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 レジアンナ神妙な顔つきになると念を押すようにもう一度たずねる。


「うん。 レジアンナがあの子にイタズラするのは嫌」

「――分かったわ。 今回は注意(・・)だけで終わらせてあげましてよ」

「……あり、がとう?」


(あれ? なんで私がお礼を言う立場に……? むしろ私的にはレジアンナを救う行為だと思っておりましたが……?)


「――その程度であればどこのどなた(・・・・・・)が出てきても、君が悪く言われることはない――どころか、キチンと注意を促せる女性だと印象付けられるかもしれない」

「フィリップ様……――(わたくし)大人の女性?」


 そう言ったレジアンナはイタズラっぽくポーズを決めながらたずねる。

 そんな態度に思わず笑みを漏らしたフィリップは、もちろんだとも……と言いながら恭しく頭を下げながらレジアンナの手を取った。


「君はいつだって魅力的な女性だよ、私のスカーレット」


 そう言いながらレジアンナの指先にキスを落とすフィリップ。


「まぁ……!」

「――先行ってよっか?」


 互いに見つめあい、二人きりの空気を醸し出し始めたレジアンナたちに、ゲンナリとした表情を浮かべたリアーヌは、ため息混じりにビアンカに提案する。


「……そうね?」


 その提案に同意したビアンカだったのだが、パトリックが躊躇(ちゅうちょ)した為、動き出すことはなかった。

 そして、そんな二人とは対照的にスムーズに歩き出し始めたリアーヌたちだったが、そんな二人を引き止めるようにクラリーチェが声をかけてくる。


「――リアーヌ様……!」

「……どうかされました?」

「あの……これからも……(わたくし)と……」


 思い詰めた様子で言葉を紡ぎ始めたクラリーチェにリアーヌが戸惑っていると、レオンが引き止めるようにその手を引きながら言葉をかけた。


「クラリーチェ良いんだ。 やめてくれ」

「大切なことです……!」


 リアーヌを放って言い争いを始めてしまった二人に、リアーヌは困ったように眉を下げた。


「……平気?」

「こういう場合の対処法はまだ……」

「――わりとありえない場合だから、正解の対処法は無いかもね……?」


 ゼクスもまた、始めて遭遇した『自分から話しかけてきておきながら、同行者と言い争いを始める』というレアケースに戸惑いながら肩をすくめて見せた。


「――君はそんなことしなくて良いんだ」

「けれどっ……この先……」


 レオンの言葉に悔しそうに下唇を噛むクラリーチェ。

 そんな姿を眺めていたリアーヌの胸にモヤ……とした嫌な感じが湧き起こった。

(……なんだろう? ゾワッじゃ無いけどヤな感じーーこれもギフトの力? ……でも今までの会話でこんなにモヤモヤするとこ無かったし……――なら、クラリーチェがこの会話で納得してないとダメなのかな?)


 リアーヌはそう考えるが、感じているモヤモヤが消えることは無かった。


(わたし)は……(わたくし)は……これから先もずっと……」


 そう呟きながら涙を滲ませた視線をリアーヌに向けるクラリーチェ。

 その視線を受けながら、リアーヌはその言葉が自分に向けられているのだとようやく気がついた。


(ああ! クラリーチェはどう転んだって第二王子派だから、中立です! って宣言した家と友達関係続けられるか不安なんだ……――だったら、私がかけるべき言葉は――)


「――私、クラリーチェ様とまたバラ園に遊びに行きたいです」

「ぇ……」

「あ、でも今度はちゃんと予定を立てて、あの時の皆様と街に遊びに行くのも楽しそうですね」

「――どれだけの護衛が必要なんだか……」


 隣から聞こえてきたゼクスのぼやきに、ぶっと口を膨らませながら冗談めかして反論する。

 現実なんかしなくても、そんな予定をみんなで立てるだけでも楽しいと思っていた。


「それも込みで予定を立てるんですぅー」

「そうですかぁー」

「……またみんなで行きましょうね?」

「あの……(わたくし)……」


 その言葉に戸惑うように視線を揺らすクラリーチェに、リアーヌはさらに言葉を重ね、自分の気持ちを説明する。


「――これって私個人の好みの問題なんですけど、レオン様よりクラリーチェ様のほうが好きです。 ですからクラリーチェ様が悲しむことはあんまりしたくないなと思っています」

(わたくし)はレオン様の婚約者ですが……」

「……さすがにそのくらいは覚えてますよ?」


 リアーヌはクラリーチェの言葉に、からかうような笑みを浮かべながら答えた。


「そ、そういう意味ではなく……」

「――ちゃんと分かってますよ。 でもクラリーチェ様が悲しむのはイヤだなって思ってます」

「……どうして」

「――だってお友達じゃ無いですか。 ……知ってました? お友達って作るの大変なんですよ?」


 少し声をひそめながら言ったリアーヌの言葉にゼクスがふふっ……と笑い声を漏らした。

 それにチラリと視線を走らせながらクラリーチェにも笑ってもらおうと笑顔を向けたリアーヌだったのだが――


「ふぇ……」

「えぇ……?」


 クシャリと盛大に顔を歪めたクラリーチェに目を見開くことになってしまった。


(――え、なんで? 今わりといい感じだったじゃん⁉︎ リアーヌ「嬉しいです……」とかの一言で一区切りな空気を感じ取っていたよ⁉︎)


「――クラリーチェ……その、一旦落ち着……」

「わっ、私はぁっ!」


 レオンが心配そうにかけた言葉を遮るように、くしゃくしゃの顔を隠そうともせず、ドレスを握りしめながら言葉を紡ぎ始めるクラリーチェ。

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