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 その考えに顔色を悪くしたリアーヌは、最悪の事態を回避するため、レジアンナたちに大きな釘を刺しておくことにした。


「学園の外に行くなら、絶対にお家の人の許可もらって来てね⁉︎ 無理なら今回も学院の中一択だからね⁉︎」


 リアーヌの言葉にレジアンナたちは顔をしかめ、フィリップたち男性陣はホッと胸を撫で下ろしていた。


「……まぁ、そうね? 必要なんでしょうけど……」

「――きっと反対されてしまいますわ?」


 レジアンナたちはすがるような視線をリアーヌに向け眉を下げる。


 彼女たちの希望としては授業をサボり、友人たちと街へ繰り出すこと。

 いまさらそれを曲げることはしたくなかったが、リアーヌの言い分が正しいのだと理解もしていた。

 これに同行するであろう護衛たちは、各々の家に雇われた者たちであり、万が一があれば確実に、もし運良く万が一が無かったとしても、学院の外に出したことを咎められ罰せられてしまう可能性が充分に考えられた。

 そして、その咎めを受けるの対象は護衛に留まらず、友人たち(・・・・)にまで及ぶ可能性も決して少なくはなかった。

 自分たちのわがままで、多くの人たちが悲しむのは本意ではない――本意ではなかったのだが、やはりどうしても、更なる刺激を欲してしまっていた。


「反対されても、何回も話し合って条件突き詰めて行こうって……」

「――何回も話し合う……」

「条件の突き合わせ……?」


 リアーヌの言葉に、レジアンナたちは初めて、一度反対されたからといっても諦めなくても良いのだということを理解した。

 そして許可が降りるような提案をすることが出来れば、なんの憂いも無くみんなで街に繰り出せるのだということも。


「……そうよね? 今のままじゃお母様たちの許可はきっと絶対だわ?」

「……そうすると、休暇明けすぐ――とはいかなくなりますが……仕方がありませんわね?」

「――条件と譲歩……きっと良い勉強になりましてよ」

「――私も頑張ってみますわ!」


 二人の会話を聞きながら(これで(うち)が取り潰される可能性、だいぶ減ったんじゃない……?)と、ホッと胸を撫で下ろしていたリアーヌだったが、そんな彼女の脳裏に、ふと一つの考えが舞い降りた。


(――これ……? 『私まだ両親の説得が終わらなくて……』って言い続けたら、無事に卒業を迎えられる説、あるんじゃない……⁉︎)


 その考えに、閃いた! という顔をしていると、ビアンカがコソリ……と耳打ちする。


「……あのお二人の許可が降りても、あなたの許可が下りてなければ、私が一緒にあなたのご両親を説得させていただきますわ……?」

 そんなビアンカからの親切な(・・・)申し出に、リアーヌはキュッと唇をすぼめながら「わぁ嬉しい。 ありがとう」と棒読みでモゴモゴと答えるのだった。


「――学院の近くの店に行く、とか大通りからは出ない――とか、そんな条件があるとより安全かもしれないね?」


 そんなゼクスから提案は、間違いなくリアーヌの安全や、ボスハウト家の立場を思っての発言だったのだが――


「……ぇ、ピペーズ通り……」


 と、リアーヌは何も考えずに悲しそうな顔をゼクスに向けていた。


「……むしろ俺はリアーヌのためを思って提案したけどね?」

「ぁ……――じゃあ、大通りからは出ません……!」


 リアーヌもゼクスの案が、安全面から考えれば最善だということは理解出来たのか、照れ笑いを浮かべながらも少し残念そうに答えた。


「――大通りならウルバーンはいかがかしら?」


 リアーヌたちの会話に少し呆れたような笑顔を浮かべながら、ビアンカが比較的学校から近い店を提案する。


「ウルバーンって……」

「確か紅茶の専門店だったところ……かな? 最近増築して作った喫茶スペースで売られているチョコレートが美味しいって話ですよね?」

「ええ。 この間いただく機会がありまして。 紅茶の風味を強く感じるチョコレートで――あちらを専門店が勧める紅茶と共にいただいたら、さぞかし美味しいのだろうと……」

「え、私も食べたい。 そこね? そこで決まりね⁇」

「……あなた、ずいぶん乗り気なようだけれど……?」


 急に前のめりで話し始めたリアーヌに、呆れたような笑顔を浮かべながら肩をすくめるビアンカ。

 リアーヌが少しでも乗り気になれば……と思い提案したことだったが、ここまで乗り気になられてしまうと、それはそれで思うところがあるようだった。


「……ウルバーンでしたら、近くに素敵な雑貨屋がありまして……!」

「あら、クラリーチェのおすすめのお店? それは楽しみだわ。 皆さんで行きましょうね?」


 レジアンナの問いかけに少女たちは一斉に頷く。


「はいっ!」

「もちろんですわ!」

「……雑貨店でしたら記念になるようななにかを、皆さまでお揃いにするのも楽しそうですわね?」


 ビアンカが提案するとレジアンナたちは目を輝かせて手を合わせる。


「まぁ素敵! きっと一生の思い出になりますわっ」

「お友達とお揃い……――絶対に実現させます……!」

「お揃いね、うん。 思い出にはなるよねー」


 そんな会話に合わせるように相槌を打つリアーヌに、ビアンカが眉をひそめながら口を開く。


「……――あなた、食べ物以外にも興味を持ちなさい……?」

「も、持ってるし! 美容とか興味津々だし!」


 そんなやりとりにクスクスと笑っていたレジアンナだったが、美容といえば……と、リアーヌに疑問を向ける。

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