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成り上がり令嬢暴走日記!  作者: 笹乃笹世
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「あとは――その……それのテープみたいなものって出来ますか?」

「テープ……?」

「このリボンみたいに巻いてあって、でも後ろはノリが付いてる――みたいな?」

「……紙テープではいけない?」

「あー……じゃあ紙テープでも……?」

「……――ゆくゆくはノリが付いたものを販売できるように頑張るよ……?」


 あからさまにテンションを低くしたリアーヌに、ゼクスはクスクスと笑いながら提案した。


「――ぜひ! あ、柄も付けてくださいね? ドットとかフルーツとか星とか――あ、花やハートはマストです!」

「オーケー、オーケー……まずは数種類から始めよう――……正直、それをどう使って、なにがしたいのか、俺にはさっぱりだ」


 ゼクスのその言葉に、キョトンとした表情を浮かべたリアーヌだったが、急にハッとした表情になり、アゴに手を当て下を向いてなにかを考え始めた。


(そっか……シールやマスキングテープが無いんだから、それを使ってデコる方法だって皆分からないんだ……――そもそもこの世界にはスマホもネットも無いから情報の発信、取得、交換なんてほぼ口コミになるわけで……)


 その時リアーヌの脳裏にフッと、日本の文房具店の店内の映像が思い浮かんだ。

 そこには、商品の説明や使用例が書かれたポップで飾り付けられている商品が多数存在していた光景を思い出していた。


(――そっか。 誰も知らなくっても使い方の説明みたいなのがあれば、少なくても買った人は情報を知ることができるのか……――あ、商品いくら以上お買い上げで使用例がたくさん説明してある小冊子プレゼント! とか良いかも⁉︎)


「……良ければリアーヌの考えを教えてもらいたい……かも?」


 ゼクスは困ったように頬をかきながら、リアーヌから説明の言葉を引き出そうとする。

 スクラップブックなど作ったことのないゼクス――ましてやシールすら知らない彼には、そのシールや紙テープをどう使うつもりなのか全く検討が付いていなかった。


「あ、えっと……例えば、今日のことをスクラップしようと思ったら、お土産の紙袋とかからお店のロゴを貼り付けるじゃないですか?」

「まぁ……分かりやすそうだね?」

「そのロゴだけドーン。 より、その周りを紙テープやイラストが描かれた紙で飾る方が可愛く見えるでしょう?」

「――なる、ほど⁇」


 ゼクスは理解したようなしていないような曖昧な態度で答える。

 リアーヌの言い分は理解できたようだが、やはりいまいち使用例が頭の中に思い描けないようだった。

 そんなゼクスの戸惑いに気がついたのか、リアーヌはさらに使用例を説明していく。


「ロゴを真ん中に貼ったら、周りがあまりまくっちゃうけど、他に貼るものも……って時にお菓子のイラストとか適当に可愛いリボンや紙テープで埋めてもいいですし、あとは、書き損じちゃった! とか、うわここ変になった! とかいう場所にペッタリ貼ってもいいわけですよ」

「――確かに。 それは良さそうだね?」

「そう考えると、押し花や詩が印刷されてる紙とか無地だけど色とりどりの厚紙、あとはスタンプなんかも良さげですね?」

「――ごめん、どう考えたてそうなったのか説明してもらっても……?」

「え、ですから余白にペとっと……?」

「……――そもそもとして押し花まで売るのかい? 詩だって印刷より直筆のほうが……」


 ゼクスははっきりと眉を寄せながらたずねる。

 言外に「本当に売れると思ってる?」とたずねながら。


「売れ、ませんかね……? 押し花が入ってる袋とかに花言葉とかも書いてあったら、そういうのに疎い男の人でも楽に選べると思うんですけど……⁇」

「あー……――確かにそういう需要はあるのか……でも女性としてはどうなんだい? 貼られている押し花が店で買ったものでも構わない?」

「……だめ、なんですか?」

「――リアーヌはイヤだったりしない……?」

「私は別に……」

「……俺から返ってきたスクラップブック、うちで売ってる押し花と詩の印刷物ばっかりだったらガッカリしちゃわない?」

「……他になにも無かったらガッカリするかも……? でもそれは売り物だからってのが原因じゃなくて、手を抜きすぎだからだと……――他にも工夫して装飾してあればまた印象は変わるんじゃないですかね……⁇」

「――俺もレースやリボンで……?」

「……さすがにそれはドン引きです」

「だよね……?」

「例えば――カラフルな台紙に貼り付けてから栞みたいにして貼り付ける、とか……紙テープを額縁のように見立てて貼り付けてみるとか……そういう工夫をしてくれれば、そこまでガッカリはしないかも? まぁ、その日の思い出をなにかしら貼ってくれた方が嬉しいですけど……」

「――なるほど。 あくまでも添え物扱いってことなのか……」

「大体――押し花だって女性でも自作してる人少ないですよね?」


(ほとんどがメイドさんたちに丸投げでしょ? 近所の花屋のおばちゃんなんか、たくさん作ってちょっと良いトコの奥様たちにこっそり売ってるって言ってたよ⁇)


 この国では、それほどまでに手紙や招待状などに押し花を添えることがポピュラーだった。


「――建前って大切だからね……?」

「……皆さま自作なさって凄ーい! ――でもそしたらなおのこと売りものの押し花は必要になるかと……」

「――と言うと?」


 ゼクスはリアーヌのその言葉に身を乗り出すと目をギラリと光らせた。

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