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(もはや別人じゃないですかぁー……――さすがはお貴族様、おっかない……)


 リアーヌはゼクスに任せようと視線を送るが、ゼクスはその視線に小さく頷いて「喋ってもいいよ」と意思表示する。


(――えっ⁉︎ ウソでしょ? 目があっただけなのに私が説明することになったんですが⁉︎)


 動揺するリアーヌだったが、夫人の圧が強めの笑顔に押され、辿々しくも説明を始めた。

 心の中で(何回か説明してきて良かった……)と呟きながら。


「ええと、スパというのはギフトのひとつでして、身体に良い成分を含んだお湯が出せるんです」

「身体に良い……」

「はい。 ですのでそのお湯に浸かったり、顔を洗ったりしますと肌の調子も整い、結果として肌が綺麗に見えるんです」

「……スパのギフトがあれば……?」

「そう、なりますかね……?」


 リアーヌはゼクスに視線を流しながら答えを濁す。


「――当家の新しい事業の一つで、スパ能力者が出したスパを使用した施設を開店させるのですが……――一言で言ってしまえば、入浴施設ですね。 ゆったりとくつろいでいただき、日頃の疲れを癒すマッサージなども施す施設です」

「――男爵の、ということはやはりディスティアスに作られるんですわよね……?」

「私共が作る施設を利用したい、ということであれば、その質問の答えは『イエス』です。 ですがスパを体験したいというのであれば……」


 ゼクスはそこで言葉を切り、リアーヌに意味ありげな視線を送る。


(……あれ? これ実演する感じか……?)


「あら、なにかしら? ぜひ体験してみたいわ?」


 興味津々の夫人の様子にゼクスは満面の笑みを浮かべながらリアーヌに話しかけた。


「リアーヌ、やって見せてもらえるかな?」

「……スパを使う?」

「うん。 君のギフト(・・・)を披露してほしい」

「……分かり、ました」


(この言い方は……――私のギフトを『スパ』ってことにして、スパを披露するってこと――なのかな? ――調べられたら簡単に『コピー』だってバレちゃいそうだけど……ま、ゼクスがいいっていうならいっか……?)


「――あら? もしかしてリアーヌ様は……?」


 探るような視線をリアーヌに向けながら、夫人はたずねる。 

 リアーヌは軽く胸を張りなが頷いた。


「そう、ですね?」

「まぁ、羨ましいですわ! 我が国でもだいぶ増えて来たとはいえ、まだまだお目に掛かれませんものね……?」


 夫人の問いかけに伯爵は大きく頷く。


(なるほど……? アウセレにはギフト持ちが少ない、のか? ……それってゲームの設定なのかな? それともゲームとは関係無い……?)


 そこまで考えて、リアーヌは内心で小さく首を傾げた。


(……この辺りのこと考え始めると、いつも頭ぐちゃぐちゃになっちゃうんだよなぁー。 ――結局答え合わせなんか出来ないし……っと、今はスパだよスパ)


 リアーヌは期待のこもった眼差しの夫人と目が合い、笑顔で取り繕いながら口を開いた。


「――なにか……洗面器のようなものをお借りできますか?」


 そうたずねたリアーヌの言葉をきっかけに、タカツカサ家の使用人たちが動き初め、スパの説明は実演と共に、とてもスムーズに行われたのだった――




「――素晴らしいわ⁉︎」


 夫人は自分の右手と左手を見比べながら驚愕に目を丸く見開いていた。


(――まぁ、その見た目のほとんどはお風呂マジックだったりしますが……――でも本当に温泉の成分はお肌にいいし、マッサージも効果的だから、嘘なんかついてないんだからね……!)


 嬉しそうな夫人に、ゼクスが商人にしか見えない笑顔を浮かべながら声をかける。


「お美しい奥様におかれましては、まだまだ必要のないものではございますが……実際に体験された方たちからは、肌のくすみやたるみ、シワなどの改善も実感した、というお声も頂戴していまして……私共としては、これはそれらの予防にもいいのではないかと考えているんです」

「――くすみ……シワの予防……」


 夫人はトーンアップした自分の右手となにもしなかった左手を見比べて、再度ギラリと瞳を輝かせた。


(わぁ……――入ってみたいって海外から戻ってこられた大奥様がスパ経験した時の顔に似てる……――結局、ゼクスが育ててたスパ持ちマッサージ師さん、一人引き抜いて、また諸国漫遊の旅に出ちゃったし……――私としては珍しいお土産たくさんもらえてハッピーだったけどー……)


 リアーヌはチラリとゼクスを見つめながら少しだけ気の毒そうに眉を下げた。

 ――実際のところは、諸外国のさまざまなな情報や特産品の紹介などの情報と交換だったので、ゼクスとしてもラッフィナート紹介としても、見返りとしては充分だったのだが――

 ……開店を急かされているゼクスとしては、マッサージ師を一人引き抜かれるのは手痛い出来事に違いはなかった。


「――つまり男爵は、この『スパ』のギフトを扱える方々を複数雇われている、と?」

「はい。 大人数を収容できる湯場で手軽に湯を楽しんでもらえる場と、完全個室でプライベートな空間を確保しつつ湯を楽しんでいただく場を兼ね備えた施設となっておりますので……」

「まぁ……! 行ってみたいわ?」

「――いつかは行けるんだろうけどね……?」

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