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成り上がり令嬢暴走日記!  作者: 笹乃笹世
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 ――二人はウワサについて話し合うため場所を移し、騎士科のボスハウト家が借り受けている部屋にやってきていた。

 部屋の中にはザームやオリバー、そしてエドガーとサンドラの姿もあった。


「……私がどこかでなにかやっちゃったんでしょうか……?」


 部屋に入るなり肩を落とし、不安そうにたずねるリアーヌ。

 そんなリアーヌにゼクスはうーん……と考え込みながら一つ一つ確認していく。


「俺の知らないところで、誰かを回復させちゃったりした?」

「学園では一度もありません……でも、近所の店では何回か……――肩もみとか腰をさすってあげるついでとかで……」


 治したこと、本人にも言っていないですけど……もしかしたら気が付かれてたかも……? と、小さな声で続けながらリアーヌは不安そうにゼクスを見つめた。


「……それはお抱えの人たちだよね?」

「はい……」

「――そこから……? いやでもなぁ……?」


 ゼクスは大きく首を傾げながら首筋をなでつける。

 そこに眉をひそめたオリバーが声をかけた。


「……またですか?」

「――はい」

「やはり多いですね……」


 神妙な顔つきで話し合うオリバーとゼクス。


 新学年になり一ヶ月と少し、ここ最近リアーヌに対して先ほどの男子生徒のようにリアーヌと専属契約を交わそうとする騎士科の生徒が現れはじめていた。

 数にしてみれば片手で数えられる程度のだとしても、一人たりとも来るはずのない生徒たち――しかしリアーヌたちはその原因すら把握できていなかったのだ。


 そんな時、顔色を悪くしたサンドラが、両手を胸の前で握り締めながら一歩前に進み出る。


「……サンドラ?」


 隣に立っていたエドガーが訝しげに見つめる中、サンドラはガバリと大きく頭を下げる。


「――ごめんなさい! あの……きっと私のせいです!」

「……お前⁉︎」

「ご、ごめんなさい……だって……」


 真っ先にサンドラに反応したのはエドガーだった。

 頭を下げるサンドラの肩を掴み強引に顔を上げさせると、混乱した様子でサンドラを見つめている。


「――詳しい話を聞かせてもらえる?」


 そんなエドガーを遮るように、ゼクスがサンドラに問いかけ、エドガーはのろのろとした動作でサンドラから手を離した。


「――はい」


 コクリと大きく頷いたサンドラの話によると、数日前ここに来る途中で新入生らしき女生徒に声をかけられたそうだ。

 その女生徒はリアーヌを探していると言い、サンドラがいつもやってくるのはもう少し後だと伝えると、その女生徒は「治療してくれるって約束したのにな……」と言ったらしい。

 その言葉でサンドラはその女生徒がリアーヌの知り合いで、リアーヌのギフトの事情を知っているのだと思い込んでしまった。

 そこで「どこかで待つなら伝えておきますよ」と声をかけたのだが、その女生徒からの答えは「別に騎士科の生徒じゃないから、明日でも問題ないの。 ありがとう」と言ったもので、そう言ったきりその女生徒はその場から立ち去っていった――とのことだった。


「……だから私、すっかり忘れてて……でもエドガーから最近そういう人たちが多いって聞いてて……――それでようやくその時のことを思い出して……――ごめんなさい! 私ちゃんと否定しなきゃいけなかったのに……」


 涙目になりながら唇を噛みしめ後悔を滲ませる。 そんなサンドラの肩をエドガーがそっと優しくさすった。


「――顔は覚えている? もう一度会えばその女生徒が誰だかわかるかな?」

「……あ、名前分かります」


 ゼクスの質問にサンドラは少し気まずそうに答えた。


「えっ?」

「あの……名乗られはしなかったんですけど、後日……――有名人ですし」

「有名人……?」


 サンドラの答えにゼクスやオリバーだけではなく、ザームやエドガーまでもが視線を交わし合っている。


「はい。 ユリア・フォルステル様です」


(……主人公?)


「――間違いない?」


 大きく目を見開きオリバーと視線を交わし合うゼクスは、念を押すようにサンドラにたずねる。


「はい……間違いありません。 あの後名前や貴族だってことを知って、ああ、貴族ならやっぱりご友人だったんだ――って納得したので……――あの申し訳ありませんでした!」


 そこまで話したサンドラは、再び顔を歪めると勢いよく頭を下げる。


「……肯定はしていない――ならば最悪な事態ではないよ」

「――次からはしっかりとした対応をしていただきます」

「は、はいっ……!」


 ゼクス、オリバーと声をかけられ、サンドラは背筋を伸ばしながらもどこかホッとしたような様子で返事を返した。



「しかし……それがいつのことだか覚えている?」

「えっと……声をかけられたのは二週間くらい前です」

「――三週間は経っていない?」

「……たってないと――多分、金曜日だったと思うんです」

「そう……」


 サンドラにいくつかの質問を投げかけたゼクスはなにやら思案げな顔つきでオリバーと視線を交わし合う。


「……早すぎます」


 ポツリと漏らしたオリバーの言葉に、リアーヌはこてりと首を傾げた。


「……三週間もあったらウワサ話くらい広がってしまうような……?」

「ウワサ話になるのが、早すぎるんです」


 オリバーからの訂正に、リアーヌは今度は反対側にこてりと首を倒し、頭の周りに疑問符を浮かべた。

 そんなリアーヌにオリバーは苦笑を浮かべながら説明する。

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