る。肉が潰れる鈍い音が地下に木霊し、見る見るうちに彼の体が血に染まっていく。
目から。鼻から。口から。耳から。止め処なく流れ出す血が石壁へ飛び散る頃になって、男は席から立ち上がり、ルッガを思い切り投げ飛ばした。
子供に弄ばれる人形のように、彼は入り口付近の壁まで飛んでいくと碌に受身も取らないで激突した。ずしゃり、と崩れ落ちたルッガはあらぬ方向を睨みながら身を震わせて立ち上がろうとするが――
「殺し、てや……る……」
――痙攣して立つことすら出来ず、再び床に突っ伏した。
「やれ。これなら汝らでもやれるだろう」
再び椅子に腰掛けた男は、何事も無かったかの様にローブで身を包むと、控えている者たちにそう命じた。生き残った信奉者たちは各々武器を取り、ルッガへ近づいていく。
どうにか壁に凭れるようにして立ち上がったルッガ。だが膝は震え、口からは血混じりの泡を吐き出している。端から見てもすぐには闘える身体では無い。それでも彼は口角を吊り上げて嗤った。
「こ、んな相手を目の前に……しても腰が、引けてや、がる……情け……な、いものですなぁ」
隻眼から血の涙が流れる。黒い人狼は赤くなっても闘志を隠そうともしない。彼はただ一心に、闘争を求めていた。
その言葉を侮辱と受け取ったか、彼を囲んでいた者たちから数名が躍り出た。誰も彼も己の勝利を疑わず、愉悦に満ちた表情浮かべて襲い掛かる。
「フン……」
ルッガは壁から手を離して彼らを向かえ討とうと構えた。闇に煌く刃たち。だがそれらはルッガに届く前より早く――
「――蹴牙咬!」
白い影が疾走して刃を持ち主ごと叩き落した。音も無く着地した影は、ルッガの前に立ち塞がるとシャツの胸元を緩めてはだけさせ、息をつく。
「……執事が何しに来た」
天を衝く白毛、質の良いシャツとスラックス、意志の強さを体現したかのような双眸。そこに居たのは――シロだった。彼は、ルッガに睨みつけられて呆れたように零した。
「まったく、助けてもらったお礼も無しですか。残念ながら今の私は執事ではなく、”白狼拳”のルッゾとして此処に立っています。お間違いなきよう」
“白狼拳”、その言葉を聞いた信奉者たちは口々にその名を繰り返し囁く。次第にその声は合唱のように大きくなり、ついには驚愕と怒気が混ざり合ったモノとなって二人を包む。だがそれをルッガは嘲笑し、”ルッゾ”は肩を竦めて受け流した。
「そ、そうだ! 俺はアイツを見た事があるぞっ! アイツはルッゾ、”黒拳獣”の弟――”白狼拳”のルッゾだ!!」
「兄弟揃って造反とは……! 賾虚の庇護の下、育ててもらった恩を忘れるなど何という厚顔無恥っ! 殺すっ、殺してやる……!」
沸き立つ罵詈雑言と呪詛の声も何処吹く風。ルッゾは「大丈夫ですか?」と兄に手を差し出すが、それをルッガは払いのけて二本の足で事も無げに立つ。
「馬鹿め。フン、弟か……馬鹿め。ならば馬鹿は馬鹿なりに役に立って見せろ。……ったく、馬鹿な弟を持つと苦労する」
「文句しか言えない怪我人はそこで大人しく毛でも舐めていてください。すぐにこの喧しい人たちを静かにしてきますので」
「おい、待て。その怪我人にボコボコにされて涙まで流して土下座したのは何処のどいつだ? しかもお前、俺に借金してただろ。いま返せ、もしくは殴らせろ」
「何ですかこんな時に!? そもそもあのお金は私の報酬をはねたモノじゃないですかっ。何処まで性根が腐ってるんだこの人は!」
「うるさい、この馬鹿。兄は弟とかいう出涸らしよりも優れていて強いから多めに貰うのは当然の権利だ。馬鹿だとそんなことも分からないのかこの馬鹿」
「いい加減にしてください! こんな時に――来ますよッ!!」
二人が醜く罵り合っている間に体勢を整えた信奉者は、四方八方から彼らに襲い掛かってきた。
「死ねエエエエエ! 裏切り者オオオオオオオッ!!」
棍棒を振り上げて突進してくるミノタウルス。背後にはサラマンダーが鱗を輝かせながら火の矢を掌で練り上げている。
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
逆側から走り寄るはがしゃどくろの男。骨で組み立てられた体から伸びる六本の腕、その全てに刃が握られている。そして、その彼の頭上では鋭利な爪を煌かせている鳥人族の女が羽ばたいていた。
黒と白。モノクロの人狼二人は状況を打破するために背を合わせた。
(当面の危機は四。さらに――)
ルッゾは思考し、
(――後ろから六、か)
ルッガは血を滾らせた。こうして闘うのはいつ以来だったか、普段とは違う歓びを感じながら。
「やれやれ、だな」
ルッガのぼやきを掻き消すミノタウルスの地響き。彼の隻眼の向く先は己の頭蓋を砕かんとする棍棒。その軌跡をただじっと見ている。
「ブオォォォォォォッ!!」
ミノタウルスが力任せに棍棒を振り下ろす。同時、サラマンダーが火矢を吹き掛けた。火矢は周囲の大気を歪め、光の線を残して飛んでいく。
ルッガはその状況で敢えて前に前進した。上背のあるミノタウルスを見下すように、前へと。あまりに大雑把過ぎるその歩みに、信奉者の二人も目を見張る。脳天と胸に迫る脅威に対してルッガの取った行動は―――
「ひゃひゃひゃーっ!!」
どこからそのような声が出るのか、がしゃどくろは甲高い笑い声を上げながらやたらめったらに六本の刃物を振り回した。それを全て捌きに掛かるルッゾ。
骨だけの体とは思えない剣速。余分な物がついていない為か、その剣術の軌道も出鱈目なもので、その速さと相まって吹き荒ぶ嵐のように激しい。
だがルッゾは冷静に手の平で、手の甲で。肉が薄く斬りとられても一本、一本と捌く。少しずつだが、がしゃどくろの体勢が徐々に崩れていく。
(これは貧乏くじでしたかね……っ!)
白いシャツが赤く染まり、防戦一方となるルッゾへ鳥人族の女が顔に狙いをつけて爪を振り下ろす。ルッゾの瞳に写った爪はそのまま―――
「――ルッゾォ、避けろッ!」
叫びながら身を翻すルッガ。脇腹を掠めて火矢は後ろへ遠ざかっていく。右足を軸に身体を振り回す事でミノタウルスの渾身の一撃をも回避。棍棒が叩きつけられた石畳は音をたてて砕け散った。舞う破片を背中ではじき、加速させた身体をそのままミノタウルスの胸板へ叩き込む。その技の名は、
「破狼衝ッ!!」
圧縮された空気が爆発し、空間を歪ませる。ルッガの背から捻じ込まれた震動は、重戦車のような身体を持つミノタウルスを楽々に破壊し、吹き飛ばした。
「シャアアアアアアアッ!!」
ミノタウルスの後ろに密着するように隠れていたサラマンダーが、ルッガの一撃に巻き込まれまいと”ただの肉塊”となったミノタウルスを飛び越えた。白熱する鱗、両手には再び火矢が練り上げられていたが――
「――残念だったな」
それを見越して飛び出していたルッガが既に、大口を開いてサラマンダーへ肉薄していた。涎が滴る牙、薄桃色の舌が暴れ狂って口から垂れ出ている。まさか、と恐怖したサラマンダー。そしてそれは、彼が想像したどおりの結果となった。
ゾリ、ともガジュ、とも聞こえる音。それは何処か乾いた果実を噛み締めた音に似ていた。何かを咀嚼するルッガの口元から赤い液体が零れ落ちていく。その滴が濡らすのは石畳ではなく、顔半分を失くしたサラマンダーであった。
彼は自らの顔を両手で覆ってのた打ち回っており、その光景をルッガはつまらなそうに見下していた。抉れた顔から覗くのは赤と白。だが、その白い骨と脂肪もすぐ溢れる血で赤に変わる。ルッガは最後の最後までつまらなそうに。思い出したように、ぞんざいに、首を踏みつけて彼の息の根を絶った。
「――そこです!」
ルッゾは肩口を狙って振り下ろされた刃を、相手の手ごと蹴り上げる。度重なる捌きによって崩された体勢から繰り出された稚拙な斬撃。それはいとも簡単に方向を変えられ、そのまま鳥人族の腹を貫いた。
「……あ」
間抜けな声を洩らすがしゃどくろ。鳥人族の女は悲鳴を上げながら翼を狂ったように羽ばたかせるが、それはいたずらに彼女の傷口を広げるのみだった。
追撃を加えようとしたルッゾ、だが背中越しに聞こえる怒声に反射的に身を屈めた。言葉の意味を理解したからではなく、危険を察知したからためである。途端、彼の首筋を焼く赤い一筋の炎が飛んでいき――がしゃどくろの落ち窪み、暗い穴と成り下がった右目に突き刺さった。
「うひ、うひひィ、ひひひひひひィ!」
目から広がった炎は全身を包み、黄ばんだ骨を見る見るうちに黒く煤けさせていく。がしゃどくろは笑い声にも似た悲鳴を叫び、刃物を手放した六本の腕を滅茶苦茶に振り回す。その炎は鳥人族の女にも燃え移り、二人はものの数秒で灰燼に帰した。
「……ったく、肉まで不味いとなると何の為に今まで生きてきたのか分からんな、ヤツは」
赤黒い肉片を吐き捨て、ルッガは炭化した骨を踏み潰してルッゾの横に立つ。そんな様子の兄を見て、ルッゾはやれやれと首を横に振った。
「そんなものを食べていると病気になりますよ、兄さん。ただでさえ性格が悪いのですから身体くらいは健康でいてください」
「これはこれは。温室育ちのルッゾくんには珍しい光景でしたかなぁ? さぞや素晴らしい食事にありつけていたようで」
「えぇ、生活に何不自由ありませんでした。どこかの誰かさんに食事を奪われる心配も無ければ食事中に襲われることも無かったので」
「馬鹿が、あの訓練があったからこそお前は生き残れたんだろうが。感謝して敬え、愚弟め」
四人を瞬く間に殺したのにも係わらず、二人は下らない会話を淡々と続ける。一人は肉を喰らい、もう一人もその様子に何の拒否反応も見せない。その異常さに、続いていた信奉者たちは立ち止まってしまった。
彼らも暴力を好む者たちだ。だが、あのように振舞えない。誰か殺したのなら気分が酷く乱れる。高揚することもあれば消沈する事もある。間違っても人肉を喰らったりはしない。だからこそ、彼らの異常さが目に付く。まるで呼吸するように誰かを殺す、その姿は彼ら教徒が良く知っているある人物に瓜二つだった。それを意識してしまうと、足が竦んで動けなくなるのだ。
「――ん? おやおや、悪逆非道の賾虚、その信奉者が怯えるだなんて滑稽ですなぁ。殺すのも殺されるのも愉快で仕方ないはずじゃなかったのか、うん?」
ルッガの嘲りに反論する者もいない。この場にいる誰もが二人の雰囲気に飲まれていた。ただただ彼らは、身を寄せ合い心の奥から滲む恐怖に抗う他なかった。
「あ、言っておきますけどそんな顔されても許しませんから。私の大事な人、二人も傷付けておいて生きていく事など私は許可しません。だって、それぐらいの覚悟していたのでしょう? ならば死んでください。速やかに死んでください」
モノクロの兄弟が見せ付けるように爪を煌かせる。その冷たい刃に映ったのは、恐怖に引き攣る醜い無数の顔だった。
それなりに書き溜めてあるので、次回の更新は土曜か日曜になる予定です。