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「……ま、これで周りの方々は静かになるんじゃないかな? ……ご自慢のギフトでも災の元(・・・)は止められないようだし?」


 ゼクスは言葉をぼかしながら、ユリアやフォルステル家の周りから取り巻きや賛同者が減る可能性、そして守護のギフトでもこの騒動から身を守ることは出来ないと揶揄していた。


「……確かに」


 少し時間はかかったが、自力で翻訳したリアーヌは、扇子で口元を隠しながらクスリと控えめな微笑みを見せる。


「そもそも……あの発言はあんまり受け入れられない――あくまでも、私はだけどね?」


 ゼクスは周りの者たちが自分たちの会話を聞いていることを見越した上で、この騒動を、その原因であるユリアのことを快く思っていないであろう者たちの心をくすぐるような発言をする。

 こういった個人の主張が多くなれば多くなるほど、ユリアの影響力が弱まると考えていた。


「……それにしても――あのご友人(・・・)意外にメンタルが強いですね……?」


 リアーヌは少し背伸びをしながら騒ぎの中心にいるユリアたちを――そのすぐ後ろに佇んでオロオロと手を動かしているベッティ・レーレンを視界に収めながら呟いた。


「……招待状が無いにも関わらずここまでやって来れる胆力の持ち主だからね……? メンタルは元から強いんじゃないかな?」

「そう……なんですか、ね?」


 リアーヌは曖昧に頷きながらベッティに同情的な視線を送る。


(あの子、平民だからお城のパーティに出席するなんてシナリオ見たことないし……――なんで連れて来られちゃったんだろう? あの子がいてくれたらレオンがどこにいるか分かるとか考えた……? ――それとも本気で彼女を排除したがってる……?)


「……気になる?」

「……あの方のこれからが心配です」

「――これだけの貴族に迷惑をかけた存在、しかも分かりやすくターゲットになりやすい身の上……――誰も何もしなかったとしても、貴族たちからの覚えが悪くなると、不興を買うのを恐れてその周り――お抱えの商家や職人たちが距離を取ろうとする……――こうなってしまったら、全力で今の関係性にしがみつくのが最善なんじゃないかな?」


 ベッティの身分が平民ということで、ゼクスもだいぶ直接的な表現で説明する。


「あの子は何も悪く無いのに……」

「――そうかな?」

「だって……友達に誘われてついてきただけなのに」

「……だけ(・・)かなぁ?」

「――違うんです?」

「……リアーヌだったら、学校の友達――でも貴族だと知っている人にパーティーに誘われたら、なにも聞かずについてくるかい?」

「なにも聞かないってことは……」


 リアーヌはゼクスからの質問に首を傾げながら答える。


「だよね? だってドレスコードや会場がどこなのかぐらいはどうしたって気になるもんね?」

「はい……」

「その証拠に彼女だってドレスコードは守ってる……というか、あの衣装もご友人(・・・)に借りたんだろうけど……――あんなドレス着て参加するパーティー、貴族のものだって気が付かない方がどうかしてると思うよ?」

「それは……」

「そもそもここに入り込んだ――今もなお、このパーティに居座ってることが答えだよ。 いくら王妃様からの招待を受けたとしても、これだけの騒ぎになったんだから辞退するのがまともな考えの子だと思うけどね」

「そ、れは……」


 ゼクスの言葉にリアーヌは言葉を詰まらせる。

 その言葉に同意してしまう自分を感じていたからなのかもしれない。


(確かに私が平民の時、こんな貴族だらけのパーティーに誘われたとしたら、答えは断る一択だった気がする……――貴族ってそのぐらい恐ろしい存在だったし……今だって、貴族が着てるドレスやタキシード、装飾品にかすり傷の一つでもつけようもんなら、わりとガチで命が危ない……なんの比喩でも無く命が危ない――平民と貴族の身分差っていうものは、そのぐらい大きい)


 黙り込んでしまったリアーヌをどう思ったのか、ゼクスは騒ぎの中心からフォルステル伯爵の手によって引きずり出されたユリアとその後ろに続くベッティに視線を送りながら、大きく息を吐き出した。


「――余興はそろそろお終いかな? さ、挨拶回りに戻ろっか?」

「――はい」


 リアーヌは物言いたげな視線をベッティのほうに送っていたが、なにも口には出さずにゼクスの言葉に頷き、差し出された腕に自分の手を添えた。

 その瞬間、周りでゼクスたちの話に聞き耳を立てていた者たちがこそりとゼクスたちに話しかけて来た。

 ――紹介を挟まないまま初対面の人間が話しかけるのは非常識な行為ではあったのだが、同じ余興を共に楽しんだ者たちとして、少しの仲間意識が芽生えていたのかもしれない。


 ――ゼクスとしては、思いがけないところでより多くの繋がりを持てたことに驚きながらも、ホクホク顔で新しい人脈作りに精を出した。


(……――待って⁉︎ なんでこの人たち話しかけて来たの? 紹介人は⁉︎ え、こんなイレギュラーなご挨拶わんさか増えるとか聞いてないんだけど⁉︎ ――覚えらんないっ! 私、人の名前なんか一回聞いただけじゃ覚えらんないからっ⁉︎ ……え、みんな次も似たようなドレスと髪型で来てね⁉︎ 私が「初めまして」って挨拶する前に「お久しぶりです」って言ってね⁉︎)

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