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 フィリップの言葉にリアーヌが感心したように頷いていると、その横からレオンがため息混じりに言葉を続けた。


「……しかも彼女の場合は、そのギフトがあったからこその養女になり――後ろ盾を得ている。 それが事実だったとした場合、それら全ては消えて無くなるものだろう?」

「……つまり?」


 リアーヌはレオンの言っている言葉の意味は理解できたものの、その話の終着点がどこにあるのか理解出来ず話の続きを促した。


「――今回のように我々まで巻き込んで表に騒ぎを持ち出す場合、秘密裏に君を罪人として捕える手筈、そして告発する準備、さらにはリアーヌ嬢を即刻有罪にしてしまえるだけの証拠や証人などの準備を全て終わらせているはずなんだ――通常は」

「――は⁉︎ え、ヤですけど⁉︎ 私盗んでないし盗めませんっ! 冤罪です‼︎」


 レオンの言葉にどんどん顔色を悪くしていったリアーヌはふるふると首を振りながら訴えるように声を上げる。


「――少し落ち着きなさいな……」

「いやいやいや! ビアンカ今の話聞いてた⁉︎ 落ち着いてる間に投獄されて病死エンド一直線案件だよ⁉︎ しかも原因不明の急病のやつね⁉︎ 誰もが「はいはい暗殺暗殺、お疲れっしたー」ってなるやつのほうっ! 私そんなに悪いことなんかしてませんけどぉー⁉︎」

「……――おだまりっ!」

 

 ビアンカに一喝され、ビクリと身体を震わせてて口を閉ざすリアーヌ。

 しかし視線を忙しなくあちこちに飛ばしながら「でも……」「だって本当だし……」と、モゴモゴと反論の言葉を口にしていた。

 そんなリアーヌに苦笑しながらフィリップが声をかける。


「――続きがあるんだが、話しても?」

「お騒がせしました。 どうぞお続け下さい」


 答えたのはビアンカだったが、リアーヌも異論はないのか少し不満げな顔をしながらも口を閉ざしたままフィリップに視線を向けた。


「今言ったことは一般論……――多くの場合がそういうシナリオで進むものなんだが……――それを今回場合に当てはめるとね? リアーヌ嬢はすでに捕えられていなければいけないんだよ」

「……ん?」


 疑問の声を上げたリアーヌに、フィリップも小さく肩をすくめながら話を続ける。


「ボスハウト家やラッフィナート、そしてそれに味方する者たちからの妨害が入らないうちにさっさと捕えて、裁判、有罪――と、一気にそこまでやってしまわなくては、その策を逆手に取られ自分たちが攻撃される――しかも今回の場合は、君のギフトを『コピー』だと証明しているのは学院であり国であり――国王陛下その人なのだから」

「――つまり……私は今にも捕らえられる寸前だってことでしょうか……?」


 恐る恐るたずねたリアーヌに、フィリップは困ったようにレオンやレジアンナたちと顔を見合わせながらため息混じりに答える。


「いや――すでに君は安全な場所に辿り着いてしまっているんだ……なんの妨害もなく」

「……――ん? どういう……?」

「まだ学生といえど、我々の家はそこそこ(・・・・)の顔がきく。 そんな我々の制止を押し切ってまでリアーヌ嬢を捕えようとする騎士も役人もこの国には存在しないと断言できる」

「……ここに辿り着いちゃったから?」

「ああ。 あの招待状は一種の――賭け、のようなものだったんだ。 王妃側の追手を振り払って、万が一にでも学院に到着出来たなら、うちの名前で少しの時間ぐらい稼げるかもしれない。 そうすれば君の家の使用人たちがうちのサロンに駆け込んでくる可能性もゼロではないと――……まさか優雅なカテーシーまで披露できるほどの余裕と共にやって来るとは……想像もしていなかったよ」


 リアーヌはその言葉に首を捻りながらそっとカチヤたちが控える壁際を振り返る。

 そして小声で「――実は人知れず守っていただいていたり……?」とたずねていた。

 話しかけられたカチヤたちは少し困ったように顔を見合わせるとふるふると首を横に振る。

 そして、そう答えてもなお前を向かないリアーヌにさらに困ったように視線を絡め合うと短く答えを返した。


「そのようなことは……」

「なんの問題もございませんでしたわ?」


 そんなメイドたちにフィリップが声をかける。


「もしよければあなた方の意見を聞かせてはくれないか? 子爵様の様子はいかがだっただろう?」


 フィリップに声をかけられたことに戸惑うカチヤたちだったが、リアーヌに本当にそんな危機が迫っているのであれば見過ごせないと、視線を交わし合いお互いに頷きながら口を開いた。


「――子爵様も奥様もヴァルム様も、いつもと変わらないご様子だったように思います」

「……追跡してくる馬車も者も見かけませんでしたし……――馬車乗り場では少しお声がけをする時間すらございました」


 その言葉にフィリップはイザークに視線を流し、イザークは小さく頷いて見せる。

 それはその言葉にウソは無いという意味でもあり――そのことで一同はさらに首を捻ることになる。


「つまり私に危険はなかった……?」


(だって、さすがに私が投獄暗殺エンドになりそうだったら父さんが反応してくれると思うし……――いやでもユリアはギフトが無くなったって騒いでるっぽくて……)


 リアーヌもそこまで考えて大きく首を傾げた。


(わたくし)たちもそこが知りたいんですわ……?」


 リアーヌの首に合わせるように首を傾けたレジアンナも困惑した声を上げる。

 しかしリアーヌにもその答えは全く見当がつかなかった。

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― 新着の感想 ―
ユリアが「裸の王様」に見えてきたアルヨ…。やり方が幼稚園児並みすぎてアイタタってなってますぅう^^;
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