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成り上がり令嬢暴走日記!  作者: 笹乃笹世
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「――苦情が来ても守ってくれます?」

「もちろん!」

「……あとで責任取れとか言わないですよね……?」

「言わないよ⁉︎ ――え、俺のこと、そういうことする奴だと思ってたの⁉︎」


(――わりと)


「――いいえ? まさか。 とんでもない」


 リアーヌは美しい微笑みを浮かべながら楚々とした態度で答えた。


「……思ってたんだ」

「……今は信じてます?」


 すぐさま演技だと見抜かれたリアーヌは、今度はヘラリ……と、ごまかすような笑顔を浮かべて答える。


「そっか……――うん。 俺もっと頑張るね……?」


 そう決意したようにつぶやいたゼクスの真意は分からないリアーヌだったが、それをごまかすように首を傾げながら答えた。


「あー……頑張れ?」


(……その言葉を胸に、たとえこの先この婚約を破棄するようなことが起こっても、私に責任なんか求めないでくださいね⁉︎ 絶対ですからね⁉︎)


「――どうなさいますか?」


 リアーヌの後ろに控えていたアンナが、最後の確認度ばかりに声をかけ、リアーヌの答えを待つ。


「えっと……参加しようかなって。 おばちゃんたちとも話したいし……」

「――かしこまりました」


 リアーヌの答えに、大きく頷きながら恭しく頭を下げるアンナ。


 準備を整えたリアーヌたちは、話し合いを持つため少々騒がしい応接室の外へと足を踏み出したのだった――



 リアーヌたちが姿を見せた途端、村人立 たちは口々にリアーヌやゼクスに声をかけながら、思い思いの方法で挨拶を始める。

 そのせいで元々ガヤついていた室内はさらに騒がしいことになり、苦笑を浮かべたディーターやディルクが村人たちを静かにするように声をかけ、なんとか騒ぎを治めていく。


(――いや、前回でだいぶ仲良くなれたと思ってはいたけど、ここまで熱烈な歓迎を受けるとは……)

 

 前回の話し合いとは全く違う集会場の空気に戸惑いつつも、リアーヌは嬉しそうに笑顔を浮かべる。


 そして始まった話し合い。

 話し合う内容自体は、すでにゼクス側にも報告が入っていたようで、なんの問題も齟齬もなく進んでいく。

 どの話し合いも、ゼクス側が準備してきた結論を言い渡された後、ほんの少しの疑問点や細かい確認作業をした程度で終わっていく。

 その上で「あとは実際にやってみてから――」「視察してから――」などという場合のスケジュール調整のための話し合いに多くの時間を割いていた為、リアーヌは雑談に対する返事や、その延長線として「こういうのが欲しいな?」「こっちのほうが良さげ」などと口を挟む程度の助言をしたぐらいだった。


(――私これちゃんと役に立ってる? 追加で出された栗のショートケーキを頬張ってその美味しさをみんなに伝え、眉間にシワを寄せたおっちゃんたちを和ませるのが最大の仕事だったと言っても過言ではないように感じていますが……?)


 リアーヌがやった仕事らしい仕事といえば、母リエンヌから頼まれている寒さに強い植物――できれば冬に花を咲かせるもの――を探して欲しいと依頼を出したことだろうか?


(あとは……みんなの相談にはわりと答えたかな? ――『嬢、ご令嬢ってどんな菓子を好むんだい?』って質問に『私は(・・)こんなお菓子が食べたい!』って答えた程度だけどー……――私も一応ご令嬢だし。 ちゃんと答えてたし……)


 今回の話し合いで決まった大きな事柄といえば、どの店舗も各家々も現金収入が増えたため、来年からの税金の支払い方法が物納から現金に変更になったこと、そして木材の販売が条件付きではあるが、可能になったことぐらいだろうか。

 プラスして、この集会場を正式に村のものとして扱いたい旨が村長のディーターから申し入れられゼクスがそれを了承した。

 最後にラッフィナート男爵邸がこの村に建築されること、それに伴い人手を募集することがゼクスから村人たちに告げられ、その日の話し合いは幕を閉じた。


(元々ここだって集会場だったのに、前任の代官が暮らすからってリフォームさせられたらしいじゃん? ――……前任者がクズなら任命した代官もクズとか……――まぁ居住スペースは物置に早変わりだからムダじゃなかったことだけが救い――なのかな?)


 前任の代官は労働奉仕はさせても、それに必要な備品などのほとんどを出し渋っていた実績があった。

 そのためラッフィナート男爵領となり、必要な備品が備えられつつある今、これまで使っていた備品倉庫ではとても収まりきらない備品がこの村に集結していた。


(……お金取ってたにしたって、なんで人数分の備品が揃ってないのかと……――絶対どっかとグルになって金儲けできるシステム作ってたよ……――もしくは村人が壊したとか言って売り払ってる! ――前の領主の関係者なんか、全員ろくなヤツじゃないって知ってたけど――本当正真正銘のろくでなしなんだなって……)


 明るい顔で未来についての話し合いを重ねる村人たちを眺めながら、リアーヌは気がついてしまった事実に苦々しいため息を噛み殺すのだった。


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