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 そんなビアンカに向かい、ゼクスも釘を刺すように口を開く。


「――万が一はありません。 私は全力で拒否させていただく」

「……その場合リアーヌがコピー――」

「絶対にさせません。 それをやったら俺、全力でジェネラーレ家に嫌がらせしますからね⁉︎」

「……もったいない」


 ゼクスからの脅しの言葉に、ようやく諦めがついたのか、ビアンカは再び、大きく肩を落としたのだった――


(……いつもは完璧お嬢様なのに――研究のことになると途端にポンコツになるのなんでなんだろ……――知識“欲”はあんまり我慢してこなかった的な……?)


 そんなことを考えていると、ゼクスの大きなため息が聞こえてきた。

 そちらに視線を送ると、顔をしかめたゼクスと視線がぶつかる。


「――元々はリアーヌが引き起こした騒ぎだって気付いてる?」

「ぅ……」

「これからは不用意な発言で、軽率に俺を巻き込むの禁止だからね?」

「……仲良くなれればいいなって思っただけで……」

「――……今だって、悪くはないよ――こうして同じ場所で同じ時間を過ごしてるだろ?」


 ゼクスは貴族じみたキラキラとした笑顔を浮かべながらリアーヌをまっすぐに見つめながら返す。

 話題に上がっているはずの人物のほうには一切視線を向けないままで――


「――私も今のままの関係を望んでいるよ?」


 やんわりと言いながらレジアンナと共に近づいてきたフィリップも、決してゼクスのほうには視線を流さず、リアーヌにだけ喋りかける。


(仲が悪すぎると、意見が一致することだってあるんだぁ……)


「――魅了のギフトって、かけられた時だけなんでしょう? なら悪影響にしかならないわ? ……それに――嫌いな方と無理に仲良くさせようだなんて可哀想……」


 レジアンナのやけに実感のこもった苦言に、リアーヌは「確かに……?」と納得の声を漏らす。


(ユリアとレジアンナがギフトの力で仲良くし始めたら、そんなの気の毒すぎて見てられない……)


「だからもうフィリップ様をいじめちゃダメ!」

「分かった。 ――それに私だって全面戦争は避けたいしね?」


 レジアンナの言葉に、リアーヌは素直に頷きながら心の中で呟いていた。


(そっか……フィリップとゼクスの仲の悪さって……そのレベルまでいってたんだ……)


「――ありがとうレジアンナ。 やはり君は私の女神なんだね?」

「――あら? 今頃気がつきましたの?」

「ふふっ そうかもしれないなぁ……だって君は昔は私の天使だったんだから……」

「フィリップ様ったらぁっ!」 


 盛り上がり始めた一組のカップルを置きざりにいさ、他の面々が少しずつ位置を変えまた再び自然と集まり始める。


「……知ってた? あの二人ほんの一年前までは拗れに拗れてたんだよ?」

「――上手くまとまって僥倖じゃない」

「……元々、強く想い合っていたんでしょうね?」


 リアーヌの言葉にビアンカとパトリックが言葉を返す。

 こんな軽口であっても、この場で笑い話に出来るような関係性でもなかった。


「――なら拗れてない俺たちはもっとずっと何良くなってても良い気がしない?」

「……ぇ? っ⁉︎」


 話しかけてきたゼクスのほうを向いたリアーヌがギョッとした顔つきでパッと顔を背ける。


「あ、ダメだよー。 目を合わせてくれなきゃかけられないだろー?」


 そうからかうように笑ったゼクスの瞳は赤く輝いていて、ギフトを発動させていることを示していた。


「あら、もったいない……パトリック様――」

「――僕は君しか見ないから、君もよそ見はやめてくれるかい?」

「……まぁ」


 ビアンカの知識欲は、パトリックの渾身の口説き文句でどうにか抑え込めたようだった。


「――少し、羨ましいですわ」

「……ギフトかい?」

「……だって――(わたくし)が使えたら……」


 そこで言葉を切り頬を染めながらチラチラとレオンを見つめるクラリーチェ。


「――君が魅了のギフトを持っていたら……私はとても不安に思うことだろう」

「……ぇ? あ、あの私……あなたの嫌がることなんて……」

「――ただでさえ可憐な君が、今よりもっと魅力的に見えるということだろう? 今より自分を律していける自信が持てない」

「――……ま、まぁ……」


 顔を真っ赤に染め上げ、上擦った声を上げるクラリーチェ。

 レオンはそのそばに寄り添い、そっとその背に手を回した――


 ――リアーヌの人生で二回目の王城でのパーティーは、ハート飛び交うピンク色のバルコニーで無事に終了の時を迎えた――

 ……途中、何度かユリアとその友人がこのバルコニーにやって来ていたのだが、パーティーの出席者兼護衛の者たちや、フォルステル伯爵、そして王妃の息のかかった給仕人たちの活躍により、リアーヌたちはユリアの姿すら見ないまま、帰路につくことが出来た。

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