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(え……なんでそんなウソ吐くの……? この人がレオンを騙してる……? いやでもエーゴンってゲームにも出てきたし……――スチルや立ち絵が無かったから姿は知らないけど、レオンのお付きのエーゴンは……――お前ギフト持ってねぇじゃん⁉︎ ゲームでは努力とその忠誠心だけでレオンの片腕にまで上り詰めた人として描かれていましたけれどもっ⁉︎ じゃあこの尋問めいたやりとりは全部ハッタリ⁉︎ ハッタリで自分たちの知りたい情報聞き出そうって魂胆⁉︎ ……性格悪! 最悪っ! フィリップも嘘が見抜ける人囲ってんだからその人を普通に貸せばいいだけなのでは⁉︎)


 リアーヌはその感情のままにキッとフィリップを睨みつけ、その怒りをぶつける。


(……どうすんだコレ。 逆にここで私が本当に「いやー実は私、別の世界からの転生者でしてー? この世界って、そこでやってた乙女ゲームと全く同じストーリーで進んでってるんですよねー……あ、乙女ゲームって分かります⁇」とか言ったって、このクソエーゴンが「ウソです」ってハッタリかまして終わりなんでしょ⁉︎ じゃあこの会話に出口なんか無いんですけど⁉︎ どうやったらさっさと解放されるんですかねぇ⁉︎)


「……君は一体なにを企んでいる?」

「――企んだりとかは特になにも……?」


(……強いて言うなら、ゼクスのルートには行かないでほしい、くらい……――最悪、本当に最悪の場合だけど、ゼクスルートに入っちゃったら円満婚約破棄には応じるから、家巻き込んでの断罪イベとか処刑される系エンドにならないでほしいくらい……――どうせそう正直に答えたって言われることは一緒だろうけどー!)


「……ウソです」


(はい出たー! もはやお前じゃなくてもいいだろその役目……スピーカー――は存在してないから……おしゃべりオウムでも代わりに置いておきなよっ!)


「――レオン」


 フィリップがそう声をかけると、ため息をついたレオンが急に質問を変更した。


「――ユリア・フォルステルとはどんな関係だ?」

「……どんな?」

「質問に答えろ。 ユリア・フォルステルとどんな取引をした!」


 リアーヌはなぜユリアのことでこんなにも責められているのか理解が出来ず、首を傾げながら慎重に答えを口にした。


「取引なんてしてません。 関係もほとんど……何回かお話をしたことはありますが……――(うち)はフォスルテル伯爵家とは仲良くしないと決めたので、私があの子と仲良くすることはありません」


 そんなリアーヌの答えに困惑したように顔を見合わせるフィリップたち。


 ――実はこの部屋の中には嘘を見抜けるギフトを持つイザークもいて、リアーヌの答えを揺さぶりながらその発言をウソかどうか判断していたのだが、そのイザークが先ほどのリアーヌの発言にウソはないとのハンドサインを出したためだった。

「ユリア・フォルステルやその周辺に私の素性を話したことがあるか?」

「……ありません」


(――無いよね? 大丈夫だよね⁇ そもそもレオンのこと喋るのはビアンカやレジアンナたちか家族……あとはゼクス様だけだし……――うん。 絶対に私は口を滑らしたりしてない!)


「ウソです」

「――この人の言葉の方がウソですっ!」


 エーゴンの態度に腹が立っていたリアーヌは、とうとう指を突きつけながら不満をあらわにする。


 ――そんなリアーヌの態度に顔を見合わせるレオンたち。

 そしてフィリップが軽く首を振りながらレオンに話しかけた。


「――レオンもういいんじゃ無いか?」


 子爵家――とはいえ、その家は今もなお正しく王家の血が流れている王族の分家筋に当たる由緒ある家の一つ、ボスハウト家のご令嬢だ。

 しかも、かの家の最近の勢いは凄まじく、すでに派閥同士のパワーバランスが逆転しているところすら出始めているほどだ。

 ――レオンや自分の今後のことを考えても、完全に敵に回られるわけにはいかない家、そして人物だった。


「だが……」

「当初の目的は果たした。 彼女は情報漏洩はしていない――ならば速やかに解放すべきだ」

「……情報漏洩?」


 リアーヌは急に目の前で始まった会話に首を傾げながらも、もう解放されるかもしれない……⁉︎ と少しだけ安堵の息を漏らしていた。


 あまり納得がいっていないのか、大きく鼻を鳴らしたレオンがリアーヌから距離を取る。

 そんなレオンに肩をすくめながら、フィリップはリアーヌに簡単な説明をしていく。


「――この間、また一騒動あってね……知ってるかな?」

「……――正直、その関連は毎日のようになにかしら聞きますので……」

「あー……確かに? ――君たちが集団で具合を悪くした日があっただろう?」

「あー……――あれは嫌な事件でしたね……?」


 リアーヌはあの時は一人矢面に立たされたことを思い出し、ギュッと顔をしかめた。


「……その日も彼女はレオンの教室に現れたんだ」

「うわぁ……」

「……いつも入るはずのクラリーチェ様がいなかったからなのか、その日の彼女はとても饒舌だったらしい」

「……はぁ」


(……まるでいつもは饒舌じゃ無いみたいな言い方するじゃん……――あの人、人の話なんか理解できてないほどには自分の話ばっかり言ってるってウワサだけど……?)


「――だからなのか……その際、ユリア嬢がレオンの身分(・・)について口を滑らせたんだ」

「……――つまり?」

「――直接的な言葉は、それを口にする前にそこのエーゴンが押し留めたんだけど……“私ならあなたの役に立てる”“ずっと望んでいることが叶う”――などとのたまってくれてねぇ?」


 とびきりの笑顔でそういったフィリップ。

 ――だが、その笑顔から滲み出る圧にリアーヌはゾクリと背筋を震わせていた。

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