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(――頼むからあまり喋らせないでね……? もしくはセンスを今すぐ持ってきて! ――歯を見せずに笑うって結構難しいんだよから! 本当にちょっと見えただけでもダメなんだから! なのに口角は上げなきゃいけないし! ……人間の前歯ってそんな構造になってましたっけ……⁇)


「あのっ……私、お話ししたいことがあって……」


 リアーヌが必死に笑顔を取り繕っているところへ、ベッティの声がかかる。

 リアーヌはどうかしたのかとそちらを見るが、ベッティが必死に見つめていたのゼクスだけだったのでリアーヌもゼクスに視線を向けた。


「――どんなお話かな?」


 ゼクスはニコリと笑いながら続きを促すが、ベッティはチラチラとリアーヌに視線を向けながら答えを濁した。


「出来れば、その……」


 そんな態度のベッティにリアーヌたちは呆れ気味に顔を見合わせる。


 ――現在、誰がどうみてもゼクスがリアーヌをエスコートをしている状態だ。

 それはリアーヌの安全をゼクスが守るという簡単な約束事であり、ここでリアーヌを一人にするという選択肢は貴族的に考えてもありえないし、平民同士であってもデートの最中に彼女をほっぽり出して他の女性と2人きりで話をするなんてことは、非常識である場合が多いだろう。


「――申し訳ないが今は婚約者をエスコートしている最中でね、どんな理由があろうとも彼女を残して他の女性と――なんてことが出来るわけがない。 話とやらはまたの機会に……」


 そう言いながら、ゼクスはベッティに声をかけながらリアーヌの背中を軽く押してその存在をアピールする。


「わ、私本当のことを説明したいんです!」


 その言葉に足をとめたゼクスは、少し考えるようなそぶりを見せてから口を開いた


「婚約者同席で構わないというのであれば、話を聞く程度の時間はありますが?」

「…………一緒でも構いません」


 ベッティは、たっぷりの時間をかけたのちその言葉を捻り出した。


(ものすごい不本意そう……――私、この子に嫌われ過ぎじゃない……? そっちがやったこと暴露しただけじゃん……)


「少しだけだから良いかな?」

「もちろんですわ?」


 ゼクスは一応リアーヌにうかがいをたてて、リアーヌもそれに事務的な許しを出す。


「……では――どうぞ? 幸い周りに人は少ない」


 ゼクスのいう通り、湖の周りをぐるりと囲んでいるこの道には、二人きりになって語り合いたい者たちか、木陰でおしゃべりに興じている生徒たちぐらいの姿しか見えず、のんびりと散歩している生徒たちも皆無ではなかったが、その者たち同士の間はかなりの距離が空いていた。


「……――ユリアへの、その……嫌がらせのことなんですが……」

「ああ。 ――彼女になにか含むところがおありならば、きちんと言葉にすることをお勧めしますよ。 ……それと――どんなつもりがあって我が婚約者を悪者に仕立て上げたのかは知らないが、その報いは必ず受けることになると、お覚悟を?」


 ゼクスの言葉にベッティは慌てて首を振る。


「ち、違うんです! 私は――……全部頼まれたことなんです……!」


 その言葉にリアーヌは驚いたように目を見開くが、ゼクスは冷ややかな目を向け続けていた。


「頼まれた、ですか?」

「そうなんです!」

「――それは……一体誰に?」

「それは……」


 答えを言い淀むベッティに畳み掛けるように質問を重ねるゼクス。


「あなたのお(うち)の方ですか? それともクラスメイト――いや、他の貴族かな? ……まさかユリア嬢本人なんてことは――?」

「あ、いや……その……」

「――もしかしてもっと上からの指示ですか?」


 口ごもるベッティにゼクスは次々と候補を上げていく。

 その言葉に視線を向く揺らしていたベッティは、やがて決意したようにグッと手を握り締めながら口を開いた。


「――フォルステル家……の方です」

「ほう……――義理とはいえ、ユリア嬢のご家族があんなことを頼んだ、と?」

「り、理由は分かりません! そんなの言われなかったし……――ある日フォルステル家の使いがうちにやって来て、協力しろって……フォルステル家は王妃様とも面識があるから、うちなんてどうにでも出来るんだぞって言われて……私怖くって……」

「脅されて犯行に及んだ、と?」

「その……ケガをさせるわけじゃないし、本当にちょっとした嫌がらせだけだって言われて……」

「――フォルステル家の者は他にはなんと? 具体的な目的は?」

「そ、れは……――その、詳しくは聞いてませんが……警告(・・)だと言っていたような……?」

「――警告……?」


 ベッティの話をゼクスの隣で聞いていたリアーヌは、その話に眉をひそめながら首を傾げていた。

 ゲームのどのストーリーに当てはめて考えてみても、フォルステル家がユリアに警告するために嫌がらせをする、という行為が理解できなかった。


(どのルートの話に進んだらフォルステル家にそんなことされるの……? そもそも、フォルステル家ってそこまで主人公に絡んでくる家じゃないような……? いい意味でも悪い意味でも基本は放置だった気がするけど……――もしくは全くの他人がフォルステル家の名前を語ってベッティを脅した……? ――あれ? でも、そもそもこの子にそんな接触があったなんて報告、聞いてない気がするけど……――最初しか連絡取ってなかったんだったら、ヴァルムさんたちだって分からないこともあったり……?)

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