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成り上がり令嬢暴走日記!  作者: 笹乃笹世
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 騎士科の校舎には、数多くの個室が設けられていた。

 それは主に貴族階級の者たちが使う部屋だったが、その利便性から数多くの生徒たちが個室を活用していた。

 それは快適に着替えを行えるようだったり、決して安くはない武器や防具を保管しておく場所としても使われていたのだ。

 ある程度のグレードの部屋を借りれば、それなりの広さでシャワーやトイレすら完備されている。

 個人的に家具を用意すれば、教養学科の生徒たちがよく使うサロンほどでは無いにしろ、貴族の客人をもてなせる程にもなった。


(この部屋はオリバーさんがザームのために整えている真っ最中の部屋なんだけど……シャワーがあってふかふかのソファーがあって……――あいつここに住むとか言い出しそう…… あ、でもご飯がないなら帰ってくるか……)


 ――ちなみにザームのために個室を借りる際、リアーヌが使うためサロンを借りるよう申請を出そうと言う話になったのだが、本人の強い反対にあい、ボスハウト家は未だにサロン棟に一室も借りていないと言う裏事情があった。




「……こんな感じでどうでしょう?」


 ソファーに座り、隣に座るオリバーの肩に手を当てていたリアーヌが、その手を外しながら首を傾げる。


「充分です、ありがとうございました――……お嬢様、本当に力が多いですね?」


 エドガーの回復が終わり、リアーヌは練習のためにゼクスやサンドラ、オリバーにまで回復をかけていた。

 これだけの人数に何回も回復をかけてなおケロッとしているリアーヌに、オリバーはあらためて感心したように声を上げる。


(ちっちゃい頃から特訓してたからねっ!)


 褒められたリアーヌは、ふふんっと胸を張り、得意げな顔を披露しながらも「いやいや……」と謙遜の言葉を口にした。


「回復量がいまいちなんで、要練習です。 調べてみたらこの力って、ここがこうなってるからこの辺りに力を集中させて……ってことまで出来るらしくって……――私はまだ、この辺りがダメっぽい……? ぐらいしか分からなくて……――力の使い方がまだ理解しきれてないんですよねぇー」

「……普通のお嬢様はそこまでは極めなくてもよろしいと思いますが……?」


 オリバーは立ち上がりながら苦笑を浮かべる。


「……でも無駄になる力が勿体無いじゃ無いですか?」

「医者になるつもりですか……? ……護衛としては嬉しい限りですけど――あんまり新人を甘やかさないでくださいよ? 三日間寝ずに戦っても難なく主人を守り切れるくらいの実力は最低条件なんで⁇」


 オリバーは挑発的な視線をエドガーに向けながらからかうように言う。

 エドガーは覚悟を決めたように「ッス」と短く答え、コクリと頷いた。


「……護衛ヤバ……超人かよ……」

「――リアーヌ?」


 ボソリと言ったリアーヌの言葉に、ゼクスが苦笑いを浮かべながら小さく首を振る。


「ぁっ……――護衛の方は凄いんですのね?」


 口元を押さえたリアーヌは開き直ったようにニコリと笑顔を浮かべながら言い直す。


「……ごまかされて差し上げたいんですけどねぇ……?」


 苦笑混じりのオリバーの言葉に、リアーヌの顔には盛大なシワが寄せられる。


(くっ、油断した……――自分はエドガーと砕けた口調で会話してるくせに……私はそれに釣られただけなのに! ――罠まで張るようになるとは……言いつけ魔の誇りはないんですか⁉︎)


「……元気出してリアーヌ」

「……ちょっと無理ですねー」


 ぶっすりと盛大に顔をしかめながら答えるリアーヌにゼクスは困ったように肩をすくめ――ふと思いついたかのように提案をする。


「じゃあ、元気になれるような美味しいもの食べに行こっか?」

「――はい!」


 急激に機嫌を回復させたリアーヌはキラキラと輝く瞳をゼクスに向けながら元気よく答える。

 しかしそれに反比例するように今度はオリバーが顔をしかめながら口を開いた。


「ゼクス様、急には困りますよ……」

「でも最近デート出来てなかったし……――リアーヌも美味しいもの食べに行きたいだろ?」

「はいっ!」

「……何食べたい?」

「――……一番食べたいのはお刺身」

「――この国にあるもので頼めるかな……?」


 そんな二人のやり取りに、オリバーが頭を押さえながら「まだ諦めて無いんですか……」と小さくぼやく。


(絶対に諦めないし……――なんならみんなにも食べさせてその美味しさの虜にしてやるし……――日本食は世界でも認められた食文化なんだからっ‼︎)


「とりあえずピぺーズ通り辺りで食べられるものにしてくれるかな?」

「――あ、ピぺーズ通りでハロウィンフェアが始めたそうですよ!」

「じゃあとりあえずピペーズ通りに行ってから決めようか」

「はいっ‼︎」


 輝く笑顔を浮かべいく行く気満々のリアーヌに、オリバーは困ったように笑いながら肩をすくめる。

 ここまで喜んでいるリアーヌを止めることは、オリバーにも少々難しいようだった。


「……行ってもいいですか? いいですよね⁉︎」


(最近レッスン頑張ってるよ⁉︎ 私だって、ご褒美貰っていいと思う! ……まぁデザートは豪華になった気がしなくもないんですけど……あれザームへのご褒美なのか私へのご褒美なのかいまいち判断が付かないし……)


「……仕方がありませんね――ですが次からは事前にご連絡を頼みますよ?」

「――肝に銘じます」

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