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成り上がり令嬢暴走日記!  作者: 笹乃笹世
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 国の王が暮らす場所が王城であり、その王城がそもそも広い。


(シンデレラ城とか目じゃないほどにお城も大きいし、敷地も広いし……――あの広さは、東京ドーム何個分で表すサイズの広さだよ。 ……端っこに置き去りにされたら自力じゃ帰って来られない危険性あるもん。 ……っていうか、もはや端は森。 森ごと壁で取り囲んで王城の一部にしてる。 ――そんなバカでかい敷地の4分の1とはいえ、ぐるっと外周を取り囲むように作られたのがうちが管理してるベアトリアス花園――そりゃ広くもなるよねー)


「本当は、何ヶ所か出入り口を増やして馬車でそのまま出入り出来て、そのまま馬車で中を見て回れるようにしたいみたいなんですけど……」


 そう言いながらリアーヌは困ったように肩をすくめた。


「ああ、テーマごとに分けて道やゲートを新たに設けたいって話だったよね?」

「検討の余地もなく却下だったみたいです」

「――まぁ……そうなっちゃうよね?」


 そう答えながら、曖昧な微笑みを浮かべるゼクス。


 ボスハウト家が管理しているとはいえ、あくまでも国営の(・・・)花園なのだ。

 あまりコンパクトになってしまっては王家の威厳にも関わってくる。

 さらにいえば、王城のすぐ隣の敷地に馬車が何台も隠せてしまう可能性がある場所など、防犯面から考えて作る許可が出るわけがなかった。


「父さんが、無理だろうなーって言ってたんで、みんなそこまで期待はしてなかったんですけど……」


(それでも母さんが、移動が楽になれば大儲けできるわ⁉︎ ってはしゃいでたから、お伺いを立てないって選択肢が父さんには無かったんだろうな……)


「あ、でも代わりに、花園の入り口を増やす許可が降りそうだって話ですよ?」

「え、本当に⁉︎」


 ゼクスはその言葉にギョッと目を剥きながら聞き返す。

 王城の安全を一番に考えるならば、不審者が侵入する可能性のある入り口など、馬車移動以上に許可される可能性など無いと踏んでいたからだ。


「なんでも、管理を任せているのに案を否定してばかり、こちらの要望通り入場者も増やしてみせ、その評判も良好であるというのにこの仕打ちはあんまりだろう、ってえらい人が言ってくれたみたいですよ?」

「……えらい人って」


 ゼクスはリアーヌの言葉からその言葉を言ったであろうえらい人(・・・・)に察しがついたのか、その頬を盛大に引きつらせた。


(そんな言葉だけで入り口増やせるとか……――この国で一番えらい人じゃなきゃ、絶対に無理だろ……)


「あー、うちの父さん、貴族の名前全然覚えてないんですよねぇ……」


 ゼクスの呟きをどう受け止めたのか、リアーヌは困ったように苦笑を浮かべながら前髪の生え際あたりをポリポリとかいた。



「うちの中では“ヒゲがすげーヤツ”とか“つるっぱげ”なんて説明し出して、いつもヴァルムさんに叱られてます」

「――……子爵、それでやってけちゃうんだ……?」


 サージュのギフトのことを知っているゼクスは、少し遠い目をしながら呟く。

 今までゼクスが(つちか)ってきた常識とは、あまりにもかけ離れているようだ。


「この間なんか、貴族と会話する時は大体が「これはこれは……」「おウワサはかねがね……」「はっはっは!」――でどうにかなるってザームに教えちゃって、ザームがその気になって大変だったんですよ……」


(あの子は父さんみたいに豪運が無いからさぁ……――つまり、豪運をコピーしてる私は、この方法使える……? ちょっと練習してみる……?)


「そりゃそうだろうね……? それでどうにか出来るのは子爵だけだと思う」


 ゼクスはその気になってしまったザームを説得しなくてはいけなくなったボスハウト家の使用人たちを思い、気の毒そうに眉を下げた。


(やっぱりそうなんだ……――明日の授業から試してみよ!)


「――けれど、新しい入り口が出来るってことは人の流れも変わるってことでしょ? それってつまり――新しい木や草花が必要になるってことじゃないかな?」


 ゼクスは瞳をギラリと輝かせながら商人の顔でお伺いを立てる。

 ラッフィナート男爵家としての現在の主な収入源は、間違いなくボスハウト家との花園関連の取引であり、ゼクスとしては決して見逃すことのできない、もうけ話だった。


「……人の流れとかはよく分かりませんけど、でも冬に見応えのある花や実をつける植物が欲しいよねって話はしてたんです。 木に雪が積もってるだけでも素敵ですけど……やっぱり花があると良いよねーって……」

「冬の花かぁ……」


 そう答えたゼクスの顔つきは険しく歪んでいて、リアーヌは思わず首をかしげた。


「難しいですかね……?」

「あー……いや……――じつは花の取り扱いって意外に難しくって……――美しい花や実がなる植物って、たいていどこかしらの家が紋章や家紋に組み込んでるんだよね……――家の象徴だから……結構うるさく言ってくる家多くてさ」

「うるさく……?」

「例えば……――この花がうちの象徴と知っていてここに配置したんだろうか? そこの花はあの家の象徴だが……――なぜうちの花よりも目立つ場所に置いてあるのか説明願おうか? とか⁇」

「うわぁ……」


 リアーヌの顔が嫌そうに歪められる。

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