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「いや、今は多分サンドラさんとバトってる」

「……え、なんで?」

「アイツが俺の教室来てすぐエドガーさんが来てくれて、でもなんか変なこと言われ始めて、ちょっと頼りなくなってきたらサンドラさんがブチ切れて……んで怒鳴り合いになったんだけど、その時エドガーさんが姉ちゃんとこ行けって」

「……ざっくりが過ぎる――まず、ザームの教室に来たのはユリア・フォルステルで合ってる?」

「知らねぇ。 アイツ名前なんか言ってなかった」

「……ですよねー?」


(かなり有名な子なんだけど……――こいつ本当に貴族としてやっていけるのか……?)


 リアーヌが弟の将来を不安に思っていると、ゼクスがザームに声をかけ、その人物がユリアであるかどうかを確かめてようとする。

 

「じゃあその女性はなんと言っていたか覚えてる?」

「なんて……? 姉ちゃんを出せ、隠してんのか……あ、あと返してとか泥棒とか……姉ちゃんアイツからなんか取ったのか?」

「取ってないけど、取ったことにされようとしている……」

「……言いがかりか。 めんどくせぇ」


 舌打ち混じりで顔をしかめるザームに大きく頷き返しながら、リアーヌは質問を続ける。


「で……エドガーとサンドラはなんで?」

「エドガーさんは仕事しに。 サンドラさんは……エドガーさんの助っ人?」

「……エドガーの方がメチャ強なのに?」

「……父さんと母さんは父さんの方が強いけど、母さんが怒鳴りつけたら母さんが勝つだろ?」

「……それは夫婦だからなんじゃ……? ――いやでも分かったわ。 ユリアとエドガーが言い争いになって、エドガーが負けそうになったんだね?」

「向こうは何人も寄り集まってギャーギャー騒いで……エドガーさん、その勢いに押されてなんにも言えなくなっちゃって……そこにサンドラさんが助けに入った」

「あー……ギャーギャー騒いだのは女子生徒?」

「おう。 しかもそいつらに文句言ってるヤツもいて、市場の安売り日ぐらいうるさかった」

「……そいつらに文句言ってるヤツ?」

「なんか、約束を守れとか契約はどうなるんだ、とか?」


 その答えにリアーヌは首を傾げ、ザームも合わせるように首を傾げるが、そこにゼクスが声をかける。


「――盗まれた、説明しろ、守護のギフト、なんて単語は聞こえた?」

「あー……説明しろ、は聞いた」

「ならば――ユリア嬢と守護のギフトのことで契約を交わしている生徒たちじゃないかな?」

「あー……無くなったらしいとか聞けば確認しますよね」


(……つまりザームの教室には、現在取り巻きを引き連れたユリア、そしてそのユリアに事情を聞きに集まったたくさんの生徒、そんなユリアたちからザームを守ろうとしたエドガーとそんなエドガーを守るサンドラが居るわけか……)

  そこまで理解したリアーヌはげんなりしながら小さく息を吐いた。


(――カオスが過ぎる……授業どころの騒ぎじゃないじゃん……――あれ? そういえばオリバーさんは? さっきヴァルムさんとか父さんの名前出してたから家に帰ったとか……?)


 リアーヌがそんなことを考えていると、その会話でおおよその事態を把握したであろうフィリップがザームに声をかけた。


「ああ! つまりザーム様は姉君を心配し、オリバー殿の言いつけを聞いてこちらにいらしたと言うことですね?」


 ニコリと笑いながら、ザームの顔を立てるべく、それらしい理由を並べるフィリップだったが――


「……? いいや? うるさくてウザかったから言われた通り姉ちゃんトコ来ただけた。 なぁアレ姉ちゃん探してんだろ? なんとかしろよ」


 フィリップの気づかいをいともあっさり切り捨て、リアーヌに向かい文句を言うザーム。

 そんな非常識な対応にフィリップやレオンたちの頬がヒクリと引きつるが、そんな破天荒なザームにリアーヌの血筋を感じ取り、ビアンカやレジアンナは、により……とかすかに頬を緩めていた。


「姉ちゃん勝手にここから出られない」

「なんで?」

「オリバーさんに言われたから」

「……それは、出られないな?」

「うん。 すぐ言いつけるんだもん」

「あれさえ無けりゃなー?」


 姉弟(きょうだい)で仲良くため息をつき首を振るリアーヌたちに、戸惑いがちにフィリップが声をかけた。


「いつまででも滞在してくれて構わないよ? オリバー殿にもそう伝えてあるんだ」

「……マジ? 姉ちゃん今日帰んねぇの?」

「……お迎えが来ないとそうなるらしい」

「……じゃあ姉ちゃんここ泊まる時は、姉ちゃんのデザート俺のな?」

「……――今日のデザートなに?」

「桜餅」

「――絶対ダメ」

「なんでだよ」

「明日食べるし」

「そんなズリぃし」

「二つ食べるほうがズルイし!」

「そっちだって二つになんだろ!」


 子供のような言い争いを始めた姉弟に、呆れながらゼクスが待ったをかけた。


「はいはいはーい、今はその話し合いは後にしよう? 万が一食べられなかったら、カフェで作ってもらえないか交渉してみるから……」

「本当ですか⁉︎」

「――土産持って帰ってこいよ」

「……絶対イヤ」

「はぁー⁉︎」

「分かった分かった……――リアーヌはオリバーさんから、ここにいろって言われて、ザーム殿はリアーヌ(・・・・)のところに行くよう言われたんだろ? じゃあ、二人とも迎えが来るまでここにいるってことだ。 つまり、デザートが食べられるも食べられないのも二人一緒ってこと。 これでいい?」


 ゼクスの言葉にリアーヌ納得したような顔つきになり渋々頷くが、ザームは不思議そうに首を傾げる。


「……確かに言われたけど、エドガーさんは言いつけ破ったのチクったりしねぇよ?」

「あー……――だけどオリバーさんはするんだろ? エドガーオリバー殿なんだから、結局伝わっちゃうよ?」

「……? エドガーさんには姉ちゃん探して一緒にいてやれって言われただけだけど……?」

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