表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
503/524

503

「だから心配してくれなくても俺は俺の夢を叶えるし、幸せに生きていく――リアーヌと一緒に。 だから……いい加減、俺の決断を勝手に後悔するのやめてもらってもいいかな?」


 舌打ち混じりで不機嫌であることを隠そうともしないゼクスに真正面から睨みつけられ、ベッティは顔色を悪くしながらブンブンと大きく首を振る。


「わ、私そんなつもりじゃなくて……」

「……例えどんなつもりであってもやめてくれる? ――不愉快だ」

「あ……あの、ごめんなさい……」


 ゼクスはベッティからの謝罪に大きなため息で返し、肩をすくめて終わりにした。

 ――ベッティはこの仕草の真意に気が付かなかったかもしれないが、これは『許したわけではないがこの話は終わりにする』という意思表示で貴族同士――ことさら強い立場のものが下のものに対してすることが多い、少々傲慢な仕草だった。


 部屋の中に気まずい沈黙が流れる中、リアーヌは(……これささすが私がこの沈黙を終わらせる役目を引き受ける場面だな……⁉︎)と、無理やりに笑顔を貼り付けながら口を開いた。


「――このお茶、本当に美味しいんですよ? お二人もぜひ飲んで見てくださいな」


 そう言いながらオリバーに視線を流す。

 オリバーは軽く頭を下げながら、再び三人分のお茶を入れ直す。

 その間もリアーヌはテーブルに飾られた花や食器を褒め話題を提供したのだが、それに反応するのはゼクスばかりで、相変わらずベッティの周りには気まずい空気が流れ続けていた――


(――知ってた! そうだよねっ! マナーの知識が無かったら、こういう空気にするのがマナー違反とか分かんないよね!)


 リアーヌは、肩をおとし顔を伏せ自分の手元を見つめながら時折ブツブツと呟いているベッティに視線を向け、そっとため息を漏らす。

 そしてゼクスと顔を見合わせながら肩をすくめ合う。

 リアーヌが(この空気の中、誰が「――じゃあ、そろそろコピーしちゃいますぅー?」って言い出せるのかと……)と心の中でグチり始めた頃、ベッティがゆっくりと顔を上げた。


「……私、あなたにコピーさせない」

「――え?」

「……そもそも今回のお茶会って“コピーさせるから俺の同席を求める”って話じゃなかったっけ?」


 驚き目を丸めるリアーヌに、スッと目を細め眉間にシワを寄せるゼクス。

 顔を上げたベッティは、そんな二人にヤケクソ気味な歪んだ笑顔を向けると、鼻を鳴らしながら答える。


「……だってそうでしょ? どうせ私はここから出られない。 だったら、コピーなんかさせずにレオンと結婚して唯一無二の守護持ちになってたほうがいいじゃない」


 そこまで言ったベッティはリアーヌに鋭い視線を向けながらさらに続ける。


「――好き勝手やったアンタのせいで、私のゼクスはどこにも居なくなった……! この人は……違う……――もう私の知ってるゼクスじゃない……――私が好きになったゼクスなんかじゃない! ……なのにアンタばっかり全部思い通り⁉︎ 一人だけ幸せになろうって⁉︎ そんなことさせない……! 全部アンタのせいなのに、アンタの思い通りになんか絶対させない――ハッピーエンドなんかで終わらせてやらないっ! ……守護がコピー出来なくて残念ね? なんでもかんでも思い通りになると思うなよこのクソ女‼︎」


 唾がかかりそうなほどの勢いで詰られ、リアーヌは思わず背中をソファーに押し付けるように距離をとる。

 散々な口調で盛大に詰られているのに、不思議と怒りは湧いてこなかった。

 そんなリアーヌに代わり、ゼクスは盛大なため息をつきながら怒りをあらわにする。


「――君、本当に自分の立場理解できてないんだね? もしかして今のこの生活がこの先もずっと続くと思ってる?」

「私を脅したい? でも残念ね? 私知ってるの。 そこの女が守護のギフトをコピーしなかったらレオンと結婚するんだって。 どうせ本妻じゃないんだろうけど王様の奥さんよ? あんたたちなんかよりずっとえらい存在になるの」

「誰にどう言われたのかは知らないけど……――時期王妃の可能性が一番高い女性が『君とうまくやっていく自信がない』と言ってるんだ……――これがどういうことか分かる?」

「うまくやる必要なんてどこにあるの? 私は必要な時に守護の力を使えばいいってだけでしょ? その代わりそれなりの生活をかけてくれればトラブルなんか起こさないわよ」

「……そのトラブルが起きそうだから嫌がってるんだと思うけど?」


 小馬鹿にしたように鼻を鳴らすゼクスに、ムッとしたように眉を吊り上げるベッティ。


「……あっそ? でも我慢してもらうしかないんじゃない? ――私コピーなんかさせないし?」

「ははっ ――本当に分かって無いんだな……一国の王妃になろうって人が言った言葉だよ? 本人にそんなつもりがなくても周りが勝手に動くもんなんだよ」

「……へぇ? だから⁇ それで私になにしようっていうのよ? 殺す? でもそんなことしたら守護のギフトは永遠に使えなくなるわね? だとしたら……――誘拐して監禁? ――私にそんなことしたら、そんな奴らが住む国なんか絶対に守ってやらないけどねっ⁉︎」


 目を釣り上げ、攻撃的な笑顔で吐き捨てるように言い放つベッティに、ゼクスは相変わらず小馬鹿にしたような態度で大袈裟なため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ