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成り上がり令嬢暴走日記!  作者: 笹乃笹世
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誤字報告ありがとうございます!

対応いたしました! いつも感謝です☺️

「どうかな、君の開いている勉強会にお二人をお招きしてみないかい?」

「え、ですが……」


 そうたずねられたレジアンナが目を丸くして戸惑っている。

 そしてその向かい側でもビアンカが笑顔を凍り付かせ、リアーヌはギョッと目を剥いてフィリップを凝視していた。


(――え……こいつ今、レジアンナの取り巻きしか出席出来ない、レジアンナ主催の勉強会に誘えっていった? ……あー思い出した、確かフィリップルートでも、主人公をわざわざ招いた上で、イヤミや当て擦り満載のレジアンナの話を延々聞かされるって、恐怖の勉強会ありましたね……? ――ゲームだと1分も経たないうちに【一時間後――】とかいうモノローグ入ってたけど……そんなものが入らないこの世界で、あなた今、勉強会に誘えって、とち狂ったことを口になさいました……⁇)


「――リアーヌの開くお茶会にも参加していただけるのでしたら構わないと思いますよ?」


 隣から聞こえてきたその言葉が、リアーヌには理解できなかった。


「……え?」


 ギギギ……っとそんな音が出てしまいそうなほど、ぎこちない動きでゼクスのほうに首を回すリアーヌ。

 そんな婚約者にゼクスは申し訳なさそうに眉を下げると、失礼にはならない程度に声を潜めそっと囁いた。


「……好きなだけショートケーキ食べに連れてく。 リアーヌが食べたいものなんでも食べに行く……!」


 ただの婚約者にすぎないゼクスが勝手に答えてしまうほどには、ミストラル家とのつながりは魅力的だったようで、目力マシマシの笑顔でリアーヌを説得にかかっている。


「――……私の開くお茶会……⁇」


 未だに現実を受け止めきれないリアーヌは、助けを求めるようにビアンカを見つめてもう一度呟く。

 しかしビアンカがなにか反応を返す前に、向かい側から戸惑うような、どこか期待するような会話が聞こえ始めた。


「――よろしいと思われます……?」

「もちろん。 お母君(ははぎみ)に相談しましょう。 もちろん私からもお願いはしてみるから」

「本当⁉︎」

「もちろんだよ」

「……嬉しいですわ」


 頬を赤らめふわりと笑うレジアンナ。

 そんな彼女の頬をフィリップは優しく指先で撫で付ける――

 そうしてフィリップたちは、また二人きりの世界へと旅立って行くのだった――


(いやお前……混乱の種吐き散らすだけ撒き散らして、なにいちゃつき始めててんのかと……)


「座ってるだけで大丈夫にするから……」


 思いっきりフィリップを睨みつけ始めたリアーヌの気を引くように、ゼクスがリアーヌに話しかける。


「……それ絶対に座ってるだけじゃダメなやつじゃないですかぁ……」


(先生にだって「ただ座っているだけで良いのよ⁉︎」って何度も注意されるけど、正しい姿勢でミリも動いちゃいけなくて、しかも笑顔は絶やしちゃいけないとか、人はそれを無理ゲーって呼ぶんですよっ! しかも大抵相槌を打つ作業とかお茶を飲む作業とか入ってくるしっ‼︎)




 リアーヌはそんなことを考えながらその頬を大きく膨らませたのだった――

 ……すぐさま感じた足先の痛みに、すぐにへこませたのだが。


「――ちなみに都合のいい日付などは……?」


 ゼクスは愛想笑いを浮かべながらビアンカに向かって話しかける。

 その言葉にニコリと美しい笑顔を作ったビアンカは、もったいぶるようにゆっくりと指先を口元に当てながらゆっくりと口を開く。


「――アウセレの民俗学系の学術書を五冊ほど?」

「……ご用意いたします」

「嬉しいわ。 ――分かり次第ご連絡いたしますね」

「……――本当に座ってるだけで良い?」


 話の流れから、ビアンカが助けてくれるのだということを察したリアーヌはヘラリ……と愛想笑いを浮かべながら(どうか頷いてくれますように……!)と願いを込めながらたずねた。


「……これを乗り切ればSクラスに上がることも夢ではなくなりますわよ」


 視線を逸らしながら言ったビアンカは、小さく肩をすくめるとカップに手を伸ばした。


「……夢は夢のまま、そっとしておくのがいいと思うんだ……?」

「――全校生徒を敵に回すような発言はお辞めなさい……?」


 この学園に通う生徒で、リアーヌのようにクラス分けに興味のない生徒は珍しい。

 どの学年、どの学科であろうとも、ほとんどの者たちが、あわよくばクラスが上がることを願い、今のクラスから落ちないことを願っているのだ。

 特に先の試験で思うような成績が取れなかった者たちは、学期末のテストに向け今からピリピリとし神経を尖らせていた。


「……しゅみましぇんでした」


 ビアンカから叱られたリアーヌはシュン……としながら、ふにゃふにゃと謝罪の言葉を口にする。

 ――ただ注意を受けた理由はあまり理解しておらず、叱られれば謝るのだという条件反射によるものだった。


 ビアンカが呆れたように息を吐く隣で、さらに身を小さくするリアーヌ。

 ゼクスはそんな二人のやりとりをクスリと笑いながら楽しそうに眺めていた――


 リアーヌがやらかしてから初めての――そしてレジアンナが参加した最初のお茶会は、一部の者たちの胸を大変にやけさせながらも、大きなトラブルもなく無事に終了したのだった。

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