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成り上がり令嬢暴走日記!  作者: 笹乃笹世
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 ◇


(……もういっそ、新しい甘いお菓子作り出したほうが手っ取り早い説……。 この世界に無くて私が知ってるもの……――ショートケーキが一般的じゃなかったんだったら、ケーキはわりと狙い目……?)


 集会場からの帰り道、そんな考え事をしながら歩いていく。

 そして考えをまとめるように大きく背を伸ばすした。

 顔を上げたリアーヌの目に、この村ののどかな風景と、そしてその奥にそびえ立つここよりもずっと高い大きな山が見え――


(――ケーキ……山……そしてこの村には栗があって……? これはもうモンブラン一択なのでは……⁉︎ あ、でもあの形状のクリームって専用器具がないと無理だったりする……? ーーまぁ、どの道作るのは私じゃなくラッフィナート家の料理人で、私が出すのは口だけだからな……)




「おおー! 意外になんとかなるもんですねぇ⁉︎」


 出来上がったモンブランを見て瞳を輝かせたリアーヌに、料理人や手伝ってくれたたものたちがホッとしたように顔を綻ばせる。


 ラ アンナやオリバーまでもが意見やアイデアを出し合い、作り始め、完成させたモンブラン。

 それはリアーヌが想像していた以上に、モンブランの形を再現していた。


(あの細くてシュルシュルっとした上のは無理かな? って思ってたけど……やろうとも思えば道具がなくたってできるもんなんだなぁー)


 リアーヌは邪魔にならないよう端のほうで紅茶と共にモンブランを楽しみつつ、モンブランの大量生産に取り掛かった料理人たちやテキパキと動くメイドたちを見つめ感嘆の吐息をもらした。


 リアーヌから口頭のみで作りたいケーキの説明をされた料理人は頭を捻りつつもマロンペーストを作りあげると、パラフィン紙のようなものを用意し、クリームを絞る要領でモンブランの上のデコレーションを作り上げてしまった。

 しかしそれでも、手伝ってくれた村の子供たち全員に配るほどの量を作り上げるのは時間がかかり過ぎる……という話になり、そこで手を挙げたのがアンナやカチヤ、コリアンナのリアーヌ付きの使用人たちだった。

 そして手を挙げていなかったはずのオリバーまで巻き込んで、料理人の教えをこいはじめ、今では立派に即戦力として活躍している。


 ラッフィナート、ボスハウトの優秀な使用人たちの活躍により、あっという間に子供たちに配るケーキは出来上がっていた。

 しかも作り上げたのは子どもたちに配る分だけではなく、ゼクスたちにまで差し入れる分や自分たちも味わう分まで確保して見せた。


(いやぁ……私が手なんか出さないほうが早く出来るのは予想してたけど、本当に口しか出してないのにモンブランが出来上がってしまった……――あ、モンブランじゃなくモンドゴラって名前にしたんだった。 当たり前だけどこの世界にはモンブラン山が無いもんでさぁ……アンナさんに『それでこのケーキはどのようなお名前なんですか?』って聞かれた時あせったよねぇー……――今考えれば、あの時「これはモンブラン!」って言い張ればモンブランになったのかな……? ――でもモンドゴラ山ってこの村があるこの山の名前で、ケーキの名前を教えた時洗い物とか手伝ってくれてたこの村の人たちすごい喜んでたし! 語感もちょっとモンブランに似てるし! 私、わりといい仕事したと思ってるよ!)


 リアーヌはそんな自画自賛気味なことを思いながら、モンドゴラ口いっぱいに頬張った。




(――ミッションコンプリート! すごい美味しかったから心配はしてなかったけど、子供たちものすごい喜んでくれた! デリアちゃんたちにも『王都のケーキ美味しい!』って、花丸笑顔もらえたし! ――……大丈夫。 すぐに王都でも売るから。 そしたら正真正銘王都のお菓子になるから! 誤差みたいなもん! ゼクスが目を輝かせて『これ王家に献上しようね?』って言ったぐらいだから絶対早い! 信じて! ――あ、でももしかしたら献上するって言い出したのは、ケーキにこの山の名前を付けたからなのかも……?)


 知的財産を保護する法律のないこの世界で、目新しいスイーツや食べ物――小物やさまざまな道具をなどは苦労して作っても、売れると判断されれば、すぐに複数の店に模倣され勝手に売られてしまう。

 それを防ぐため、多くの貴族たち商人たちが取る手段が王家へのご献上(・・・)だった。

 王家――つまりは王族に送られるものの数々は、王族たちの安全を守るため、いつ・誰が・どんなものを献上したのか、その全てか記録、保存されている。

 そのシステムを逆手に取った貴族や商人たちは売れそうな新商品が出来上がると、なるべく速やかに献上し、その商品は自分の家、店が一番最初にこの世に送り出したことの証拠とするのだ。

 なにせ相手はこの国一番の権力者である。

 これ以上ないほどの保証人だった。

 ――そして、こういった目新しい食べ物には王族に献上するメリットがもう一つ存在していた。

 今回でいうとモンブラン――モンドゴラを食べた王族の内、誰か一人でも「もう一度食べたい」と口にすれば、その日からモンドゴラは王家御用達(・・・・・)の看板を掲げることができ、そして商人たちの間ではその看板があれば売り上げは通常の三倍にも跳ね上がると言われていた。


(……そういえばどこからか王家御用達の話を聞いたおっちゃんやおばちゃんたちが、売り上げ三倍に目の色変えて、俺たちも目指そう! って盛り上がってたけど……――この村でも売り上げ三倍とかなるのかなぁ……? ――ま、確実に花園での売り上げは伸びそうだし、トータルの収入が増えれば結果この村も潤うから問題ないかー。 それに最近、村を出てた人たちが戻ってきてるから仕事はいくらあってもいいって話だし……――にも関わらずフルーツ農園や炭屋はまだまだ人手が足りないって話してたな……? 仕事は無いよりあるほうが全然いいけどねー)

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