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「だから……――だからあなたはこの学校で好き勝手してるのね⁉︎」

「あ、そうなります?」

「王様の親戚だからって! ――私は権力に屈したりしないわよ! 王様にだって悪いことは悪いって言ってやるんだから!」


(……この子ってば最強じゃん。 ――そんなの本当にやったら、フォルステル家はお取りつぶしを免れないだろうけど……――この子はどの段階で自分の罪に気がつくんだろう……)


「――そうか。 ならば好きにしてくれ。 だが、これ以上我々の仕事を邪魔するというのであれば、不敬罪の前に公務執行妨害で逮捕するが?」

「わ、私を脅す気ですか?」


 冷たい視線の騎士に告げられ、ユリアはまたジリジリと後ずさった。


「どう捉えてくれても構わないし、今後どう言ってくれても構わない。 ――しかし金輪際、我々の仕事の邪魔をしないでくれ」


 警備部の騎士はそう告げると、半ば強引に歩き始めぶつかるようにユリアを退かすと、そのまま警備部の建物まで歩みを止めなかった。


 リアーヌとユリアが通り過ぎる際、ユリアがなにか言いかけたが、コリアンナが鋭い視線で睨みつけ、その口を封じた。




(……事情聴取でふかふかのソファーと、美味しいスイーツにお茶が用意されて、しかも授業は公欠扱いとか……――これなら私、毎日事情聴取でも構わない……!)


 そんなご機嫌なリアーヌを、カチヤたちがそして警備部の騎士たちまでもが表情を取り繕いながらも、不安を滲ませた眼差しで心配そうに見つめていた。


 後日――

 その心配は的中してしまい、リアーヌを取り巻く環境はこの日を境に激変してしまった。


 ◇


 翌日――

 いつものように中庭のベンチで昼食を食べ終えたリアーヌが、ビアンカと共に教室へと戻っている途中、珍しくオリバーに声をかけられた。


(――どうか、やらかしたのはザームでありますように……)


 とっさにそんなことを願うリアーヌ。

 ザームのために手を尽くしているオリバーがなんの問題も起きていないのに自分に走り寄ってくることなどないと、信じていた。

 自分を不安そうに見つめ返すリアーヌに、オリバーは硬い顔つきのまま頭を下げる。


(あ、本気で私がなんかやらかしたかもしれない……)


 唇を引き結びながら軽い絶望と共に覚悟を決めたリアーヌにオリバーはそのままの体制で話しかける。


「お嬢様、大変申し訳ありませんが本日は屋敷にお戻りいただけますよう……」

「……え?」


 予想外の言葉に、戸惑いながらもビアンカに助けを求めるリアーヌ。

 しかしビアンカも訳が分からなそうに眉をひそめているだけだった。

 そんな親友の態度にリアーヌも不安そうに眉を下げるが、なにか言葉を交わす前に、カチヤたちにも帰宅を促され、慌ただしくビアンカに別れの挨拶をするのだった――


(……えっと――私の荷物はオリバーさんが回収してくれてザームが帰るタイミングで手元に戻るって説明をされた訳ですが……――これは……やらかしたのは私で決定、ってことだったでしょうか……?)


 ◇


「……え、コピーじゃなくて強奪、ですか……?」


 オリバーとザームがいつもより早く屋敷に帰ってきた頃にはすでに両親も揃っていて、眉間に皺を寄せたヴァルムも壁際に立っていた。

 きっと叱られる……! と、ビクビクしていたリアーヌにオリバーが聴かせた話は、決して“やらかし”などではなかったが、リアーヌを大いに困惑させる内容だった。


「はい……」


 リアーヌの言葉に申し訳なさそうに顔をしかめたオリバーだったが、気を取り直すように表情を引き締め、自分が得た情報を事細かに語っていく。


「――どうやら誰かが意図的にウワサを流しているようで、発生場所が専門学科の生徒ということで、気がつくのが遅れてしまいました」

「専門学科……」


(――って事はつまり、犯人は……)


「――犯人はユリアって娘っ子か?」


 リアーヌとこ同じ考えに至ったのか、父サージュがオリバーにたずねる。


「――確証があるわけでは……しかし、中心に限りなく近いところにいると……」

「……どんな感じ?」


 オリバーの言葉を受け、母リエンヌがサージュに話しかけた。

 リエンヌからの質問にサージュは顔をしかめながら唸るように答える。


「良く、はねぇなぁ……?」

「そうよねぇ?」


 リエンヌもなにか見ているのか、同じように難しい顔で頷き返している。

 そしてお互いに眉間に皺を寄せながら顔を見合わせると、難しい顔のまま考え込んでしまう夫妻。


 オリバーから説明された情報によると、専門学科を中心にリアーヌのギフトが、実はギフトをコピーするのではなく、ギフトを奪いとってしまう『強奪』というギフトなのだというウワサが、まことしやかに囁かれているというものだった。

 そして王族の血が流れているリアーヌだからこそ、そのギフト内容を虚偽申請していても誰にもそれを咎められない状態であり、そしてリアーヌはユリアのギフトを狙っている――んだそうだ。


「……――そのウワサってどの程度……その、信憑性といいますか、みんなどのぐらいのレベルで信じてるんですか? 盲目的に信じ込んでるのか、冗談半分とか本当かどうか知らないけど最近聞いた話の一つとしてウワサしてるのか……」


 リアーヌの言葉にオリバーは言いづらそうに口を開く。

 

「……あの者をの盲目的に信じている者は一定数存在しています」

「あー……」


(つまりユリアの味方は本気で私が強奪のギフトを持っていると信じてるわけか……)


「こちらでもウワサを掻き消そう試みては見たのですが……」


 その反応からあまりうまくいっていないことを感じ取ったリアーヌは、眉を下げながら「ーこの短時間じゃしょうがないと思います……」と声をかけた。

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