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成り上がり令嬢暴走日記!  作者: 笹乃笹世
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(私もそう期待はしてるんですけどねー……? 主人公が誰と恋愛するつもりなのかとか、主人公を見たゼクスの反応とかをこの目で確かめないことには……――だって、ゲームの中のゼクスってば、主人公と結ばれたい! ってその一心で、ラッフィナート商会が傾くんじゃないか⁉︎ ってぐらいの大金使って貴族になって主人公を助けに行ってるんですよ……――つまりはあの人にとって、大きな損失とかなんの抑止力にもならないってことでして……)


「……外野がとやかく言うことではなかったわね? 気を悪くしたなら謝るわ……?」

「ううん。 ちょっと特殊な感じで婚約しちゃったし……しょうがないよ」


(正直、なにがどうなってゼクスが私なんかと婚約しようと思ったのかは、未だによく分かってないし……)


「――いざとなったらレジアンナやフィリップ様にお力添え願いなさい? ラッフィナート男爵家(・・・)ならばすぐにでもぺしゃんこでしょうよ」

「あー……でもそうするとサンドバルの村が……後任がまた変なヤツだったら、今度こそ死人が出るかもしれない……」

「――あなたどこまで……」


 お人好しなのよ……と言う言葉を読み込んだビアンカは、リアーヌの横顔を見つめながらため息を吐き出すようにお大きく息をついた。


「――いいわ。 万が一にも彼の方があなたを傷つけたならば、すぐにおっしゃい。 (わたくし)のツテというツテを使って、目に物見せてやりましてよ」

「ビアンカ……」

「――おバカな友人を食い物にされて黙っているだなんて女が廃りますもの」


(……熱い友情と見せかけてるけどバカにしてらっしゃいますよね……? ――最近息を吸うようにバカって言うじゃん……? ――ん? 食い物……⁇ あれ、食い物って言い回しって確か――)


 ビアンカの言葉にリアーヌはカッと顔を真っ赤に染めると、手をブンブンと振り回して訂正する。


「えっ⁉︎ 違うよっ⁉︎ 私たちそんなんじゃ――ハレンチなんてしてないもん!」


 その言葉に隣に座りビアンカどころか、リアーヌの言葉が聞こえてしまった生徒たちがギョッと目を剥きながらリアーヌを見つめる。


「なっ⁉︎ はぁ⁉︎ っ――このおバカっ! 私だってそんな話してませんでしたわよっ」


 急なリアーヌの問題発言に、ビアンカもあからさまに動揺しながら、やらかしたリアーヌを怒鳴りつける。


「だ、だって今食い物にされてって……」

「意味が違いましてよ⁉︎ こんな所でそんな話! 恥知らずも大概になさい⁉︎」

「ええ……? 違うのぉ……⁇」


 情けない声を上げながら首を捻るリアーヌ。

 このところ特に厳しくなったボスハウト家の使用人たちによるマナーや立ち振る舞いのレッスンによる弊害が、思わぬ形で出てしまったようだった――


「じゃあ食い物ってどんな意味――」

「おだまりっ!」

「……ふぁーい」



 放課後の廊下。

 ビアンカと馬車乗り場で別れたリアーヌは、そのまま騎士科の教室などがある建物に足を進めていた。


 そんな時――

 建物の影から急に人が現れてリアーヌの前に立ち塞がる。


「やぁリアーヌ」

「……ゼクス様?」

「これから練習かい?」

「はい……⁇」


 リアーヌは頭の周りに沢山の疑問符を飛ばしながら、ゼクスの質問に頷く。


 エドガーがボスハウト家と契約している今、リアーヌはほぼ毎日と言っていいほど放課後は騎士科に顔を出し、エドガーに回復魔法をかけている。

 エドガーとの契約では、怪我や事故に合ってしまった場合は優先的に治療にあたる――と書かれているだけなのだが、回復魔法の精度を上げたいリアーヌと、回復をかけてもらうと疲れも取れることを知ったエドガーの利害が一致し、リアーヌはほぼ毎日のように騎士科に姿を表すようになっていた。


「――ご一緒しても?」


 ゼクスはそう言いながらリアーヌの隣に立ち、スッと左腕をリアーヌに差し出した。


「……あ、はい。 ぜひ……?」


 リアーヌは差し出された腕に手を通しながら、キョトンと目を丸くし視線を彷徨わせる。


(……ご一緒もなにも……私、エドガーと合流したら五分もたたないうちに馬車まで戻りますけど? のんびりしててオリバーさんが放課後まで好き勝手し始めたらどうしてくれるのかと……――え、マジでゼクスさん誰になんの用があるんです⁇)

 

「そうだ。 リアーヌ、セハの港のパール商を覚えてる?」

「あー……バロックの?」

「そう。 あそこのおやっさんが、とびっきりのパールとたこ焼き用意してるからまた遊びに来てくれってさ」

「たこ焼き⁉︎」


 リアーヌは瞳を輝かせながらゼクスを見つめる。

 そんなリアーヌにゼクスは苦笑を浮かべると、困ったように口を開く。


「少しはパールのほうにも興味を持ってあげて……?」

「あ……――持ってますよ? 全然持ってますし!」

「ふぅーん?」


 ゼクスはからかうようにニヤニヤと笑いながらリアーヌの顔を覗き込む。

 リアーヌはそんなゼクスに思い切り顔をしかめて見せた。


「ふふっ ごめんごめん。 ――そういえば花園の入場者数はどう? 落ち着いちゃってるかな⁇」

「あー……悪くはないみたいなんですけど、グランツァの並木道まで足を伸ばす人はちょっと減ったみたいです――って言っても、テコ入れ前と比べたら全然多いんですけどねー」

「あの花園大きいもんね……? 地図上で見た時は、そこまで離れてるように見えなかったんだけどなぁ……」

「全体から見ると、全然近いんですよ。 ――ただ、あの花園……王城の4分の1取り囲んでますからね……?」


 ゼクスのぼやきに、リアーヌも困ったように笑いながら肩をすくめる。

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