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 その考えに至ったリアーヌはサァ……と一気に顔色を悪くした。


(そうだよね⁉︎ これが入学して最初のパーティーなんだから、ここで初めて悪役令嬢が登場してくるんだよ! 悪役令嬢によって登場場所や言葉は変わるけど、要約すると「あんた最近、私の婚約者の周りウロウロしてる女でしょ? 私が婚約者なんで! そう言うのやめてくんない?」って感じの言葉かけてくるイベントが入るとこ――ゼクスだけは婚約者じゃなくて、ゼクスが魅了かけた女たちの集団だったけど……――まぁ、あのユリアは、すでにほとんどの悪役令嬢とのご対面は済んでると思うけど……――この後に及んでレジアンナたち、ユリアにイタズラ仕掛けたりしないよね……?)


 リアーヌが不安にその視線を揺らしていると、隣から「あそこみたいだね?」と声をかけられた。

 その声にパッと顔を上げると、案内してくれた給仕人が向かう先に、ラルフがこちらに向かって軽く頭を下げている姿が見えた。


 そして給仕人が丁寧な挨拶でその場を立ち去ると、それを引き継ぐようにラルフに先導され、リアーヌたちは王城の一室に入って行った――


 ◇


「――え、クラスメイト?」

「そう! それも招待もされてない、ただの(・・・)のクラスメイトよ⁉︎ 信じられる⁉︎」


 リアーヌはプリプリと憤るレジアンナの言葉に、それは……と首を傾げながら呻いた。


 パラディール家が準備した控え室にリアーヌたちが入った時、リアーヌの懸念を吹き飛ばすかのようにレジアンナやクラリーチェの姿がすでにそこにあった。

 二人の隣にはそれぞれフィリップとレオンがいて、ビアンカやパトリックたちの姿もあった。

 ホッと安堵の息を吐き出すリアーヌに、怒り心頭のレジアンナが、先ほどの騒ぎの真相を――ユリアの奇行を、捲し立てるように説明し始める――


「――それでその一緒に来ちゃった子はどうなったの? 入り口でバイバイ……?」


 それはなんか気の毒……と顔をしかめたリアーヌだったが、それに答えたフィリップの言葉にその瞳を大きく見開くことになる。


「……ムリを通して連れ込んだ。 だからこそのあの騒ぎだ」


 その説明に絶句するゼクスとリアーヌ。

 絶句しながらもリアーヌは(そりゃ騒ぎにもなるわ……)と、どこか他人事のように考えていた。


「――待ってください。 連れ込んだ(・・・・・)? 同行した、ではなく?」


 フィリップの言葉を聞いて何かに気がついたゼクスは、まさか……と思いながらも疑問を口にする。


「……言葉の通りさ。 連れ込んだんだ」


 フィリップの言葉にゼクスは改めて声を失い、その話を聞いたのは初めてなのか、フィリップとビアンカも揃ってに顔をしかめた。

 ――その反応を見て、ようやくリアーヌも気がついた。

 ――ユリアは招待状も持たないただの友人を王城のパーティーに同行させ、そして王家の許可も無しに勝手にパーティー会場に入れたのだという事実に。


「……え、そんなこと許されるんですか?」


(ワンチャン、ユリアが不敬罪に問われる可能性……)


「普通なわけが! 絶対に許されない行為よ! こんなことが罷り通ったら暗殺者なんて入れたい放題じゃないっ! こちらは王家の顔を立てて護衛の一人も連れて来ていませんのよ⁉︎」


 苛立ちのままに声を荒げるレジアンナ。

 普通であれば、すぐに誰かが宥めるような場面なのだが、その言葉が皆の心を代弁するようなものだったので、誰もレジアンナを止めようとはしなかった。


「……それほどまでに守護のギフト持ちは“特別”ですのね」


 ため息混じりに呟かれたクラリーチェの言葉に、部屋のそこかしこからため息じみた吐息がもれる。


「――あんな人が王族に入る……? 冗談じゃありませんわ⁉︎ 考えただけで虫唾が走る!」


 そう声を上げたレジアンナがギリギリと手にしていたセンスを握り締め、ようやくフィリップがその手を握りながらレジアンナに声をかけた。


「君の怒りは尤もだと思うよ? でもそんなに強く握ったら……こんなことで君がケガをするなんて耐えられない……」

「――ですけどぉ……!」


 にかわにピンク色の会話を撒き散らし始めた二人(バカップル)を、慣れた様子でスルーしながら、視線を交わし合い会話を再開させるリアーヌたち。


「――やっぱり王族入り……しますかね?」

「こうなった以上、入る以外の道は無いように思うけど……」


 ゼクスは首を傾げながら、自信なさげに答える。

 ビアンカやパトリックたちも同じ意見だと伝えるようにやんわりと頷いてみせた。


「レオン様……」

「大丈夫、これでいい。 守護のギフトを持っていようと、これであの女が国を揺るがすほどなのだと、多くの貴族に知れ渡った――いくら王妃が後ろ盾につこうと、国を揺さぶる者を貴族たちは決して認めない――そうなれば……それは私の味方が増えるということだ」

「そう、ですね……――お支えいたします。 いつまでも……」

「クラリーチェ……」


 手に手を取りあい見つめあう二人に、リアーヌは驚いた様に口を開く。


「――ぇ、増えた?」


 しかしその口は、ビアンカの足先への攻撃により、すぐさま閉ざされた様子だった。


(いやだって……真面目な話してる真っ最中にいきなり差し込んでくるから……――にしても……あれ? レオンやフィリップは攻略対象者でしたよね……? なんか……主人公に対する愛がカケラほども感じられておりませんが……――いや今さら持たれても困るんだけど……――なんだろうな……まだちょっとだけ、あのゲームに夢見てたかったな……)


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