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成り上がり令嬢暴走日記!  作者: 笹乃笹世
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「お嬢様のギフトは『コピー』であると、学園が――ひいては国が認めているんです。 である以上、そこからどれだけ調べてもそれ以外のスキルを持っている、だなんて話にはなりません……通常は」


 その言葉を引き継ぐように、ゼクスが大きく頷きながら口を開く。


「――にもかかわらずこのウワサはすでに、ある程度出回り始めている――つまりリアーヌが虚偽のギフト名を申告している、もしくはダブルやトリプルなのに他のギフトを隠し持っている――って疑いを持った人物が三週間以上前に現れていないと計算が合わなくなるんだ」

「――そうなると……早い、んでしょうか……?」


 ゼクスの答えを探るようにリアーヌは首を傾げる。

 自分では早いのか遅いのか、判断がつかないようだった。


「早いねぇ。 入学して1ヵ月程度しか経っていない……確認を取りに来たのが2週間前だったとしても――たとえその確認が根拠のない思いつきをそのまま口にしていたんだとしても、残りの三週間でなんの疑いもない所からリアーヌが何かしらの回復ギフトを持っていると疑わなきゃいけないんだ……――普通は疑うことすらしないと思うよ? だってリアーヌはこの学園内、多くの人たちの前でコピーの能力を披露してるんだから……」


 ゼクスの言葉にオリバーが頷き、さらに説明を付け加える。


「それに、かのお方は専門学科の生徒です。 騎士科には……この訓練所(・・・)にはほとんど足を運んではおりません」

「……つまり?」


 そのウワサとこの訓練所の関係が上手くつながらず、リアーヌは首を傾げながら詳しい説明を求めた。


「一体いつ、どんな光景を目撃して、そんな考えに思い至ったのか――の説明がほとんどつきません」

「あーなるほど……」


 リアーヌが思った言葉をそっくりそのまま呟いたのは弟のザームで、リアーヌは改めて血のつながりを強く強く感じた。


「そうなんですよねぇ……こっちでもそんな話は聞いてないですし……」


 ゼクスはオリバーに向かい、困ったように肩をすくめる。


「……えっと、それじゃどうして……?」


 リアーヌからの質問に視線を交わし合うゼクスとオリバー。

 先に口を開いたのはゼクスのほうだった。


「……考えられる可能性として有力なのはフォルステル家の差し金……かな?」


 ゼクスの答えに同意するように頷きながら、オリバーも考えを口にした。


「その説が濃厚ですね。 となると、ネズミや見張り役が入学している可能性も十分に考えられます」

「……――見誤ったかなぁ……あの家がここまで露骨なことするとは……」


 嘆くようにそう言って、ゼクスはクシャリと髪を乱暴にかきあげた。


「――フォルステル家がお嬢様の能力(・・)のことを知っていたと仮定するならば、可能性としては……――相性としては最悪でしょうから」


 サンドラやエドガーが同席しているからか、オリバーは話を少し事情をぼかしながらゼクスに伝える。

 そしてその瞬間、顔を引き締めサンドラに視線を走らせたエドガーの姿に少しだけ満足そうに目を細める。

 秘匿された情報があることを理解し、サンドラがまたうっかり口を滑らせないようにと注意を向けた――

 オリバーとしては満足な対応だった。


「……露骨にやらざるを得なかった」


 ゼクスの言葉にリアーヌは理解が追いつかずに首を傾げ、オリバーに視線を向ける。

 しかし、オリバーが口を開くよりも先に言葉を発した人物がいた。


「……あー、なるほど?」


 リアーヌはそんな弟の言葉に驚愕し目を見開いたのだが、慌てて表情を取り繕いカクカクと曖昧に頷いて見せた。


「……だ、だよねー……?」


 しかしそんな演技などオリバーやゼクスの目をごまかせるものではなく――ザームや事情を理解していないはずのエドガーたちにまで呆れた眼差しで見つめられた。


「お嬢……」

「……あとでちゃんと説明するからね……?」

「お願いしまふ……」


 そんな会話ののち、いつものように回復をかけいつもと同じように学院を後にする。

 いつもと違うのは、護衛のエドガーがサンドラを家へと送っていくという任務を与えられ、ゼクスが家へと招待されたことぐらいだろうか。



 ――場所をボスハウト邸に改め、詳しい説明を聞く。

 その内容は、フォルステル家がリアーヌのギフト『コピー』の内容を、的確に理解しているのでは? という話から始まり、であるならば『守護』のギフトをコピーされてしまうかもしれないことへの懸念などから、フォルステル家がリアーヌに対して警告じみた攻撃を仕掛けてきたのだろう……というものだった。


(……私ってば主人公のギフトすらコピーしてしまえるんです……? ――あれ? ここにきてまさかの私がチートキャラ……⁉︎)


「しかし、それを理由にフォルステル家がちょっかいをかけてきたのだとすれば、残念ながらコピーは無理でしょうね……」

「――えっ⁉︎」


 ため息混じりのゼクスの言葉に驚きの声をあげるリアーヌ。


「……リアーヌ、ギフトコピーの条件覚えてる……?」


(ギフトコピーの条件……――そういえばそんなものがあったような……――あ! 本人の同意がなかったら無理じゃん⁉︎)


「コピーさせてもいいって同意をもらわないと出来ない……」

「あ、良かった。 ちゃんと覚えてるよね……? さすがにね……?」


(――私のチートキャラ説、ほんの一瞬の輝きだったな……)

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