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(煩わしいって……だってあの子がいなかったら主人公は……――主人公、ユリアは……? どうなるの? ――攻略対象者たちの好感度が分からない? ……そもそもこの世界のあの子のギフトって、好感度とかはっきりした数字で出てくる……? もし出てこないんだとしたら……しかも、今の現状攻略キャラたちの出現場所なんて自分の教室固定と言っても過言じゃないし……――そもそもユリアの立場だったら周りの人に「どこにいるか知ってる?」って聞けば、それで解決しちゃいそう……いや解決するよね? だってここはゲームみたいに選択肢からしか選べないなんてことないんだから……――待って? じゃあ……あのお助けキャラは、今のユリアからしたら、自分の行動の邪魔をしてくるだけの存在ってことになる……?)


「でもあの子、本気で怒ってたのに……」

「そうなの?」

「……はい」


 独り言のように呟いたリアーヌの言葉に反応したゼクス。

 しかしさすがに「はい、私本気で睨まれたんで!」とは答えられず、視線を逸らしながら曖昧に頷きかえした。

 その態度に違和感を覚えたゼクスは首を傾げながらカチヤたちに視線を流して説明を求めた。

 その視線に少し躊躇うように視線を交わし合うカチヤたちだったが、やがて息をつきながら口を開いた。


「――事実でございます。 ……その怒りを向けられていたのはリアーヌお嬢様でしたので、(わたくし)たちは、大変遺憾に感じておりました」

「あー……」


 微妙そうな顔を向けられてリアーヌは慌ててブンブンと手を振りながら答える。


「いや! 私だっていい気分ではなかったんですよ⁉︎ でも……あの子、友達のために――その、言葉がちょっと悪いんですけど……平民が貴族に楯突いたわけじゃないですか? ――それってすごいことなんですよ。 そこまで思ってくれてる人のこと捨て駒扱いしちゃうってのは……」


 庶民として暮らしたことのあるリアーヌだからこそ、貴族に楯突くリスクは恐ろしいほど理解していた。


「ーそこまで考えているかどうかは分からないけど……――でも、自分のためを思って苦言を言ってくれる人を邪険にする人だって世の中にはいるよ?」

「それは……そうなんでしょうけど……」


 ゼクスの言葉にしょんぼりと肩を落とすリアーヌ。


(でも、そんなのヤだぁ……あの子はいつだって主人公の――私の味方でいてくれたのに……)


 リアーヌはゲームの中で自分への助言を出してくれたり、悩む主人公の背中を押してくれたお助けキャラである親友(・・)を思い出し、しんみりと肩を落としていた。


「――うちとしては、今後はあの子との接触と極力避けてほしい。 ……まぁこれはボスハウト家の意向に従うけど……」


 ゼクスはそう言いながら、伺うようにカチヤたちに視線を向ける。

 無言で視線を下げるカチヤたち。

 感情的にはゼクスと同意見だったが、彼女たちにはここで許可を出せる権限など有していなかった。


「……今日みたいに向こうから話しかけられちゃったらどうしましょう?」


 首を傾げながらも、どこか希望を探すようにリアーヌはたずねた。

 悪意を向けられ腹が立ったのは事実だったが、それでもリアーヌとってベッティ・レーレンというお助けキャラ(・・・・・・)は思い入れがあるようで、あまり邪険な態度は取りたくないようだった。


「うちとしてはすぐに切り上げて欲しいけど……」


 ゼクスはそう言いながらカチヤたちの反応ををチラリと伺う。

 今回はその視線に釣られるようにリアーヌもカチヤたちを振り返った。


「――あくまでも個人の判断ですが、あのような暴言を吐く輩をお嬢様に近づけたくはございません」

「他人から聞かされたウワサ話を、そのまま鵜呑みにするような輩、お嬢様の今後にはカケラも必要ありませんとも」


 淡々としながらも怒りを滲ませる二人の様子に、リアーヌは唇をキュッとすぼめながらそっと視線を外した。


(……完全なるヤカラ認定――まぁ、私にとっては良い子じゃ無いんだけど……――それでもこれ以上嫌われたくはないなぁ……)


 いまだに内心でうだうだとしているリアーヌに気がついたのか、ゼクスは少しの間考えてから、ニヤリと悪い笑顔を一瞬浮かべ、その顔を取り繕いながら神妙な面持ちで口を開いた。


「――リアーヌも気をつけるって約束してくれないと、アウセレでの美味しい食べ物が減っちゃうかも……?」

「――絶対に気をつけますけど⁉︎」


 まごうことなき脅しの言葉に、リアーヌはゼクスに縋り付くように答えていた。


(おにぎりにお味噌汁に卵焼き! ――もうなんでもいいから日本食を食べさせて⁉︎ 無いなら我慢も出来るし諦めもつくけど、そこにあるって分かってるなら、もう我慢なんかしたくないっ!)


「――旅行、楽しみだね?」

「はい!」


 元気よく答えたリアーヌの頭の中からは、ベッティ・レーレンのことなどすっかり消え去っていたのだった……


「ちゃんと土産買ってこいよー」


 上機嫌な姉に向かい、ザームがどこか面白くなさそうに言い放つ。

 ――どうやら姉だけが海外旅行に行くのが面白く無いようだった。


「分かってる。 めっちゃ買ってくるから期待してて」

「……うまいもんだけ買ってこいよ?」

「任しとけ!」

「ソフィーナのもな」

「もちろん!」


「まぁ……お気を使わないで下さい……」

「そう言わずにもらってください。 アウセレの食べ物は美味しいんですよ!」


 このあたりのやり取りは手慣れた態度で対応していくリアーヌだったが、その言葉の内容に頬を引きつらせたゼクスがやんわりと口を挟む。

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友達のために平民が貴族に楯突くのは凄い ことだと主人公は思ってるけど、ヒロイン も友達も、学園内では『許される』行為だ と、庶民なのに勘違いしてるじゃないんで しょうかね。ヒロインの周囲って、貴族に …
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