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(やっぱり毒殺も監禁もやれちゃう家なんだ……――きっと私程度のご令嬢の一人ぐらい、簡単に行方不明にしてしまえるんだ……! レジアンナ経由で仲良くしてくれてる人たちにまで「具合が悪い時は呼び出しに応じ無くても平気なんですよ……?」とか言われちゃって……――やっぱあれは「そういうことにしてあるから話合わせろよ?」っていう圧力だったんだっ! ……さすがにレジアンナやビアンカは全部の事情を知ってるみたいだけど……二人がそれをみんなに説明して回ることなんかないだろうし……――なんだか昨日帰って家族とちょっと話して朝学校に来てみたら、あの一件は『ビアンカから呼び出されてついていったリアーヌが途中で具合を悪くしてしまい、たまたま通りかかったフィリップたちに保護された。 しかしフィリップたちも慌ててしまい侍女やメイドを付けることを失念して部屋に運び込んでしまった。 それはほんの一瞬の出来事だったが、それでもリアーヌの将来を考え、大慌てで事態の収束を計った』――ってことになっているらしい。 ……私ガッツリ密室で男性たちと過ごしたってバラされてるけど、その程度ならば許容範囲内らしい……――ってか、それでも私を貶めちゃった人は、もれなくフィリップやパラディール家をも貶めちゃうことになるから気をつけようね? っていう抑止力付きの事実なんだってさ)
ビアンカたちの後ろに続き、なるべくゆっくり歩きながらリアーヌは心の中で盛大にグチを吐き出す。
(あの日帰ってから、ゼクス様も交えての報告会をやって、全部ペロッと報告したはいいけど……部屋の中の空気物凄かったんだから……しかも、父さんたちよりヴァルムさんやオリバーさんたちの方が明らかに怒り狂ってて……でも父さんの不機嫌さだって相当なもので……――私、母さんが宥めてるのに顔を取り繕わない父さんとか初めて見た……)
そこまで考え、リアーヌは少し前を歩くゼクスの後ろ姿を眺め、軽くため息をつく。
(その後は父さんたちやヴァルムさんたち、ゼクスまで一緒になって話し合ってたのに、私には何にも教えてくれないでさぁ……――ヴァルムさんが任せて下さいって言ってたから任せておけばいいんだろうけど……――せめてあのエーゴンってやつだけには仕返ししてほしい……――レオンの……未来の王太子の側近だから、やっぱりうちじゃ手が出せないかなぁ……?)
そんなことを考えながらリアーヌはパラディール家のサロンまでノロノロと歩き続けた。




