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成り上がり令嬢暴走日記!  作者: 笹乃笹世
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「ええ。 なんでも「同年代の子にお世話してもらうなんて、私そんな人間じゃないもの」と、言っていたとか」

「……――守護のギフトを持っているのに……?」


 ゼクスの答えに、レジアンナはとうとう眉をひそめ、理解できない……と首を傾げた。


「人にお世話していただくなんて、恐れ多い……と言ったとか言っていないとか?」


 あくまでもウワサです……と続けたゼクスの言葉に、心当たりがあったリアーヌは、あー……と、小さな声をもらした。


「……そう思うもの?」


 全く同じというわけではないが、境遇が少し似ているリアーヌとユリア、納得するような仕草を見せたリアーヌに、ビアンカはその思考を聞いてみたかった。

 たずねられたリアーヌは周りを見渡し、皆が自分の意見を待っていることを理解すると、モゾモゾと居心地が悪そうに座り直しながら、遠慮がちに口を開いた。


「……私の場合で言うと、お世話してくれることになった人たちが、最初は父さんの上司、とか父さんより長く働いてる人たちだったから……その人たちからある日突然“お嬢様”って呼ばれるようになっちゃって……――それに正直なトコ、私なんかより侍女さんたちの方がよっぽどお嬢様っぽくって……」

「……あなたも断った?」

「とっさにね? だって……やっぱり私に向かって頭を下げてる人たちは、ちょっと前まで父さんよりも偉い人たちで、実際何人かは私たちのほうが様つけで呼んでて……」

「……あなたの言いたいことは――まぁ、なんとなく? ――……ちなみにあなたはどうして考えを変えたのかしら?」

「……変えたわけでは……」


 ビアンカからの質問に、リアーヌは答えにくそうに言葉を濁す。

 しかしビアンカだけではなく、ほぼ全員の視線が続きを促していることに気がつき、渋々その続きを口にした。


「その、ヴァルムさ……――うちの執事が……もうそれは素敵な満面の笑顔で「よろしゅうございますね、お嬢様?」って……」


 リアーヌがヴァルムに基本的に逆らわないことを知っているビアンカは、吹き出すのを堪えながら、フォローの言葉を口にする。


「……――有無を言わさぬ笑顔ってありますものね……?」

「超ある。 あの笑顔の時は父さんだって逆らわない……」


 はからずも子爵家のパワーバランスを垣間見てしまった一同は、気まずそうに視線を交わし合いながら、探るように会話を再開させる。


「――通常は家の面子のためにも教育を施す。 それが間に合わないならば人をつけるか、入学の見送りだろうが……」


 フィリップが呟いた言葉に、その場にいた多くの者たちが(なぜそれらのどれも選ばなかったのか……)と心の中で続けた。

 ――そんなとき、ゼクスが静かに口を開いた。


「――では、ラッフィナート商会(・・)からも情報を一つ」


「――ほう……?」


 その言葉で、今度は裏の取れている確実な情報だということをすぐさま察知したフィリップは、ギラリと瞳を輝かせゼクスを見据えた。


「彼女、入学ギリギリまで自分の家で暮らしてますよ」


 ゼクスの言葉にザワリ……と、大きなざわめきが部屋の中に広がる。


「……なんだと?」


 不可解な顔で不可解そうな声を上げたフィリップに、肩をすくめただけで返したゼクス、そのままさらに詳しい情報で補足した。


「それが養子になる条件の一つだったようで」

「……常識が無いないのはそういう事情だから、か?」


 呆れたように吐き捨てるフィリップ。


「――ではなぜ入学を許したんでしょう……?」


 戸惑うようなパトリックの疑問に、フィリップが鼻を鳴らしながら口を開く。


「なぜか……は不明だが、今の問題のほぼ全ての原因はフォルステル家にありそうだな」

「――他に横槍を入れられる前に、彼女を手に入れたかったんでしょうねぇ……」


 彼女が住んでた村、フォルステル領ですから……と続けながら、紅茶を口を含むゼクス。

 その言葉に目を釣り上げたのはレジアンナだった。


「呆れましたわ……そんな理由だけで、なんの教育も施していない方を伯爵家の一員だと認めましたの⁉︎」

「――認めざるを得なかった、だろうな……」


 フィリップは宥めるようにレジアンナの手に自分の手を重ねながら言った。


「確かに……その状況で、ほかの家に彼女を奪われていたとすれば伯爵家としてはいい赤っ恥ですね……?」


 パトリックの言葉に皆が沈黙という手段でその言葉を肯定した。


「――つまり今の現状は、他家(たけ)に付け入る隙を作りたくなかったフォルステル家の勇み足の結果、ということか?」

「……まさか命綱となりえたはずの侍女を断られるとは考えていなかったんでしょうねぇ?」

「あの年頃の娘一人、言いくるめられませんか……」


 フィリップ、ゼクス、レオンと、攻略対象の三人が、立て続けに冷たい声色で吐き捨てる姿を見て、リアーヌは少しの恐れとともに、ある疑問に内心で首を傾げていた。


(……なんでこの人たちの中でのユリアの評判、こんなに低いの……? 恋愛感情は置いておいたとしても、嫌がらせされてたら婚約者そっちのけで助けちゃうぐらいの存在になるはずなんですけど……? ――え、元々裏ではこんな会話が繰り広げられていた……? それで表ではあのキャッキャッウフフだったの⁉︎ ……これ、ゲームスタート時の優しさは80%ぐらい打算だったんじゃ……? え、やめてやめて。 乙女の夢ぶっ壊しにこないで⁉︎)

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