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人狼執事  作者: 空暮
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1-2

 大体、六千文字~八千文字程度の割合で分割していきます。



 「お茶を汲んで」

 「はい、ただいま」

 「この花はそっちに植えて」

 「はい、ただいま」

 「模様替えしたいからこのタンス動かして」

 「はい、ただいま」

 慌しく過ぎていく昼下がり、私の心はまどろみに揺蕩うがごとく穏やかだった。

 名も記憶も帰る場所も失くしていた私は、こんな時間がいつまでも続けばいいと思っていた。それは きっと、この十年間の殆どがお嬢様と供にあり、その十年間が今の私を形作ったからだろう。多分、私は此処以外では生きていくことなど最早出来ないのだ。

 日に日に、一日を占める夜の時間が長くなりつつある。既に太陽は落ち、空には暗闇の帳が下りている。つまりは――お嬢様の時間になった、ということだ。

 「今日もトマトがある……」

 給仕が準備した食事に愚痴を零すお嬢様は、箸で皿の上のトマトを弄んでいる。それ以外は全て食べ終わったらしいのだが、どうしても生のトマトが食べられないようだ。

 好き嫌いを言わないお嬢様が、唯一苦手とするのがこの”生のトマト”だ。加熱、加工さえしていれば難なく食べられるのだが……。

 「……………………」

 己の主が意思を表示するまでは、従者は動くべきではない。お嬢様は今、「頑張って食べよう」、「諦めよう……」という二つの選択の狭間で苦しんでいる。その選択をどちらかへ傾けるような発言は慎むべきだ。だが、だがしかし!

 (代われるものなら代わって差し上げたい……!)

 私なら一口、刹那の時間も要らずに飲み込める。だがお嬢様はこの程度のことでは挫けない立派な方であると私は知っているし、この苦難を乗り越えてこそ精神の琢磨へと繋がるのではないだろうか! 頑張れ、頑張れお嬢様! シロは直立不動で、魂で応援させていただきます!!

 「……うぅ、それっ!」

 私の心の叫びが届いたのか、意を決して口の中へトマトを放り込むお嬢様。目を閉じ、まるで石を噛み砕くかのように震えながら咀嚼されている。

 その間、私はハラハラと胸を弾ませてその光景を見守っていた。長い長い、沈黙。その静寂は、お嬢様の喉元から響く嚥下の音で破られた。

 「……食べられたよ、へへっ」

 後ろに控える私に笑顔を見せてくださり、思わず私まで何かをやり遂げたような達成感を噛み締めていた。

 「流石です、お嬢様。シロは信じていましたよ」

 「ふふ、調子良いんだから」

 「ほ、本当ですっ! 私は必死に、心の中ではありますが全力で応援していました!」

 「冗談だよ、シロは私の味方だもんね?」

 「…………ありがたいお言葉です」

 慌てふためく私が見たかったのだろうと気付いたのは、私が頭を垂れた後だった。

 夜のお嬢様は昼間とは違い、何処か悪戯好きで妖しい。きっとそれは、身体に流れる吸血鬼の血がそうさせるのだろう。もし今のお嬢様を同級生たちが見たら、同一人物だとは思えないだろう。

 昼間は必須の眼鏡も、夜に限っては必要ない。心なしか波打つ髪もざわめき、目が輝いているようにも見える。何よりも心を打つのがその肌の美しさだ。月光が染み込み、さらに白く輝く。

 「食べ終わったし、散歩に付き合ってもらおうかな?」

 「仰せのままに」

 椅子を引き、給仕に片づけを任せて外へ向かう。今夜は月が綺麗だ。きっとお嬢様もお喜びになる。



 空に浮かぶ月と星。夜空は黒というよりも藍に近く、それを穿つ月はとにかく白い。白磁にも似た滑らかさは光にも伝播して、お嬢様へと降り注ぐ。

 灯籠のぼんやりとした明かりは、夜露に濡れる石畳に反射して何処までも続く光の道を作る。そこを歩く月下の妖精は、ふわりと地を進んでいく。

 「お父様とお母様、元気にしてるかなぁ……」

 白絹の服は月光を浴びて、闇夜を白く切り取る。

 「あの方々なら間違いなく、です。きっと今も、帝都でお嬢様と同じようにそう願っているはずですよ」

 お嬢様のご両親は、仕事の都合で帝都に在留されている。あの二人はきな臭い帝都にお嬢様を置いておきたくないという理由で、お嬢様をこの”浮原”へ預けている。本来なら一人娘を置いていきたくはないだろう。しかし、あの方々は、

 『シロが居るならまぁ、大丈夫だろう。桜のことをよろしく頼んだよ』

 『あの子は溜め込むほうだから、もしもの時は受け止めてあげてね?』

 と、私に全幅の信頼を置いてくださった。私はただそれに応えるだけだ。

 「家族というのは心の底で繋がっているものですから」

 その家族を知らない私が諭すのも憚れたが、間違ってはいない筈だ。私がこの十年間で確かに学んだことなのだから。

 「――そうだね。でも、シロも家族だからね? メイもミユもキヌも、みんな家族だよ」

 きっと、お嬢さんは本心でそう仰ってくださっているのだろう。私の発言の真意がどうであったとしても、その言葉はありがたく頂いておくべきだ。

「……もったいないお言葉です」

 頭を下げる。私にはただ、頭を下げることしか出来ないのだ。

 お嬢様は先に進む、月明かり差す庭前から、木々生い茂る裏庭へと。

 砂利が踏みしだかれ、石と石が擦れ合う心地良い音が聞こえる。静かな夜に響くその音は、何処かさざ波のようだった。

 「涼しくて気持ち良いね」

 「夜風に当てられ風邪など――」

 「――はいはい、”引かないように”でしょ?」

 「その通りでございます」

 「シロって心配性だよね?」

 「いえ、職業病かと」

 「私が主人だから?」

 「貴女が主人だからこそです」

 「私が主人でよかった?」

 「貴女だけが私の主人です」

 「本当に?」

 「嘘はつけません」

 淡々と繋がれる会話は編み込まれる模様のように。それは私とお嬢様の間に綿々と紡がれていく。

 月の光は重なり合った枝葉に遮られ、細い光の柱が木々たちの間にひしめき合っていた。闇と光が同居するその場所を行くお嬢様を撫でる光の筋。お嬢様の肩を照らしていた光は、私の顔半分を次に照らした。

 「嘘じゃないなら、誓って。いま、ここで。これからもずっと一緒に居るって」

 立ち止まり、振り返って微笑むお嬢様に触れようとする光は一切無く、闇に。同時に立ち止まった私の頭上には、ぽっかりと開いた木々から覗くから月が覗き、光に。

 「……それは」

 どう、答えるべきなのだろうか。私の本心は「死ぬまで仕えていたい」だが、もしもの時は命を投げ出す覚悟もしているし、己の存在がお嬢様に悪影響であるならば姿を消す覚悟もしている。もちろん、「消えて」と言われても姿を消すだろう。

 嘘はつきたくない。それが一番だ。ならば、なればこそ。

 「――”別れるべきその時”まで、供に在りましょう」

 私の言葉を聞き、納得できなかったのか、

 「シロのいくじなし」

 頬を膨らませて、そっぽを向かれてしまった。



 夜の散歩が終わり、お嬢様は部屋に戻られた。後は寝るだけ。つまり、私の仕事はこの時をもって終了だ。

 そうは言っても、”お嬢様に関わる”仕事が終わったに過ぎない。私には「屋敷の見回り」、「使用人との話し合い」、「明日の準備」などなど、すべきことはまだ残っている。

 体は疲れていない。人狼の肉体は三日三晩走り続けたとしても、睡眠を必要としないだろう。私はつくづく、人狼に生まれたことを感謝した。

 「お疲れ様、お嬢様は部屋?」

 「あぁ、お休みになられた。明日は学校も休みだ。ゆっくりと寝かせて差し上げよう」

 話しかけてきたスキュラはキヌ。この屋敷に仕えるメイドの中でも最古参、私がやって来たその日には既にお嬢様に仕えていたので、果たしてどれほどこのスニーラーク家に仕えているのか、私にも分からない。言わば、この屋敷の「お母さん」のようなものだろう。

 勿論私とも、もう十年の旧知の仲だ。実を言うと私も最初のころは随分と世話になっており、今でも頭が上がらない。

 彼女は器用に、無数に生えている触手でシーツや夜食を担いでいる。恐らく、あの握り飯は……。

 「ご名答! これはお前のさ、シロ」

 私の目線がそちらに向かっていたのに気付いていたようだ。彼女が手渡してくれたおにぎりを受け取り、休憩室へ向かおうとする。

 「人狼は羨ましいねぇ、あたしゃもう眠いよ」

 「お前はもう寝ろ。自己管理も仕事のうちだ」

 キヌは欠伸をしながら私について来た。

 「はは、アンタに言われちゃおしまいだ。なに、あたしも休憩室で茶でも飲もうかなぁと思って」

 「いや、だから早く休めと」

 「何だい何だい、あたしが居たら邪魔なのかい? あたしみたいな婆さんがいたらアンタはゆっくりと休めないと? 折角あんたの為に夜食を持ってきたというのに、とっとと眠れと? 年寄りは早く寝て早く起きろと?」

 ……多分、キヌは軽口を叩くために私に夜食を持ってきたのだろう。この調子では休憩室でも喋り続けるに違いない。彼女の言う通り、これではゆっくり休めない。しかも、彼女はそれを自覚して話し続けるから尚、タチが悪い。

 「お前が眠いと言ったんだろうっ。ついて来るなら黙ってついて来てくれ」

 「あたしゃ口を動かさないと足が勝手に動いちまうのさ。あたしがくっちゃべるのと、足が屋敷を壊すの、どっちが良いかって言ったらあたしが無駄口叩くほうだろ? 悪いがシロには我慢してもらうしかないのさ」

 これは本当だ。何度か私も彼女の悪癖の被害に巻き込まれたことがあるが、あれは酷かった。あの時のキヌは、私を槌にして何度も何度も壁に穴を穿ったのだ。

 「ま、アンタは他の子に比べたら頑丈だし我慢強いし、諦めることさ。それに一人で食べるよりもあたしが一緒のほうが美味しいだろ? キヌお婆ちゃんの粋な計らいさ」

 「二人一緒で美味しいご飯の代償に、いつ酷い目に遭うか分からない、か。一人淋しいけど安全のほうが魅力的に見えるのはどうしてだろうな?」

 私の皮肉に、彼女は笑みを浮かべておどけた。

 「そりゃアンタ、恵まれてるからさ」



 その後、どうにか彼女の餌食にはならずに休憩室に辿り着いた。キヌはてきぱきと茶を作ると私の前に置き、椅子に腰掛けた。

 「もう夜は涼しいねぇ。この前まで暑い暑いと思っていたらもうこれさ。冬物の準備にはまだ早いけど、考えておかないと後々面倒だし、ねぇ?」

 歩いていても立っていても座っていても、彼女は話を続ける。……確かに、静かな夜に一人で食べるよりは気が紛れるかも知れない。

 「突然寒くなられると困るから、毛布は準備しておくべきだな。それに厚めの上着―――ぐぇ!? 何だコレは……?」

 齧った握り飯から、強烈な甘みが滲み出した。ヌチャ……という不愉快な感覚は口内にへばりつき、いつまでも米と不協和音を奏で続ける。

 「ん? あぁソレ。トマトを砂糖で漬けたモノ。お嬢様が食べられるように作ってみた。トマトの酸味と砂糖の甘さを……ってどうしたのさ?」

 とぼけた顔をして私の顔を覗き込んでくるキヌには悪気は無いのだろう。あるのは、ただ純粋な悪戯心だろう。

 強烈な甘さと、トマトの青臭さ。舌の上でとろけたトマトの果肉が、塩で味付けされた米と混ざり合い、非常に不味い。

 「不味い……」

 思ったことをそのまま口に出すと、キヌはげらげら笑い始めた。

 「悪い悪い! ほら、こっちが本当の夜食さ。何か昼間から思いつめた顔してたから思わず、ね。――で、何があったい? お姉さんに話してみたら?」

 茶で口内の残留物を流し込んでいると、普通の握り飯を手渡し、そのまま覗き込むように真面目な顔で私を見つめてきた。

 「……実はお嬢様が学校で『ネクラ』と馬鹿にされたらしい。出来ることならその狼藉者を殴り殺してやりたいっ」 

 私が心の内を曝け出せるのは、お嬢様の他にはキヌしか居ない。共有した時間とは、その長さと比例して共に過ごした仲間に心を許させるものらしい。

 「あー……そりゃ、大変だ。もうこれで何度目だい? あんまり酷いなら誰かが”やって”くるしかないのかねぇ」

 「お嬢様は私たちの事を『家族』と言ってくださった。その私が、だ! 何もしてあげることが出来ない! 『家族』であるのに、その『家族』を助けることが出来ない! ならば私は何だ!? 何なんだッ!?」

 普段、お嬢様には決して見せることはない烈しい感情。一度湧き上がった怒りは、あっという間に私の心を染めていく。不快な感情。だがしかし、心の何処かでこの激情を歓ぶもう一人の自分がいた。

 「落ち着きなっ、この馬鹿。アンタが怒ってどうすんのさ。本当に怒りたいのはお嬢様さ。お嬢様が今のアンタみたいに吼えたと? 今のアンタみたいに怒り狂ったと? そうじゃないならアンタは抑えな。アンタが怒っていいのは、お嬢様が怒った時だけさ」

 「主が出来ないことを代わりに行うのも従者の仕事だ! お嬢様が泣けないなら私が泣き、殴れないなら私が殴る! 違うか、キヌ!?」

 「その選択の決定権はお嬢様にあり、お嬢様はそれを望んでいないんじゃないのかい? アンタはただ、自分の怒りを「お嬢様の為」と言い繕って発散したいだけさ。”従者”ってのはあくまで補佐で補助なんだよ! 主が越えるべき壁をアンタが壊してどうすんのさッ」

 立ち上がった私に、キヌも立ち上がって睨みつけてくる。

 「…………すまなかった。どうかしてた。確かに、その通りだ」

 「判れば良いのさ。何だい、そんなに気に食わなかったのかい?」

 席に着き、お茶を一口。喉を潤し、

 「違う、私は心配なだけだ。それと、無力な自分が許せない。私は肝心なところでは全く力になれない。私は――欠けているから」

 溜息が漏れた。

 「そんな事気にしなくても……いや、コレはアンタの問題だったね。ソレについて私は何も言えないけど、いつかなるようになるさ。でもアンタは十年間もこの家に仕えていたんだ、それだけは忘れちゃダメさ」

 ありがたい言葉だ、私は主だけではなく仲間にも恵まれている。感極まって、声が震えそうになるのをぐっと堪えて握り飯を口内に押し込んだ。その握り飯は何故かいつもよりも塩辛く感じた。



 キヌと別れ、雑事を済ませると自室へ向かった。全く眠くないが、万全の体調でいるためには休んでおくべきだ。そう自分に言い聞かせると、普段よりはラフな服に着替えてベッドに倒れこんだ。

 カーテンを閉め切った狭い部屋。月明かりも差し込まない真っ暗な空間で、私はぼんやりと天井を見つける。吸い込まれそうな闇は、気付かぬうちに己の心を映し出す。

 思い返せば長くも短い十年間だった。瞳を閉じ、私の『始まりの時』を思い返す。

 私の最初の記憶――それは私自身も曖昧なのだが、どうやら帝都の汚らしい路地裏に丸まっていたらしい。埃と汚物と血で汚れた毛は固まり、膿を垂れ流す傷口には襤褸がこびり付き。そんな死にかけの人狼を見つけてくれたのはまだ話す言葉もたどたどしい、幼きお嬢様だった。

 その時のことは、朧げではあるが覚えている。横たわり、霞む視界の向こう、騒がしい大通りが見えた。そこを行く人々は誰も彼も輝いて見え、当時の私はその全ての人々を呪っていた。

 ――何故俺は。

 そんな疑問だけが頭の中を占める。もうマトモに働かない頭は記憶を失ったからか、血を失いすぎたからか。とにかく何もかもが憎く、哀しかった。

 何故自分がこんな目に遭っているのか、自分が何処から来たのか。ただ、分かる事はこれから自分が死ぬに違いないという事だけだった。

 憎くて憎くて、目の前にやって来た少女すら憎かった。綺麗な服を着て、優しそうな両親がいて、懐には大切そうにぬいぐるみを抱えている。そんな満ち足りた少女が憎かった。

 ――どうせ何の役にも立たない金を置いていき、自らの良心を満たすだけだろう。お前らはそんなに満ち足りていても、まだ欲しがるのか! この俺を利用して、心まで満たそうというのか! 

 溢れんばかりの憎悪が身体を満たす。濁った瞳で、残された力をあらん限り振り絞って睨みつけ、カラカラに乾いた唇を開いて牙を見せつけた。

 それを怖がったのか、ぬいぐるみをぽとりと地に落とす少女。

 ――ざまァ見ろ。

 しかしその少女は、畏怖から誤ってぬいぐるみを落とした訳ではなかった。広げられた小さな手。彼女は薄汚い犬を抱きしめるために大切なぬいぐるみを。

 ――よく分からねェ……。

 抱きしめられ、少女の暖かさに包まれたまま……気を失った。

 これが私の最初の記憶、お嬢様との出会いだった。それから話はトントン拍子に進んでいった。その時に私は借りてきた犬、もとい猫の如く、為すがまま為されるがままだった。

 傷は治療され、綺麗な服は与えられ、寝床も食事も用意される。何不自由の無い生活。そして私に寄り添うお嬢様。あれはそう、ぬいぐるみ。生きたぬいぐるみのように私を扱っていたように思える。

 「シロ! 白いからシロ!」

 洗われて、元の色を取り戻した毛を見たお嬢様はそう、私を名付けた。何ともまぁ安直な名前ではあるが、その名前すら持っていなかった私は、何の抵抗感も感じなかった。

 「シロ! シロ!」

 首に抱きつかれ、寝るときも抱き締められたまま。食べ物を口に押し付けられ、そして押し込まれる。最初は抵抗していた私も、次第に流されていった。

 今とまったく容姿が変わらないキヌは、クリームでベタベタにされた私を見て、

 「ま、諦める事だね。果たして運が良かったのか悪かったのか……ねぇ?」

 笑い、眺めていた。

 時は流れ、傷が塞がった私は機を見て逃げ出そうと思っていた。行き先も無ければ、記憶も無い。それでも此処に居てはいけないような気がしたからだ。此処は自分の居場所ではない、自分はもっと薄汚い、反吐の出るような場所に居るべきだと。そしてあの夜が訪れた。今の自分の人生を決定付けたあの夜が。



 

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