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成り上がり令嬢暴走日記!  作者: 笹乃笹世
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7

「――あっ⁉︎ 教養科ってことはなにかしらの手違いが起きれば同じクラスに……⁉︎」


 夜空を眺めていたリアーヌは、その言葉と共にガバリッと飛び起きる。

 ……が、すぐに肩を落として再びベッドの上にゴロリと横たわった。


「さすがに無いかー……私、なんで合格したのかちょっと疑問なくらいにはマナーの試験、ダメダメだった自覚あるし……――座学との合計なのかなぁ……? それともそれが貴族クオリティ……? でもうち子爵だし――じゃあやっぱりSクラス入りは難しいか……」


 レーシェンド学院は、通う生徒の年齢に応じて、中等部、高等部、研究院という3つの学部に別れていて、そこからさらに、教養学科、一般学科、育成学科、専門学科という4つの学科に分かれていた。

 リアーヌとしては、日本でのゲームユーザー間で呼ばれていた、貴族科、平民科、騎士科、ギフト科という通称のほうが馴染み深いが……試験会場でもチラホラと耳にした呼び名なので、この世界でも呼ばれているのかもしれない。

 そしてどの学科も成績ごとにクラス分けがされている。

 一番上のクラスがS、そこからABC……となっていた。


 学科の試験に合格すれば元平民のリアーヌが教養学科に合格出来たように、血筋や育ちで落とされることは無い――というのが一般論だ。

 ――ただし、暗黙の了解というものはどこの世界にも存在するもので、王族が教養学科の試験に落ちたという事例はこれまで一度もなく、婚外子ーーいわゆる愛人の子供が教養学科の試験に落ちる確率は非常に高くなっていた。

 ……一般学科を設立する際も、建前としては、平民であろうとも優秀な者たちには、等しく平等に学ぶ機会を――ということだったが、実際のところは一般学科に所属したほとんどの生徒が、教養学科の試験に落ちた者たちばかりで、貴族階級にある者が一般科の試験に落ちたという話も聞いたことがなかった。

 ――国立のレーシェンド学院。

 つまりは国の管理下にある学院で、国の上層部は王族と貴族ばかり……――暗黙の了解というものはどこの世界にも存在するものなのだ。


 育成学科は騎士育成学科となっていて、この学科が学院一の実力主義だと見做(みな)されている。

 ――ある程度は、という枕言葉はついてしまうが。


「そういえば来年はザームが騎士科受験するって話だったな……――英断すぎる。 あの子にマナーや紳士としての立ち振る舞いは無理でしょ」


 父親が子爵家を継ぎ、嫡男となったザームだったが、その性格や素質から、教養学科に入り子爵家の運営をするよりも、騎士となり国に貢献する方がいいだろうと判断され、早々に騎士科の試験を受けることが決まっていた。

 

「――ゆうて【身体強化】のギフト持ちだし、体動かす方がよさそう……最悪、専門科には絶対に合格できるし……」


 専門科はギフト持ちならばどんな身分でも入れる学科で、その試験もかなりハードルが低いものとなっている。

 それぞれのギフトを強化し、伸ばすことが目的の学科なので、当然マナーなどが出来なくとも教養が身についていなくとも卒業することができる唯一の学科だ。


(……本当なら、無難にここに入るつもりだったんだよねー。 ――なんでか、両親に相談した次の日には奥様……はもう母さんだから大奥様か……――大奥様やヴァルムさんたちの知るところになっていて「一般科の方が将来の役に立つ!」と、試験勉強を教わることになってた……でもさ? 専門科だったら授業料も安いし、試験もギフトを披露するだけの簡単なお仕事だったんだよ? ……ーーまぁ、実際に勉強始めてみたら、ゲームの中でも描かれてなかった、この国の歴史とかちょっと面白かったし、ほかの授業も前世の高校受験のほうがよっぽど……ってくらいのレベルだったから「まぁ、このくらいなら専門でも一般でもいっかー」とか思ってたら、あれよあれよと言う間に私の貴族の仲間入り、マナーができれば教養科だって夢じゃない⁉︎ とかいう話になっちゃって――……そっからはみんな厳しかったなぁ……あの日々が報われて本当よかった……)


 ふぅーっと大きく息を吐きながら、優しく襲ってきた、とろりとした心地の良い睡魔に身をゆだね、目を閉じてモゾモゾと眠りに入る体勢を整えた。


(あ……合格通知……片付け……――)


 ぼんやりと考えるリアーヌだったが、実際に行動することはなく――合格通知は翌朝、奇妙な皺を刻まれた状態で発見されたのだった。

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