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「だからこそ、クラリーチェ様の外聞には傷ひとつ付いていない――まぁ、かの方から『けれど黒幕は……』みたいな扱いを受けていらっしゃるわけだから、お辛い立場ではあると思うけれど……」

「うん……」

「……にも関わらずここで友人たちや護衛だけで買い物に出て、その間にまたかの方が被害に遭われたら?」

「……お店の人が証言するんじゃない? お買い物に来てましたよって」

「――貴族が嫌疑をかけられ、その貴族が懇意にしている店の店主がアリバイを証明? 物語だったら確実に偽証だわ?」

「……確かに」

「そのほかの証言者は友人に護衛……――これではクラリーチェ様に醜聞が付き纏うことになる」

「……なりそう」

「だからこそ許可は下りない――万が一下りたならばあなたの許可は取り消されたと言いはりなさい……?」

「――了解です……!」


 ビアンカの言葉に力強く頷き返すリアーヌ。

 リアーヌたちは全く聞いていなかったが、レジアンナの判断も「クラリーチェの許可が下りたのならば文句など言える立場では無いけれど……――その時はレオン様に同行していただいて、お忍びデートとしたほうがクラリーチェの気分は晴れそうじゃない?」というもので、その場合のクラリーチェのアリバイ証明をレオンに担ってもらう案を出していた。


(しっかし……考えれば考えるほどクラリーチェ様が気の毒すぎる……――全部が言いがかりでクラリーチェ様は何にも悪くないのに……)


「……例えばさ? 学院の警備部とかに働きかけて、校内巡回をものすごく強化してもらったり――もういっそのこと、かの方を守ってもらうよう働きかけたら、結果的にクラリーチェ様が守られたりしない……?」


 ポソポソとしたリアーヌの提案は、意外に多くの者たちの興味を引いたようで、その意見に多くの者たちが耳を傾けた。


「……――どんな身分の者でも平等に扱う……これがこの学院のスタンスでしょう?」


 リアーヌの意見に言いにくそうに答えるビアンカ。


「うん」

「――だからこそ、警備部は生徒から生徒を守ったりはしないわ。 もちろん、それが命を狙っている――ともなれば動くでしょうけれど……現状は嫌がらせ……それもイタズラ(・・・・)と言ってしまえるほどの可愛らしいものばかりですもの」


(――やられるほうは可愛らしいだなんて思ってないけどね⁉︎ ……でもケガすらしてないもんなぁ……警備部の方々って超エリートだって話だし……学生同士のトラブルになんか、首を突っ込まないかー)


「そっかぁ」


 ビアンカの言葉に納得したリアーヌは大きく肩を落としながら頷いた。


「――でもさ? こう……なんとかしてあげられないのかなぁ……?」


 そう続けたリアーヌの言葉に、多くの者たちは同情的な視線を交わし合うが、レジアンナだけは居心地が悪そうに目を逸らしていた。


「……どうかした?」


 リアーヌの問いかけに言いにくそうに答えるレジアンナ。


「実は――家族に、両親から止められているの」

「……なにを?」

「――今回の件でクラリーチェに手を貸すこと……」

「ぇ……なんで?」

「私だって助けたいし、イジワルで言ってるんじゃないわよ? でも……――これはクラリーチェが払わなければいけない火の粉だから……」

「でも……――クラリーチェ様が悪いわけじゃ……」

「私だってそう思いますわ? でも――今回手助けしたとして、そのあとは?」

「あと……?」

「ええ。 次にまたトラブルが起こったらまた手を貸すの? どのレベルのトラブルまで⁇」

「それは……」

「それに……――散々手を貸して、私たちが卒業したらクラリーチェはどうなるの? もう私たちは助けられないから自分で頑張ってねと突き放すの?」

「そう……なっちゃうね……?」

「ええ……――今のクラリーチェは気の毒だし、理不尽な目に遭わされているとも思うけど……――火の粉が降りかかってしまったのなら、自分でどうにかするしかないの……――私もあなたもね?」


 肩をすくめて言ったレジアンナの言葉に、火の粉が降りかかった場合、ヴァルムを筆頭にオリバーやアンナ、果てはゼクスまで頼りにしようとしていたリアーヌは、ビクリと身体を震わせ、そっと視線を逸らす。


「――では勉強会はいかがでしょう⁉︎」


 友人たちの一人が思い切ったように提案する。

 放課後や休日にほんの数時間集まってお茶を楽しむことぐらいならば、許されるのではないかと考えたようだった。

 

「……それは――良い考えね?」


 その考えにレジアンナも納得したのか、顔色を明るくしながら同意した。

 レジアンナのその意見に、友人たちも顔を輝かせ、早急に勉強会の予定が立てられていく。


(わたくし)クラリーチェ様がお好きなお菓子を持参しますわ」

「では私はお好きなお花を!」

「お茶も!」


 口々にそう言い合いながら盛り上がる友人たちと目が合い、リアーヌは自分もなにかを用意しなくては……⁉︎ と、慌てて頭を回転させ、よく考えないままに口を開いていた。


「そ、それじゃ私は、クラリーチェ様がお好きなレオン様を……――置物に?」

「――なにを言い出すのよ? あなたがレオン様を自由に持ち出せるわけがないでしょう……?」

「……ですよね?」


 ビアンカに冷たい視線で見つめられ、リアーヌは首をすくめながら自分の失言を認めた。

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