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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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婚約破棄された公爵令嬢は、全てを奪われたその日から復讐を誓い――やがて隣国の皇太子に溺愛されながら、愚かな者たちを地獄へ突き落とす

作者: 結城斎太郎
掲載日:2026/03/25

「――リシェル・フォン・アルディナ公爵令嬢。お前との婚約を、ここに破棄する!」

煌びやかな舞踏会の中央で、王太子アルベルトは高らかに宣言した。

場は一瞬にして凍りつく。

「……理由を、お聞きしても?」

リシェルは静かに問い返した。

声は震えていない。けれど、その胸の内は嵐だった。

「理由など明白だ。お前はこの聖女ミレイユに嫌がらせを繰り返していた!身分を笠に着た卑劣な行いだ!」

アルベルトの隣には、涙ぐむ少女がいた。

柔らかな栗色の髪、か弱げな瞳。いかにも“守ってあげたくなる存在”。

――滑稽だわ。

リシェルは内心で冷ややかに笑った。

「証拠は?」

「証言がある!それに、彼女の持ち物からお前の家紋入りの品が見つかった!」

「それは……」

仕組まれたものだ、と言おうとして――やめた。

すでに、この場の空気は決まっている。

貴族たちはざわめき、誰もがミレイユに同情し、リシェルを疑っている。

そして何より。

(お父様も……お母様も……)

視線を向けた先で、公爵夫妻は目を逸らした。

――切り捨てられた。

「……承知いたしました」

リシェルはゆっくりと頭を下げた。

その瞬間、会場は歓声に包まれた。

「なんて殊勝なのかしら」

「やっぱり罪を認めたのね」

嘲笑が降り注ぐ。

だが彼女は、微笑んだ。

「最後に一つだけ。殿下に申し上げます」

「なんだ」

「どうか、その選択を後悔なさらぬよう」

アルベルトは鼻で笑った。

「するはずがない」

その言葉を、リシェルは忘れなかった。

――絶対に。

数日後。

リシェルは全てを奪われた。

爵位は剥奪、財産も没収。

さらに冤罪により、国外追放。

(完璧ね……本当に)

彼女は馬車の中で、淡々と考えていた。

怒りはある。悔しさもある。

だがそれ以上に。

(ここまで徹底されると、むしろ清々しいわ)

――ならば、やることは一つ。

復讐。

そのために必要なのは、力と地位。

「……どこへ行くか、決めております」

御者にそう告げる。

「隣国、ヴァルディアへ」

国境を越えたその日。

リシェルは倒れた。

飢えと疲労。極限状態だった。

意識が遠のく中、誰かの声が聞こえる。

「――まだ息がある」

低く、落ち着いた声。

「連れて帰る」

目を覚ましたとき、彼女は豪奢な部屋にいた。

「目が覚めたか」

振り向けば、一人の青年。

銀の髪に鋭い瞳。圧倒的な存在感。

「ここは……」

「ヴァルディア皇宮だ。俺は皇太子レオン」

リシェルは目を見開いた。

(皇太子……!?)

「なぜ私を……」

「路上で倒れていた。見捨てる理由がない」

簡潔な答え。

だが、その視線は鋭く彼女を見抜いていた。

「ただの貴族令嬢ではないな」

「……」

「その目だ。全てを失った者の目をしている」

沈黙。

やがて、リシェルは口を開いた。

「……復讐したいのです」

レオンは、わずかに口角を上げた。

「いいな」

「……え?」

「その顔、気に入った。使える」

彼は近づき、手を差し出した。

「力を貸してやる。その代わり――俺のために働け」

差し出された手。

それは、救いであり――契約だった。

リシェルは迷わなかった。

「……お受けいたします」

その手を、強く握った。

(ここから、全てを取り戻す)

そして――

(あの愚か者たちを、地獄へ)

彼女の復讐が、静かに始まった。



ーーーー



「見違えたな」

レオンは書類から顔を上げた。

その視線の先には、リシェル。

もはや追放された令嬢ではない。

ヴァルディアで頭角を現し、外交・財政の要として活躍する存在。

「当然です。無様なままでは復讐もできませんから」

「いい顔だ」

レオンは満足げに笑った。

「で、準備は?」

「整っております」

リシェルの瞳が、冷たく光る。

「王国は今、財政難。そこへ我々が“支援”を持ちかける」

「条件付き、だな」

「ええ。王太子の失脚を条件に」

レオンは楽しげに笑った。

「徹底してるな」

「まだ序章です」

数週間後。

王国では大混乱が起きていた。

支援と引き換えに、アルベルトは地位を剥奪。

さらに――

「そ、そんな……!」

ミレイユは震えていた。

彼女の“奇跡”が、全て偽物だと暴かれたのだ。

「貴様は詐欺師だ!」

「違う、違うの……!」

だが証拠は揃っている。

彼女はただの詐欺師だった。

そして、最後の舞台。

再び開かれた舞踏会。

そこに現れたのは――

「な……!」

アルベルトは凍りついた。

豪奢なドレスを纏い、堂々と立つリシェル。

その隣には、レオン。

「紹介しよう。俺の婚約者だ」

会場がどよめく。

「ば、馬鹿な……!お前は追放されたはずだ!」

リシェルは微笑んだ。

かつてと同じ、優雅な笑みで。

「ええ。ですが――戻って参りましたわ」

一歩、近づく。

「すべてを終わらせるために」

アルベルトは後ずさる。

「お前が……仕組んだのか……?」

「いいえ」

リシェルは首を振る。

「あなたが選んだ結果です」

その言葉に、彼は崩れ落ちた。

その後。

アルベルトは廃嫡、幽閉。

ミレイユは処刑。

そして――

「終わりましたね」

夜のバルコニーで、リシェルは呟いた。

「ああ」

レオンは隣に立つ。

「満足か?」

少しの沈黙。

「……ええ」

リシェルは頷いた。

「ですが」

「なんだ」

「これからは、復讐ではなく……別のもののために生きたい」

レオンは静かに笑った。

「なら、その相手は俺でいいな?」

「……はい」

リシェルは、初めて穏やかに微笑んだ。

かつて全てを奪われた令嬢は、

今や隣国の皇太子に愛される存在となり、

そして――

自らの手で、運命を掴み取ったのだった。

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