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「無くなってしまったことは事実なんだろう。 けれど、それが盗まれたものなのか、本当に消えてしまったのかなんて分からない――ウソを見抜くギフトだけじゃね?」

「……ウソは分かるけど、万能じゃない……?」


 ゼクスはリアーヌの言葉に肩をすくめながら冗談めかして答えた。


「ウソが分かるだけで、充分万能だとは思うけど……全てが分かるわけじゃないって感じかな?」

「なるほど」

 

 リアーヌが感心したようにコクコクと頷き、そのやりとりをみていたたくさんの生徒たちも「なるほど……」「知らなかった……」などと呟きながら、納得したように頷き合う。


 そんな中――

 唯一納得出来なかったユリアが声を荒げる。


「みんな何言ってるの⁉︎ あの女が取ったの! あの人殺しがっ! どうしてあんなやつの言うこと信じるのっ⁉︎」


 その言葉に今まではユリアの言葉だけを信じていた生徒たちは困惑した様子でチラチラとお互いの出方をうかがい始めた。

 ゼクスの話を聞くまでは、ユリアはウソを付いていない。 だから正しいのだと思い込んでいたが――

 ユリアが勘違いをしていれば、ウソにはならないということが分かり、ついさっき、糾弾していた相手の『盗んでいない』という言葉が本物だと理解してしまった。

 つまり――自分たちがなんの罪もない相手を糾弾していた、という事実に気がついてしまった大勢の生徒たちは、今までのようにユリアに同調してリアーヌを責めることが恐ろしくなってしまっていた。


 黙ってしまった周囲に驚愕の表情を浮かべたユリア。

 そんなユリアにゼクスは不愉快そうに歪めた口を開いた。


「――君の言うことよりリアーヌの言葉を信じる理由なんていくらだってあるけど――リアーヌのギフトがコピーであるということは学院が、そして国が認めている。 それに加えコピーというギフトには、他人からギフトを奪える力は無いという証明もされている。 ――つまり、君が誰かにギフトを盗まれた(・・・・)というなら、リアーヌは犯人にはなり得ないんだ。 彼女のギフトはあくまでも『コピー』だからね?」

「そんなの! その女がウソついてるだけよ!」

「それはもう通用しない。 ここに集まった複数のウソを見抜くギフトを持っている者たちが、リアーヌのギフトは『コピー』であり、そのことに間違いはないと理解したんだから」 


 その言葉にユリアは周りを見回し、生徒たちと目を合わせようとするが、大勢の生徒たちはその視線から逃れるように顔を背け目を伏せた。


「なんで……? だってこの人が盗んだのに……」


 不安そうに声を振るわせるユリアに、レジアンナやビアンカ、クラリーチェたちが一歩前に進み出ながら口を開いた。

「――それは思い違いだったと、まだ理解できませんの?」

「証拠もないのに、こんな大勢の前で“人殺し”呼ばわりだなんて……」

「あなたの態度は目に余ります! この件については、実家を通してフォルステル家に苦情を入れさせていただきます」


 そしてそんな女性陣の後に続きゼクスも言葉を続けた。


「――当然だけどラッフィナート男爵家とラッフィナート商会も正式に苦情を入れさせてもらうよ? ……俺の婚約者は人殺しなどでは断じてない」


 ビアンカたちの言葉には唇を噛み締め、ギリギリと手を握りしめていたユリアだったが、続くゼクスの言葉に驚愕の表情を浮かべ、まるで裏切られたかのように喚き始めた。


「――どうして! なんでゼクス君まで……だって脅されてるんでしょ⁉︎ 本当はこんな子と結婚なんてしたくないんでしょ⁉︎ 今ならその子の悪事を世間に知らしめられるのに! ボスハウトなんか怖くないのにっ!」

「……またその話? 何回も説明したと思うけど、この婚約を持ちかけたのはラッフィナート側。 ――事実でもないことを事実かのように言われるのは不愉快でしかない」


 そんなゼクスの言葉に唇を噛み締めたがユリアだったが、ハッと気がついたかのように背後を振り返り、自分を支えてくれている友人に向かって怒鳴りつけるように口を開いた。


「ねぇあなたからもちゃんと説明して⁉︎ あなたがちゃんと説明してくれないからゼクス君全然分かってくれないじゃないっ!」


 そう声をかけられたベッティは、気まずそうにウロウロと視線を彷徨わせたが、思いの外周りの人々と目が合い想像以上に注目を集めてしまったことに肩をすくめながらコソコソとユリアに話しかける。


「ね、ねぇ……こんな大騒ぎにするの良くないよ……? 今は授業中なんだし、一度冷静になってから――」


 ユリアを落ち着かせようと思ったベッティの言葉は全くの逆効果で、その言葉を聞いた途端、ユリアは顔を赤く染め目をキリキリと釣り上げた。


「冷静⁉︎ 私のギフトが取られたのよ⁉︎ ベッティが言ったんじゃない! そのギフトがあれば、絶対にレオンと結ばれるって!」

「そ、れは……」


 ベッティは気圧されるかのようにジリジリと後退り、顔色を悪くしながらチラチラとゼクスたちの反応を伺いはじめる。


(――え? 守護のギフトがあれば絶対にレオンと結ばれる――? どういうこと? なんでそれをベッティが⁇ ……お助けキャラにはそんな知識がデフォで備わっている……?)


 一人首を傾げるリアーヌだったが、興奮し切ったユリアの言葉はまだ止まらない。


「なによ! 言ったでしょ⁉︎ あなたのギフトでーー」


 ユリアがそこまで言うと、ベッティは急に慌て出し少々強引な態度でユリアを止め始める。

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