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「――どのような組織でも一枚岩とはいきませんものね……――ましてや……“ネズミ”が紛れ込んでいるなら一致団結も難しいでしょう」


 カップを口に運びながら言ったビアンカの言葉に口元を引き上げ、同意の意思を示す友人たち。


犯人(・・)については知らない(てい)を通すっぽいな。 ……ま、うちとしても学校に報告以上のことはするつもりないから、ここではお口チャックだけどー)


 そう考えながらリアーヌは不用意な発言をしないようにお菓子を口の中に放り込んだ。


(なにこのクッキー⁉︎ 甘くない! しょっぱい! ……チーズ? ――新しい!)


 リアーヌがお菓子に目を輝かせている間に、再び情報交換再開される。


「かの方のお取り巻きは、ほとんどが専門学科の生徒――数は多いですが……言ってしまえば烏合の衆――家同士の繋がりすらない方々ですから……その絆も脆いかと……」

「……もっと言ってしまえば――?」


 誰かがひそめた声でそう発言すると、集まった友人たちは視線を交わし合いながら前のめりになり顔を近づけ合う。

 一拍の間を置いてリアーヌもそれにならった。


「……ご自分で?」

「ですわよねぇ?」

「話を聞く限り、かの方のお取り巻きだって、意外にしっかりお守りしているようですし……」

「なのに被害は減るどころか増える一方(いっぽう)……」

「どれだけ隙だらけの護衛なのかしら……?」


 ヒソヒソと眉をひそめ合う友人たちの言葉に、レジアンナも盛大に眉を寄せながらため息混じりに口を開いた。


「――そこまでして殿方(とのがた)の気を引きたいのかしら」


 その言葉に多くの者たちがため息を吐き出し、気の毒そうな表情を浮かべる。


「――連日、教室に押しかけては涙ながらに訴えているとか……」

「お隣にいる方がどなたか見えていないのかしら……!」

「お気の毒に……」


(本当それ。 やっぱりユリアのルートはレオンで決まりで――なにか被害があるたびにレオンの元に通っては「私なにもしてないのに……」を目の前で繰り広げてる――その隣にいる婚約者をガン無視して。 ……レオンがクラリーチェのことを気づかっているのが救いだけど……――そっか。 レオンが自分の出現場所じゃなく教室に留まり続けると、こんな地獄が簡単に出来上がっちゃうんだ……)


「伯爵家には経緯も事情も全てお伝えして、ご息女の教育を見直すべきと伝えておりますのに……――うちも舐められましたこと……」


 レジアンナが忌々しそうに眉を引き上げながら言うと、そのまま背筋を伸ばして椅子に座り直した。

 それをきっかけに、皆も姿勢を正し始める。

「ゆくゆくは――と、考えていらっしゃるんでしょうね?」

「――王太子すら定まっていないというのに気の早いこと……」


 ビアンカの言葉にレジアンナは鼻を鳴らし吐き捨てるように返す。

 そんなレジアンナの反応をうかがいながらも、友人の一人がおずおずと一つの提案を口にする。


「……もし――もしもの話になってしまいますが……ミストラル家が許可を出したのであれば、クラリーチェ様たちだけでも先に大通りへお出かけになっていただいては……?」


 それは未だに許可の下りないレジアンナを抜きにしても、心を痛めているであろうクラリーチェに気分転換をさせてあげては? という提案だった。

 その内容がレジアンナの怒りに触れるのでは……と感じた周りの者たちは、言葉では賛同できずにいたが、チラチラと期待のこもった眼差しをレジアンナに向け、同意の言葉を待っているようだった。


(……待って? それさぁ……私はどういう扱いになるの……? ――え、一回じゃない、普通。 そんな危険が危ないみたいなイベントって一回やったらそれで終わりじゃない⁇ 例えレジアンナが不参加だって一回で終わりにすべきでは……⁉︎)


 リアーヌのそんな心の葛藤を読み取ったのか、絶妙なタイミングでビアンカがポソリと呟いた。


「――そういえば(わたくし)、まだ許可が……」

「ちょっと……⁉︎ ビアンカこの間、自分の許可なんか簡単に出るって……!」


 リアーヌはレジアンナたちの会話の邪魔にならないよう小声で苦情を伝えるが、ビアンカは肩をすくめシレッと言い返す。


「勘違いだったみたい」

「――じゃあ私も」

「リアーヌは平気よ」

「なんで⁉︎」

「いざとなったら私がご両親やゼクス様に許可をもらって差し上げますわ?」

「このヤロウ……――一人だけ逃げるとかズルだからね……! ――私たち親友でしょ? そのキズナはそんなものなのっ⁉︎」

「――家同士に繋がりの無い絆なんて、こんなものよ」

「ぐぬぅ……」


 ジト目で自分を睨みつけてくるリアーヌにクスリと笑ったビアンカは、手で口元を覆いながら、ソッとリアーヌに囁いた。


「ですが――今の時期にシャルトル家がそんな許可を出すなんてあり得ないわ」

「……そうなの?」

「普通に考えるならね。 クラリーチェ様に嫌疑の瞳が向けられているからこそ、ありえないことだと思うわ」

「……クラリーチェ様はご両親にも疑われていた……?」

「そんなわけないでしょ……――今ならばクラリーチェ様やそのご友人たちが、かの方関連のトラブルに関与できないということを証言する者たちはいくらでもいる。 それこそ派閥も学科も、クラスさえも関係のない生徒たちが大勢ね?」

「……だね?」

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