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「――リアーヌ、放課後少し時間を取れまして……? そのゼクス様も。 ……お茶会を主催したいんですの……」


 レジアンナが眉を下げながらそう提案してきたのは、ユリアが立ち去り急足で動き出したレオンたちが、フィリップを中心に何名かのクラスメイトと急ぎ会話を交わし、やはり急足で自分たちの教室に帰っていくその後ろ姿を眺めた直後だった。


(あー……あの時間だけじゃ、今日こなす分のお話し合いが終わらなかったのかな……?)


 リアーヌはほんの少しだけレオンに同情し、クラリーチェ様の後ろ姿、なんか可哀想で痛々しかった……と、レジアンナの提案をこくりと頷いて受け入れた。


 ◇


「皆様どうぞお入りになって? 今回は緑茶という茶葉が手に入ったの。 ぜひ楽しんで頂けると嬉しいわ」


 出迎えてくれたレジアンナの挨拶に、リアーヌもマナー通りの挨拶を返しながらゼクスと共にサロンの中へ入っていく。

 場所はいつも通りパラディール家のサロンだったが、今回はお茶に合わせたのか、至る所に和を――アウセレ国の文化を感じる装いが施されていた。


(……いつもはフィリップが最初のお出迎えもしてるんだけど……――これ多分、レジアンナの教育が本格的に始まったってこと、なのかな?)


 マナーや作法には厳格な決まりが多数存在していたが、各々の家の個性や色が全く出さないのも社交界では嘲笑の的になってしまう――

 それはつまり嫁いだ家の個性や特色を学ぶ期間も必要ということで、レジアンナは現在その期間に入っているのだろうとリアーヌは推測した。


(……でもそうなると――どう頑張ったってこの二人はもう結婚まで待ったなしだよねー。 ここまで家の中のことを教えておいて「ごめん、こっちと結婚するね! だって運命だから!」とか出来ないでしょ……ミストラル家どころかパラディール家だって許さそう……――まぁゲームの中では、攻略対象の婚約者もれなく全員、なんかしらの問題があって、最終的に犯罪者になっちゃうからこそ出来た婚約破棄だもんなぁ……――その場で次の婚約者発表しちゃうあたり、ある程度の予定調和だった気もするけどー。 でも今回みたいに、婚約者側の問題が解消されてたり問題視されてないなら婚約破棄なんて当然許されないし、それでも主人公と結ばれたいなら、良くて第二夫人、通常は愛人……あーでも守護持ちだからなぁ……第二夫人が濃厚かな? ――王家や周りの貴族が許すのなら、が絶対条件で……――多分転生者のユリアはそう簡単に納得しないだろうけど……)


 そんなことを考えつつ、リアーヌはゼクスにエスコートされるがままに席に座り、いつもとは違うサロンの中を見回しながら口から漏れ出そうになるため息を笑顔で覆い隠した。


(……ユリアは多分、そのあたりのことで私にキレてるんだよねー……なんたっていないはずのゼクスの婚約者だし、レオン狙いなら、スクラップブック使ってクラリーチェ様との仲を取り持ったってことになってるし……――私にはその自覚はなかったけど!  でもユリアからしたら「お前、なんかやってくれてんなぁ⁉︎」ってなってもおかしくない……――ってか実際やらかしている自覚はあるから……そのあたりの文句については謝ることしか出来ないんだけど。 ――でも……ユリア、間違いなく転生者だよね? ここまできて『え? ゲーム⁇ なんのことですか……? とかいうパターン無いよね……?)


 リアーヌが内心で首を傾げている間に他の参加者たちも続々と席について行き、レジアンナがもう一度挨拶をして、お茶会が始まった。


(――やば。 ちゃんとしなきゃ! 練習中のレジアンナに迷惑かけるダメ絶対!)


 そう意気込んだリアーヌはおっとりとした笑顔を浮かべるとグッと唇に力を込め、周りの話に全力の相槌を打ち始めたのだった――




 和やかに進んでいたお茶会だったが、取り急ぎ決めてしまいたかったことをまとめた後は、どこかホッとした空気の中、取り留めのない雑談をしていたのだが、その内容が少しずつ変化していき、ついにはグチ大会のような内容に変化していた。


「……かの方が出席するなら出席するのやめようかしら……」

「――王家の主催だからねぇ……?」

「分かってますけれど……」


 ブスくれたレジアンナがフィリップにたしなめられ、さらに顔をしかめてみせる。


「フォルステル伯爵ご夫妻も出席なさるのでしょう……?」


 不機嫌なレジアンナにクラリーチェが気づかうように声をかける。

 その言葉にレジアンナは数回、目を(またた)かせると、ため息を吐き出しながら頷いた。


「――そうね、どのくらいの抑止力になるかは不明ですけれど……養父母の前でなら多少大人しくしているかもしれないわね?」


 そんな会話を聞きながらリアーヌはそっと首を傾げた。


(――あれ……? ゲーム内でのパーティで、フォルステル伯爵や夫人と話した記憶なんて無いんだけど……――でもそうだよね? 出席しないなんてことないよね? だって養女が守護のギフト持ちなんだよ? 今社交休んでどうするんだよって話だし……――え、じゃあゲーム序盤に必ずあるパーティでのトラブル――なんで助けに来てくれなかったの……? 攻略対象が現れたから? だから「まいっか!」 ってなっちゃったってこと……? ――なんてビジネスライクな親子関係……)


「……そういえば、先日受けた暴言に対する抗議の返事がようやく届いたと耳にしましたけれど?」


 止まってしまった会話の繋ぎなのか、ビアンカが話題提供とばかりにリアーヌに話を振った。


(そうだね……あんな返事なら一生届かなくて良かったんのにね……?)


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